漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記
Recommended Terminology for Kampo Products,Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs
漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記(第1集)
Recommended Terminology for Kampo Products,
Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs(Part 1)
はじめに 合田 幸広 (国立医薬品食品衛生研究所 生薬部長)
「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記」(以下, 漢方薬・生薬英語表記集と略す)に関する研究は, 以下に示した背景から開始された.
第一に, 第十五改正日本薬局方(2006年4月施行)に初めて6種の漢方処方エキスが収載されたが, 収載にあたって日本生薬学会・日本東洋医学会・ 和漢医薬学会の三学会合同で行われた「漢字処方名のローマ字表記法」プロジェクト(厚生労働科学研究,津谷喜一郎分担研究者)によりまず 漢方処方のローマ字表記が明確にされたことがあげられる. その際, 漢方薬や生薬などの英語表記について議論があったが, 公表するまでには至っていない. また同時期に, WHO西太平洋地区事務局(WHO/WPRO)を中心に伝統医学に関する用語集の編纂作業が進められていたことがある.
第二に, 日本漢方生薬製剤協会(日漢協)では, 漢方製剤・生薬製剤・生薬の残留農薬に関し, これまでの研究や調査結果をまとめ, 本内容はこの程 『医薬品研究』39巻(2008年)に論文掲載されたが, 本内容について相談を受けた際「漢方・生薬製剤関係の英語表記が業界の中でも統一されていない」 ことを実感し,各人,各社がそれぞれ固有の用語についてばらばらな英語表記を行うと,それぞれの論文を読んだ外国人からはどの製剤を指すのかとても 理解しがたいと感じたからである.
情報の国際化が進む現代で,日本の漢方製剤や生薬製剤について国際的に誤解なく理解されるようにするためには,漢方製剤・生薬製剤・生薬関係用語に 関して,それぞれの英語表記が,調整され整備されることが望ましい.
本研究は, 平成18年度からの厚生労働科学研究「生薬及び漢方処方の有用性評価手法・安全性確保と国際調和に関する研究 」(主任研究者:国立医薬品 食品衛生研究所生薬部長・合田幸広)の分担研究「漢方処方の同等性並びに品質確保等に関する研究」のサブトピックのひとつとしてなされたものである. 本研究班は分担研究者の合田幸広を中心として, 下記の研究協力者が参加し, 予備会議を含めて計15回の会合を持ち, 漢方薬・生薬英語表記集第1集を完成させた.
竹田 忠紘 (慶應義塾大学 薬学部 教授)
木内 文之 ((独)医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター センター長)
仲井 由宣 (千葉大学 名誉教授, 製剤機械技術研究会 名誉会長)
佐々木 博美 (日本漢方生薬製剤協会 国際委員会委員長)
塩本 秀己 (日本漢方生薬製剤協会 国際委員会委員)
佐々木 博 (日本漢方生薬製剤協会 技術委員会委員長)
加藤 照和 (日本漢方生薬製剤協会 広報委員会委員長)
新井 一郎 (日本漢方生薬製剤協会 医療用製剤委員会委員)
秋葉 秀一郎 (日本漢方生薬製剤協会 生薬委員会委員)
本表記集を検討するにあたって最も苦労した点は, 一般的に用いられる「漢方」や「漢方薬」という言葉と, 工業的に生産される「漢方製剤」, 「生薬製剤」などの用語をどう区別するかであった. まずそれぞれの意味を明確にし, より合理的な英語表記となるよう議論を重ねた. その議論の結果を「解説」欄に記した. 今回まとめた英語表記集第1集は, 漢方製剤・生薬製剤・生薬に関する用語のうち, 混乱が起こりやすく 早急に調整・整備すべき用語を選び, まとめたものである. なお検討にあたっては, 日本薬局方とその英語版, WHOの各種ガイドライン, WHO/WPROが まとめた伝統医学用語集, FDAの植物薬ガイダンス, EMEAの各種ガイドライン等を参照した.
本表記集については, 本年3月の日本生薬学会役員会で『生薬学雑誌』掲載の許可を頂いたものである. 本表記集第1集については, 事前に役員会の 諸先生からご意見を頂き, また編集委員会の先生方に多大な協力を賜った. さらには足立秀樹先生をはじめとする日本東洋医学会辞書編纂委員会の 諸先生方からも貴重なご意見をいただいた. 諸先生方に心からの謝意を表したい.
本表記集は, 研究班の諸先生, 並びに日漢協の委員の方々の多大な努力の賜物である. 深甚なる謝意を表すとともに, 本表記集が活用され, 日本の 漢方製剤・生薬製剤・生薬が世界に羽ばたくことを望む.
2008年 6月
漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記(第2集)
Recommended Terminology for Kampo Products,
Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs(Part 2)
はじめに 合田 幸広 (国立医薬品食品衛生研究所 生薬部長)
「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記」 (以下, 漢方薬・生薬英語表記集と略す) に関する研究の背景, 目的等については, 本誌に掲載された 第1集(生薬学雑誌62 (2), 79-90, (2008))に記した通りである. 現在, 世界的にみて, 生薬, 生薬製剤に関する規格化が精力的に行われつつある. このような状況の中, 3局(ヨーロッパ薬局方, 米国薬局方, 日本薬局方)の中で最も天然薬物の規格が充実している日本からの英文での情報発信が非常 に重要と考え, 早急に英文表現について調整, 整備すべき漢方製剤・生薬製剤・生薬用語を選び, それらについて第1集としてまとめた. この成果は, 本誌で報告されただけでなく, 用語を検索できる機能を持たせるなど, より利用しやすい工夫が行われた後, 日本漢方生薬製剤協会 (日漢協)のホームページにも掲載 (https://www.nikkankyo.org/kampo/yougo.html) されている.
第2集は, 第1集で積み残した混乱しやすい用語の一部, 漢方製剤・生薬製剤の製造管理と品質管理, 生薬の加工調整に関わる用語を中心にまとめた. 本英語表記集も引き続き, 日漢協のホームページに第1集と合わせた形で掲載される予定である.
本研究は, 平成18年度からの厚生労働科学研究「生薬及び漢方処方の有用性評価手法・安全性確保と国際調和に関する研究」(主任研究者:国立医薬品 食品衛生研究所生薬部長・合田幸広)の分担研究「漢方処方の同等性並びに品質確保等に関する研究」のサブトピックのひとつとしてなされているが, 下記の研究協力者が参加した. 今回は, 栽培に関する用語が加わったため, 新たに医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 北海道研究部の柴田先生 にメンバーに加わっていただいた.
竹田 忠紘 (慶應義塾大学 薬学部 教授)
木内 文之 ((独)医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター センター長)
柴田 敏郎 ((独)医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 北海道研究部)
仲井 由宣 (千葉大学 名誉教授, 製剤機械技術研究会 名誉会長)
佐々木 博美 (日本漢方生薬製剤協会 元国際委員会委員長)
塩本 秀己 (日本漢方生薬製剤協会 国際委員会委員)
佐々木 博 (日本漢方生薬製剤協会 技術委員会委員長)
加藤 照和 (日本漢方生薬製剤協会 広報委員会委員長)
新井 一郎 (日本漢方生薬製剤協会 医療用製剤委員会委員)
秋葉 秀一郎 (日本漢方生薬製剤協会 生薬委員会委員)
本表記集については, 2008年3月の日本生薬学会役員会で『生薬学雑誌』に掲載の許可をいただいたものである. 第2集についても役員会の 諸先生から事前にご意見をいただき, 特に編集委員の先生方には多大な協力を賜った. 諸先生方に心からの謝意を表したい. また, 本表記集は上記研究班の諸先生, 並びに日漢協の委員の方々の多大な努力の賜物である. 深甚なる謝意を表すととともに, 本表記集が大いに活用され, 日本の漢方製剤・生薬製剤・生薬に関する情報が正しく世 界で理解され, 利用されることを望むものである.
*英文タイトルは, 第1集では “Recommended Terminology on Kampo Products, Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs” としていたが, 第2集では “Recommended Terminology for Kampo Products, Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs” とし, 第1集のものも同様に修正する.
2008年 12月
略語(第1集、第2集 共通)
JP:厚生労働省, 第15改正日本薬局方, 2006.WHO/WPRO用語集:
WHO Regional Office for the Western Pacific. “WHO International Standard Terminologies in Traditional Medicine in the Western Pacific Region”, World Health Organization, Western Pacific Region, 2007.
WHO’s GACP:
World Health Organization, “WHO Guidelines on Good Agricultural and Collection Practices (GACP) for Medicinal Plants”, World Health Organization, Geneva, 2003.