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生薬の解説

サンシシ (山梔子)

山梔子とは梔子(クチナシ)の果実.果実が熟しても開裂せず口を開かないので「口無し」になった等の説がある.中国,台湾,日本の西南部に分布,庭木や切花用としても栽培される常緑低木であり,飛鳥時代から黄色染料として布地の染色に用いられたり,無害なことから飯や餅に入れられたり,きんとん,たくあん漬け,クワイなどの着色料の他,木工具の染色にも使われたりした.また,将棋盤や碁盤の脚は,クチナシを模っており,勝負には第三者による口出しは無用という意味があるという.観賞用のヤエクチナシやオオヤエクチナシではほとんど結実しないので,果実を目的とする場合は,花が一重のクチナシを植えなければいけない.

原植物

  1. 原産地又は分布

    本州静岡県以西,四国,九州,沖縄,台湾,中国に分布.

  2. 植物形態

    一般的に植栽されているものは,樹高2m内外.幹は多数分枝し,枝は若時有毛.葉は対生し,広披針形か長楕円形で長さ5~11cm全縁で光沢があり,鋭頭で鈍端.花期は6~7月.径6~7cmの高盆状の白色花を葉腋に単生する.腋果は倒卵形で長さ約3㎝である.

生薬

  1. 基原

    クチナシ Gardenia jasminoides Ellis (アカネ科 Rubiaceae) の果実を乾燥したもの.

  2. 産地

    中国 (浙江省,江西省,湖北省,湖南省,四川省,広西壮族自治区 等)

  3. 生薬の性状

    本品はほぼ長卵形~卵形を呈し,長さ1~5cm,幅1~1.5cmである.外面は黄褐色~黄赤色で,通例6本,まれに5本又は7本の明らかな隆起線がある.一端にはがく又はその跡があり,他端には果柄を付けているものもある.果皮の内面は黄褐色を呈し,平らで艶がある.内部は2室で,黄赤色~暗赤色の胎座に種子の団塊が付く.種子はほぼ円形で扁平,長径約0.5cmで,黒褐色又は黄赤色である.
    本品は弱いにおいがあり,味は苦い.


浙江省産


広西壮族自治区産(スイシシ※)


※サンシシ基原植物から“その他近縁植物”が削除され,Gardenia jasminoides Ellisに限定された.“その他近縁植物”と考えられていたスイシシの学名がクチナシの品種 Gardenia jasminoides Ellis forma longicarpa Z.W.Xie et Okada と命名されたため,母種のみが記載された.

  1. 成分

    イリドイド配糖体:ゲニポシド
    カロチノイド色素:クロシン

  2. 日局18規格値

    ゲニポシド2.7 %以上
    乾燥減量13.0 %以下
    灰分6.0 %以下

  3. 適用

    漢方処方用薬として,消炎排膿薬,皮膚疾患用薬,尿路疾患用薬,精神神経用薬とみなされる処方及びその他の処方に配合されている.外用することもある.

  4. 配合される主な漢方処方

    茵蔯蒿湯,温清飲,黄連解毒湯,加味逍遙散,荊芥連翹湯,柴胡清肝湯,清上防風湯,清肺湯,防風通聖散,竜胆瀉肝湯 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法

  • 小型で丸く,内部の赤黄色のものを良品としている.局方ではクロシン(crocin)の色に基づく確認試験がある.古い生薬においてはクロシン含量が一般に低減している.
  • 適度に熟して紅く鮮やかなものが良い.完熟すると種子が黒色になり,品質が落ちる.
  • 未熟なものを乾燥させた青黒い品が混入していることがあるので,注意を要する.なるべく赤い品を選ぶのが良い.


主な種類
山梔子:小粒で,直径1~1.5cm,長さ2~3cm程度の卵形である.主に湖南省・湖北省・江西省周辺で栽培され,薬用として最も多く使用されている.
水梔子:大粒で,直径1.2cm,長さ3~7cm程度の長卵形である.東シナ海に面した福建省・浙江省・広東省・広西壮族自治区の他,台湾で生産されている.昭和40年代以降は,主に食品用の着色料として使用されており,色素の点では山梔子,水梔子,紅梔子の三種の中で最も優れている.
紅梔子:日本産・韓国産にはかつて紅梔子と呼ばれるものがあった.粒は大きく楕円形で色が赤く良質であるが,現在は市場に見られない.

加工調製法

  • 通例,湯通し又は蒸して調製する.


代表的な成分の構造式