生薬の解説
カンゾウ (甘草)
下部には,ショ糖のおよそ150倍の甘味を有するといわれているグリチルリチン酸を多く含み,文字どおりの「甘い草」カンゾウは,洋の東西を問わず,紀元前から薬として用いられている.また,醤油や菓子,煙草などの甘味料としても大量に消費されている.
原植物
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ウラルカンゾウ |
スペインカンゾウ |
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生薬
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東北甘草(2号)内蒙古自治区産 |
西北甘草(西正甘草・乙)内蒙古自治区産 |
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もっと知りたい
生薬の品質を五感で判断する方法中国で流通するカンゾウには,大別して東北甘草,西北甘草の2種類がある.
- 東北甘草は,根頭部からストロンが伸びる瘤状の部分を残して加工しているのが特徴である.根の先端に向けて次第に細くなり,外皮の色は赤黒く,剥がれ易く,断面は比較的粗であり,放射状のさけ目が顕著である.グリチルリチン酸含量が高く,甘味が強い.
- 西北甘草は,内蒙古自治区西部にある杭錦旗周辺に産出する内蒙草と陝西省から甘粛省に産出する西北草に大別される.一般的に東北甘草と比べて外皮が剥がれにくく,断面には放射状の裂け目が少なく充実している.内蒙草を代表するものに中国で最優良品種とされてきた梁外草があり,質は充実しており,外皮の色は紫紅色で,内部はうすい黄色で粉性に富んでいる.通常,両端を切り揃えてあり,両端の太さは均一である.西鎮草(西正甘草)も内蒙草に含まれ,外皮の色は赤褐色で,通常,梁外草と同様に両端を切り揃えてある.一方,西北草は外皮の色が赤褐色から褐色で,内蒙草より粉性が少ない.通常,両端の太さは均一でなく,根の先端部で分枝するものが多い.ともに東北甘草と比べてグリチルリチン酸含量が低い傾向にある.
その他
- 皮去り甘草は,外皮を剥いで乾燥したものである.色は薄い黄色で質は充実したものが多い.寧夏回族自治区,陜西省などで加工されたものが日本の市場で流通しているが流通量は少ない.
- 新彊甘草と称されるものの中には,Glycyrrhiza inflata Batalin由来のものがあり,これらは日本薬局方の基原に適合せず,日局「カンゾウ」としては使用出来ない..ただし,日局「カンゾウエキス」および「カンゾウ粗エキス」の原料としては,他の規格さえ適合すれば,使用出来る.また成分抽出用として用いられる場合もある.
- 等級としては,通常,太さによって,東北甘草は1・2・3・4号・混節に,西北甘草は甲・乙・丙・丁級・毛草などに分類される.
代表的な成分の構造式