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生薬の解説

ソウジュツ (蒼朮)

蒼朮は,ホソバオケラとシナオケラ又はそれらの雑種の根茎とされている.
ホソバオケラは中国原産の多年生草本で,中国より江戸時代の享保年間に種苗が渡来し,特に佐渡島で盛んに栽培されたことから,一名「サドオケラ」の名称があるが,現在,日本での生産はほとんどない.

原植物

  1. 原産地又は分布

    ホソバオケラ:中国 (江蘇省,浙江省,安徽省,江西省,湖北省,四川省 等)
    シナオケラ:中国 (黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,河南省,山東省,山西省,陝西省,寧夏回族自治区,甘粛省 等)

  2. 植物形態

    ホソバオケラ(Atractylodes lancea
    草丈30~80㎝.根茎は横走し,茎は単一で上部で少数分枝する.葉は互生し,革質で卵状皮針形か楕円形で,長さ3~8㎝,漸尖頭で細きょ歯縁.花期は,8~10月.茎の頂に白色の頭花をつける.

    シナオケラ(Atractylodes chinensis
    草丈30~50㎝.根茎は肥厚して結節状.茎は上部で分枝する.葉は互生し,革質で無柄,下葉は,卵形で,羽状に3~5深裂し,鋭頭,上葉は,卵状皮針形から楕円形で,羽状に3~5浅裂か,分裂しない.ともに不規則な刺状きょ歯縁.花期は,7~8月.茎の頂に白色の頭花をつける.

生薬

  1. 基原

    ホソバオケラ Atractylodes lancea De Candolle,Atractylodes chinensis Koidzumi
    又はそれらの雑種 (キク科 Compositae) の根茎である.

  2. 産地

    中国 (湖北省,江西省,江蘇省,安徽省 等)

  3. 生薬の性状

    本品は不規則に屈曲した円柱形を呈し,長さ3~10cm,径1~2.5cm,外面は暗灰褐色~暗黄褐色である.横切面はほぼ円形で,淡褐色~赤褐色の分泌物による細点を認める.
    本品はしばしば白色綿状の結晶を析出する.
    本品は特異なにおいがあり,味は僅かに苦い.
    本品の横切片を鏡検するとき,周皮には石細胞を伴い,皮層の柔組織中には,通例,繊維束を欠き,放射組織の末端部には淡褐色~黄褐色の内容物を含む油室がある.木部は形成層に接して道管を囲んだ繊維束が放射状に配列し,髄及び放射組織中には皮層と同様な油室がある.柔細胞中にはイヌリンの球晶及びシュウ酸カルシウムの小針晶を含む.


湖北省産


陝西省産

  1. 成分

    精油 3.5~7%:β-eudesmol,hinesol,(-)-α-bisabolol,β-selinene.
    ポリアセチレン化合物:atractylodin,atractylodinol,acetylatractylodinol 等

  2. 日局18規格値

    純度試験(1)重金属  10ppm以下
    (2)ヒ素  5ppm以下
    灰分7.0%以下
    酸不溶性灰分1.5%以下
    精油含量0.7mL/50.0g以上

  3. 適用

    主として漢方処方用薬である.健胃消化薬,止瀉整腸薬,利尿薬,鎮暈薬,滋養強壮保健薬,鎮痛薬とみなされる処方及びその他の処方に比較的高頻度で配合されている.

  4. 配合される主な漢方処方

    胃苓湯,加味平胃散,桂枝加朮附湯,香砂平胃散,香砂養胃湯,治頭瘡一方,消風散,清湿化痰湯,疎経活血湯,二朮湯,不換金正気散,分消湯,平胃散 等

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生薬の品質を五感で判断する方法

  • 特有のにおいが強く,切面の油室が多く,白色の綿状結晶 (β-eudesmol,hinesol) が析出しているものや,折って2~3日後に析出するものが良品とされている.


蒼朮の呼び名
  1. 古立蒼朮

    においが強く,白色の綿状結晶が析出している良品の呼称とされている.

  2. 茅朮

    江蘇省勾容県茅山に多産し,品質が優良であるものの呼称とされていた.

  3. 佐渡オケラ

    明治の中頃まで佐渡島で栽培されていた,日本産栽培品.
    予てよりホソバオケラ A.lancea とされていたが,近年の研究により,サドオケラは A.lancea の雑種とする説もある.

  4. 天津(津)蒼朮

    周皮が充分むけていない黄褐色の品で,天津で集荷されていたものの呼称とされていた.

  5. 朝鮮オケラ

    鮮蒼朮とも呼ばれ,昭和30年代に輸入された朝鮮半島産のものの呼称とされていた.
    基原植物は,Atractylodes japonica とされているが,ナンマンオケラ (Atractylodes simplicifolia) とする説もある.


日局における呼び名の変遷
  1. 日本及び朝鮮では,オケラ A.japonica の根茎の先端に毎年増殖した肥大した不整塊茎の根茎のコルク層を除去したものを「白朮」と呼び,円柱状の根茎を採り乾燥しただけのものを「蒼朮」と呼んだ.

  2. 日局6改正以降,中国から輸入される蒼朮では,atractylodin,β-eudesmol,hinesol が主成分であり,さらに,atractylon を含まないか,又は極微量しか含まないという見解がまとまった.そこで atractylon の呈色反応により白朮と鑑別出来るとされ,日局7改正より,「ソウジュツ」,「ビャクジュツ」は,別項として収載されるようになった.


代表的な成分の構造式