生薬の解説
カッコン (葛根)
「萩の花,尾花葛花,なでしこの花,女郎花,また藤袴,あさがほの花」(ヤマハギ,ススキ,クズ,カワラナデシコ,オミナエシ,フジバカマ,キキョウ)これは,山上憶良によって,万葉集に詠まれている秋の七草である.春の七草が食用にされる野草や野菜で有るのに対して,秋の七草は,秋の野の花を代表する野草木が選ばれているが,これらがすべて薬用植物であることは大変興味深い.和名の「クズ」は,昔,大和(奈良県)の国栖(くず)地方の人が,この植物の根から精製した澱粉を売り歩いていたことから名付けられたと言われ,その後漢名の葛が当てられるようになったものと考えられる.
原植物
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生薬
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生薬の品質を五感で判断する方法カッコンの外観色は,一般に白く(日局は「淡灰黄色~灰白色」)仕上がったものが良品と云われる.外観色は加工方法の影響も受けるが,肥大していない根を使用した場合にも周皮(外側の皮)の混入が多くなることによって暗褐色となり,質は良くない.
流通品は通常一辺約0.5cmのサイコロ状に切断されたもの(角葛根)であるため,流通品では肥大した根であったことを確認することはできない.元の根の太さは,切断面の年輪模様から推測することができる.また通常角葛根に切断する過程で周皮は除かれるが,周皮の付いたものが入っていることもある.この場合,周皮の付いたものの混入が多いこと及び前記の年輪の円形模様を合わせて,切断前の大きさを推測することで,品質評価の一指標とすることができる.
過去の流通品には外観が白色で,非常に粉性に富み,繊維性の少ない「粉葛根」と称するものがあったが,日局とは基原の異なるものであり,プエラリンの規格値も満たさないなど,現在の流通品と品質の大きく異なるものであった.
生薬加工調製時の注意事項
- 速やかに乾燥を行わないと,異臭の原因となるので注意する.
- 水に晒すと褐色になりにくいが,晒しすぎるとエキス分が減少しやすい.
板葛根と粉葛根について
- 板葛根
Pueraria lobata の根の周皮を除いて板状に調製したもの(晒しの有無は不明).現在では流通していない.
- 粉葛根
Pueraria lobata を基原としない.日局15解説書では Pueraria thomsonii (甘葛藤の根に基づく)としている.流通していない.
本品は,主に野生品である.クズは,川の土手や広場の平地など平面的に繁殖しているものを多く見かけるが,このような場所の根は通常肥大しない.根からつる性の茎を雑木林などの木の上に繁殖し,葉で作られた養分を少ない本数の根に集められる環境にある根は肥大していることが多い.
代表的な成分の構造式