生薬の解説
サンシシ (山梔子)
山梔子とは梔子(クチナシ)の果実.果実が熟しても開裂せず口を開かないので「口無し」になった等の説がある.中国,台湾,日本の西南部に分布,庭木や切花用としても栽培される常緑低木であり,飛鳥時代から黄色染料として布地の染色に用いられたり,無害なことから飯や餅に入れられたり,きんとん,たくあん漬け,クワイなどの着色料の他,木工具の染色にも使われたりした.また,将棋盤や碁盤の脚は,クチナシを模っており,勝負には第三者による口出しは無用という意味があるという.観賞用のヤエクチナシやオオヤエクチナシではほとんど結実しないので,果実を目的とする場合は,花が一重のクチナシを植えなければいけない.
原植物
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生薬
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浙江省産 |
広西壮族自治区産(スイシシ※) |
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もっと知りたい
生薬の品質を五感で判断する方法
- 小型で丸く,内部の赤黄色のものを良品としている.局方ではクロシン(crocin)の色に基づく確認試験がある.古い生薬においてはクロシン含量が一般に低減している.
- 適度に熟して紅く鮮やかなものが良い.完熟すると種子が黒色になり,品質が落ちる.
- 未熟なものを乾燥させた青黒い品が混入していることがあるので,注意を要する.なるべく赤い品を選ぶのが良い.
主な種類
山梔子:小粒で,直径1~1.5cm,長さ2~3cm程度の卵形である.主に湖南省・湖北省・江西省周辺で栽培され,薬用として最も多く使用されている.
水梔子:大粒で,直径1.2cm,長さ3~7cm程度の長卵形である.東シナ海に面した福建省・浙江省・広東省・広西壮族自治区の他,台湾で生産されている.昭和40年代以降は,主に食品用の着色料として使用されており,色素の点では山梔子,水梔子,紅梔子の三種の中で最も優れている.
紅梔子:日本産・韓国産にはかつて紅梔子と呼ばれるものがあった.粒は大きく楕円形で色が赤く良質であるが,現在は市場に見られない.
加工調製法
- 通例,湯通し又は蒸して調製する.
代表的な成分の構造式