生薬の解説
ソウジュツ (蒼朮)
蒼朮は,ホソバオケラとシナオケラ又はそれらの雑種の根茎とされている.ホソバオケラは中国原産の多年生草本で,中国より江戸時代の享保年間に種苗が渡来し,特に佐渡島で盛んに栽培されたことから,一名「サドオケラ」の名称があるが,現在,日本での生産はほとんどない.
原植物
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生薬
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湖北省産 |
陝西省産 |
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生薬の品質を五感で判断する方法
- 特有のにおいが強く,切面の油室が多く,白色の綿状結晶 (β-eudesmol,hinesol) が析出しているものや,折って2~3日後に析出するものが良品とされている.
蒼朮の呼び名
- 古立蒼朮
においが強く,白色の綿状結晶が析出している良品の呼称とされている.
- 茅朮
江蘇省勾容県茅山に多産し,品質が優良であるものの呼称とされていた.
- 佐渡オケラ
明治の中頃まで佐渡島で栽培されていた,日本産栽培品.
予てよりホソバオケラ A.lancea とされていたが,近年の研究により,サドオケラは A.lancea の雑種とする説もある. - 天津(津)蒼朮
周皮が充分むけていない黄褐色の品で,天津で集荷されていたものの呼称とされていた.
- 朝鮮オケラ
鮮蒼朮とも呼ばれ,昭和30年代に輸入された朝鮮半島産のものの呼称とされていた.
基原植物は,Atractylodes japonica とされているが,ナンマンオケラ (Atractylodes simplicifolia) とする説もある.
日局における呼び名の変遷
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日本及び朝鮮では,オケラ A.japonica の根茎の先端に毎年増殖した肥大した不整塊茎の根茎のコルク層を除去したものを「白朮」と呼び,円柱状の根茎を採り乾燥しただけのものを「蒼朮」と呼んだ.
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日局6改正以降,中国から輸入される蒼朮では,atractylodin,β-eudesmol,hinesol が主成分であり,さらに,atractylon を含まないか,又は極微量しか含まないという見解がまとまった.そこで atractylon の呈色反応により白朮と鑑別出来るとされ,日局7改正より,「ソウジュツ」,「ビャクジュツ」は,別項として収載されるようになった.
代表的な成分の構造式