理解してほしい、漢方生薬製剤の知識
第21回 日漢協・市民公開漢方セミナー 2018年10月29日(月)「理解してほしい、漢方生薬製剤の知識」
(公社)日本薬剤師会 薬局製剤・漢方委員会/阿部薬局 薬剤師 八木 多佳子 先生
■健康のお話
そもそも「健康」とはどのような状態をいうのでしょうか? 日頃から、3食おいしく食事をとることができる「快食」、毎日のお通じがスムーズな「快便」、普段からよく眠れる「快眠」であることは、健康であることの1つの目安です。健康とは快適と思える日常を送れること、ともいえます。では、健康であるためには体はどういう状態であるべきなのでしょうか? 漢方医学では、体は、1. 常に動きめぐっていること、2. 常に変化していること、が必要であると考えられています。
▶常に動きめぐっていること
人間は動物です。歩く、走るなどの肉体的な動きに加えて、体の中では、血液の動き、消化した飲食物の動きなど、さまざまなものが常に動きめぐっています。この動かし、めぐらせる力を、漢方医学では「気(き)」と呼んでいます。そして体をめぐる要素を「気」「血(けつ)」「水(すい)」と呼んでいます(図1)。快適な日常生活を送るには「気」「血」「水」がスムーズに動き、めぐっていることが大切です。「気血水(きけつすい)」のめぐりに異常が生じたら、下記のようなさまざまな症状が現れます。「気」が不足したら…風邪をひきやすい、体がだるい、疲れやすい、気力がない
「気」が詰まったら…抑うつ気分、喉のつかえ感、胸苦しい、腹部にガス
「気」が逆流したら…のぼせ、動悸、頭痛発作、咳発作
「血」が不足したら…貧血、顔色不良、皮膚の乾燥、抜け毛、爪の異常、筋肉のけいれん
「血」が詰まったら…目の下にクマ、皮下の内出血、頭痛、肩こり、腰痛、四肢の痛み
「水」がたまったら…むくみ、体が重い、関節の腫れ・痛み、頭痛、吐き気、鼻水
図1 「気血水(きけつすい)」とは
▶常に変化していること
人の体を構成している細胞は生まれ変わります。髪の毛は伸び、時間の経過とともに抜け、そして新たな髪の毛が生えてきます。加齢により子どもから大人に、そしてやがては老いていきます。昼夜でも体は変化します。夜は睡眠をとるために眠くなります。昼は元気に活動できるようになります。春夏秋冬の季節によっても変化します。これらの変化を漢方医学では、「陰(いん)」と「陽(よう)」の力関係の変化によると考えます。「陰」とは暗く静かな状態で、「陽」とは明るく活発な状態をいいます。睡眠、鬱状態、悲観的などは「陰」、覚醒、躁状態、楽観的などは「陽」になります。「陰」と「陽」は人の体だけでなく自然界にも当てはまります。月や夜などが「陰」、太陽や昼などが「陽」になります。人体も自然界も「陰」と「陽」の力関係により変化し、どちらか一方が常に強くならないように全体的にバランスをとっています(図2)。
図2 「陰」と「陽」の変化
この「陰」と「陽」の力関係の変化に異常が生じたら下記(図3)のようなさまざまな症状が現れる傾向にあります。
図3 「陰」と「陽」の力関係の異常
このように、「気血水」のめぐりの異常や、「陰」と「陽」の変化に異常がおこると、体はバランスを失い、「ゆがみ」を生じます。ただ、体には元に戻す力、つまり自然治癒力が備わっていますから、このゆがみを正常に戻すことで健康でいることができます。漢方では「ゆがみ」を「気」の力で元に戻すことができると考えています。この「気」の力がないと、「ゆがみ」が体の弱いところに、症状となって現れるのです。これを「病(やまい)」といいます。
「病」の前段階である「ゆがみ」のある状態、「なんとなく疲れる」「なんとなく眠れない」といった状態を「未病(みびょう)」といい、漢方医学では「未病」も「病」も治療の対象となります。「未病」の段階から適切な治療を行うことで「病」への移行を防ごうという考え方です。
「未病」の状態は、現代医学では、検査結果に異常がないので「病」とは考えられないこともあり、治療法がなく困っている方が多くいらっしゃるのが実情です。
■漢方薬のお話
太古の時代から、われわれの祖先は身近な植物などを採取して食べてきました。その食物のなかに、病に効果がある植物などがあることを発見していました。病に効果がみられた部分だけを切りとり、病になったときにすぐに使えるように、乾燥して保存していました。これが薬のはじまりと考えられており、「生薬(しょうやく)」といいます。この生薬を数種類組み合わせて、量を決め、1つの薬として作り上げたものが「漢方薬」です。漢方薬には1つひとつに名前が付けられ、医学書に利用方法などが記録され今日まで受け継がれてきました。
古来より受け継がれた漢方薬(煎じ薬:せんじぐすり)は、現在では多くはティーバックの形になっており、鍋などに漢方薬と水を入れて煎じて飲みます。刻んで粉にして飲む粉薬、刻んだ粉にハチミツを加えて丸めた丸薬もあります。専門の薬局などで販売されています。
日本で開発された新しい漢方薬としてエキス剤があります。工場で一度にたくさんの漢方薬を煎じ、その煎じ液を濃縮して水分を除き、添加物を加え均一に混ぜ圧縮して固め、粉や錠剤などにして一回分ずつに包装したものです。現在の漢方薬の主流でもあります。
■選ぶポイント
漢方薬を選ぶには3つのポイントがあります。薬の説明書には3つの条件が書かれています。すなわち、「普段の体力」「今の体質や体調」「飲む目的の症状」です(図4)。これを「麻黄湯(まおうとう)」という漢方薬の説明書でみていきましょう。図4 漢方薬を選ぶ3つのポイント
第一条件である普段の体力には、「体力充実して」とあります。第二条件である今の体質や体調には、「風邪のひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:」とあります。第三条件である飲む目的の症状には「感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり」とあります。
第一条件である「普段の体力」は漢方医学ならではの考え方です。これについて図5で特徴を説明しましょう。どのような体力の持ち主なのか、体力虚弱な人(陰が多い人)=虚証(きょしょう)、体力充実(陽が多い人)=実証(じっしょう)の2つに分けて考えます。
図5 普段の体力とは
漢方医学では、薬を飲む方の体力はとても重要なポイントになります。漢方医学で問診(もんしん)が重視されるのは、患者さん個人個人にあった漢方薬選びのために「普段の体力」「今の体質や体調」「飲む目的の症状」などを見分けているのです。
■肥満症
自分が太っていると考える方は、大きく2パターンに分かれるようです(図6)。図6 ダイエットの2タイプ
▶やっと気づいたダイエットしてみようかな派
大食いで、早食い、ビールが大好き、食事は炭水化物中心、運動は苦手というタイプです。このタイプの方が飲む主な漢方薬に大柴胡湯(だいさいことう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが挙げられます。これらは、「普段の体力」が「充実」した方向けの漢方薬であることが共通しています。
▶嫌みダイエット派
とくに太っていないのに、スイーツを食べた後に「太っちゃった〜」「痩せなきゃ〜」のように、嫌味をいってしまうタイプです。食事はあまり食べられず、運動は苦手で、胃腸が弱く胃痛を訴えることがあります。このタイプの方が飲む漢方薬には、理中丸(りちゅうがん≒人参湯:にんじんとう)、六君子湯(りっくんしとう)などが挙げられます。これらは、「普段の体力」が「虚弱」な方向けの漢方薬であることが共通しています。
■とれない疲れ
動かす力である「気」が不足すると、食欲がなくなり、ストレスは多く緊張気味となりやすくなります。そして、「気」の不足は、「血」の不足を招き、体のだるさを感じるようになります。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、胃腸の働きを良くし、元気を取り戻します。落ち込んだ気を上にあげる働きがあります。このほかに十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)も疲れたときに飲むとよい漢方薬です。補中益気湯は主に気を補い、十全大補湯と人参養栄湯は気と血の両方を補う漢方薬です。
■誰もが悩む加齢による諸症状
多くの方は、いつまでも若々しくありたいと願っているでしょう。ただ、人はだれでも年をとります。老化は自然な現象です。理想は、健康的によりよく年を重ねること、と前向きに捉えましょう。漢方医学では、人は両親から命の気をもらって生まれてくると考えられています。命の気は「腎(じん)」に蓄えられると考えるので「腎気(じんき)」ともいわれます。漢方医学でいう腎とは臓器の腎臓を意味するのではなく、生殖・泌尿器や体内水分調節などを含めた広い概念を指します。腎気は、成長や老化を司ります。最盛期を過ぎると少しずつ減少していきます。
もしも、自分の体が、平均的な老化より早まっていたら、腎気が衰えている証拠です。このときこそ年齢に抵抗し、自分の年齢にみあった自然な状態に戻るように腎気を養いましょう。
腎気を補う代表的な漢方薬は、八味地黄丸(はちみじおうがん=腎気丸:じんきがん)です。
■つらい痛み
痛みにはさまざまな種類があります。なかでも相談が多いのが神経痛、筋肉痛、関節痛です。痛みの原因には「気」「血」「水」の流れが関係しています。「気」の流れの異常は神経痛となって現れることが多く、ストレスや疲れ、体力の低下、冷えなどによって起こります。張ったような痛みまたは鈍痛で、痛む場所が移動しやすく、強弱の変化もあります。虫が這うようなしびれを伴うこともあります。
「血」の流れの異常は筋肉痛として現れることが多く、血流不全、冷え、生活習慣病、打ち身、捻挫、運動不足などによって起こります。刺すような痛み、頑固でいつも同じところの痛みです。炎症を起こすことがあり、感覚がないしびれを伴うこともあります。
「水」の流れの異常は関節痛として現れることが多く、暴飲暴食、運動不足、冷えなどによって起こります。重だるい痛みです。むくみっぽい、曇や雨の日に悪化しやすい、冷えると悪化しやすいという特徴があります。
多くの方は「気」だけ、「血」だけ、「水」だけの異常ということはなく、「気」と「血」の異常、「気」と「血」と「水」の異常など複合的で、専門家による診察が必要です。
■くり返すめまい
めまいの原因も気血水の流れが関係しています。「気」の流れの異常は、自律神経に関係し、ストレス、疲れ、寝不足、神経の使いすぎにより神経が緊張し、内耳への血流が滞ることによっておきます。神経質な方に多いです。
「血」の流れの異常は、血流に関係し、脳血流の低下により起こります。病後、手術後、月経異常、更年期障害、むくみ、冷え症、貧血、生理痛がある方に多いです。
「水」の流れの異常は、胃腸に関係し、体内に溜まった水が逆流して、体の上部に昇ったことによりおこることが多いです。胃腸の弱い人、ストレスが胃に影響しやすい人に多いです。頭痛、肩こり、動悸、のぼせ、嘔吐を伴うことが多いです。
■効かせる飲み方
▶飲む回数
お薬の飲み方は、お薬の説明書の「用法・用量」に記載されています。記載された飲み方を守りましょう。飲む回数……1日2回、1日3回などと漢方薬の多くは記載されています。1日3回飲むことができない場合は、医師・薬剤師・登録販売者など(医療関係者)に相談しましょう。
▶飲むタイミング
漢方薬を飲むタイミングの基本は食前または食間になります。食前とは食事の30分〜1時間前です。食間とは食事と食事の間で、食事の2時間前後を目安としてください(図7)。図7 漢方薬を飲むタイミング
分かっていても、なかなか時間通りに飲むことは難しく、気を使うのもストレスになります。そこで覚えておいてほしいことは「空腹時に飲む」という1つだけです。お腹が空いたら漢方薬と覚えましょう。
▶実際の飲み方
個々の漢方薬の飲み方についても、医療関係者にご相談ください。私が患者さんにお勧めしている方法は、37℃位のお湯に溶して飲む方法です。37℃は胃の温度です。飲食物は胃の温度である37℃程度になってから吸収されます。それまでは、吸収されずに胃にとどまります。また、お湯に溶かして液体にすることで、味や香りを強く感じることができます。37℃は味が最もよく感じられる温度です。漢方薬の味や香りは消化液の分泌を促し、吸収を高めます。
しかし、漢方薬は37℃のお湯には溶けにくいのです。
<上手な溶かし方>
1. お湯のみに少量の熱湯(10~15mL)を入れ、漢方薬を加え、数本の箸やフォークなどで泡立てるように混ぜて漢方薬を溶かします。2. 漢方薬がおおよそ溶けたら、飲める量(50~100mL)のぬるま湯(36℃くらい)を加えてかき混ぜます。
お湯に溶かすと、香りや味が気になり、飲みにくくなる場合もあります。
<飲み方の工夫>
漢方薬をお湯に溶かした後、ハチミツ※を少量入れるという方法があります。※なお、乳児ボツリヌス症の予防対策として、1歳未満の子どもにはハチミツを使用しないように注意してください。
また、オブラートを利用するという方法もあります(図8)。
図8 上手なオブラートの使い方
▶飲む時の注意
・お茶、ジュース、牛乳、アルカリイオン水などに混ぜて飲まないようにしてください。 漢方薬の成分が化学反応を起こして、効果が低下する場合があります。・一気に飲まないように、ゆっくりと飲むことをお勧めします。
・2種類以上の漢方薬を、同時にお湯に溶かして飲まないでください。漢方薬は生薬の決められた量の組み合わせで効果を発揮します。2種類以上の漢方薬の同時服用は、生薬の組み合わせが変わり、十分な効果を発揮できない場合があります。2種類以上の漢方薬を効かせたい場合には時間を空けて飲む方法もお勧めです。
・実際の服用にあたっては医療関係者の指示にしたがってください。
■効果の判定と飲む期間
漢方薬は、飲み始めてから2週間以内に「なんとなく、いいみたい!」と感じられます。効果の判定には1か月程度飲んでください。体のゆがみの状態、ゆがみの大きさ、ゆがみの複雑さ、積み重ねの年月などが効果に影響することがあります。1か月飲んでも「なんとなく、いいみたい!」と感じられなかったら、医療関係者へ相談してください。お悩みが改善され漢方薬を中止しても、日常の生活習慣が体のゆがみを作っていることが多いため、生活習慣が改善されなければ再びゆがんでしまいます。その場合は、中止して1か月程度で再びお悩みが現れることが多くあります。再度漢方薬を飲むときは、以前の体の状態と変わっている場合がありますので、もう一度相談し、自分にあった漢方薬を選びましょう。
■効かせる体作り
漢方薬を先に述べた3つの条件に合わせて、さらに効かせる飲み方を行ったとしても、受け入れる側の体が、「効く体」になっていないと効果が落ちてしまいます。ここでは漢方薬を効かせる体作りを紹介します。▶腸活
多くの漢方薬は、腸内細菌により分解され効果を発揮するといわれています。腸内環境を整えることが漢方薬を効かせる体作りの第一歩です。腸内環境を整える食事は、日本人に身近な和食がよいでしょう。発酵食品や乳酸菌を含む食品を積極的にとりましょう。味噌、漬物、納豆などです。整腸剤を利用してみてもよいでしょう。▶水分のとり方
体温くらい(36~37℃)の水分を少しずつ飲みましょう。喉の渇きは、体の中の水分が不足しているときに感じますが、逆に水分がたくさんあっても感じることがあります。これは、冷たい水が体の一部にたまっているためです。冷たい水は体内をめぐることができません。▶季節に応じた生活
冬……冬の体は「陽気(ようき)」が漏れ出さないように、表皮は閉ざされ外の寒さや外敵から守っています。活動は控えめにして「陽気」を蓄え、逃さない生活をしましょう。寝正月も体にとってはよいことです。「陽気」の蓄えが少ないと、体は冷え、春先に風邪を引きやすくなってしまいます。春……草木は芽を出し、体の中は冬に蓄えた「陽気」が動き出します。春は積極的に活動し「陽気」をめぐらせましょう。うまく「陽気」がめぐらないとストレスとなり自律神経系の病が起きやすくなります。
夏……夏の体は、新陳代謝を盛んに行い、体の中の入れ替えを行います。大いに汗をかいて「陽気」を発散しましょう。冷房で体を冷やして発散を妨げないようにしましょう。発散不足や冷たいもののとり過ぎなどで胃腸を冷やすと、体に水がたまり秋に湿気の病(咳・痰、関節痛、皮膚炎など)を起こしやすくなります。
秋……草木は実を結び、収穫の時期となります。秋の体は、夏に発散した「陽気」を補充します。食欲の秋として、大いに食べて、冬に備えて陽気を蓄えましょう。秋にダイエットは禁物です。外は乾燥するため体は潤す体質になっています。そのため、体内は水分がたまりやすく湿気の病になりやすくなります。
▶体を冷やさない
冷えるとものは固まります。体の中でも「気血水」のめぐりが滞ります。体を冷やす飲食物(生もの、甘いもの、冷たい飲みもの、緑茶、コーヒーなど)はほどほどにしましょう。また、体には動脈が体表面近くに流れている場所(首筋の両脇、わきの下、足の付け根、膝裏、足首、へそなど)があります。ここを冷やすと体全体が冷えます。これらに直接寒気が当たらないような服装を心がけましょう。
Q1. お薬の飲み合わせの注意点について教えてください。
A1. 飲み合わせには、さまざまなパターンがあります。安全な飲み合わせもありますが、注意が必要な飲み合わせもあります。その都度、医療関係者にご相談ください。<特に注意が必要な飲み合わせ>
・麻黄(まおう)を含む漢方薬(麻黄湯、葛根湯(かっこんとう)など)
麻黄には交感神経を興奮させる作用があります。甲状腺の薬、咳止め、気管支喘息の薬などとの組み合わせで、異常な汗、動悸、脈が速くなる、吐き気、不眠などが起こる場合があります。
・甘草(かんぞう)を含む漢方薬(芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)など多数)
甘草にはカリウムを下げる作用があります。一部の血圧の薬、心臓の薬などとの組み合わせで、体がだるくなる、吐き気、血圧が上がる、痙攣などが起こる場合があります。甘草の成分であるグリチルリチン酸は西洋薬としても用いられています。
・膠飴(こうい)を含む漢方薬(大建中湯(だいけんちゅうとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)など)
膠飴には糖分が含まれています。一部の糖尿病の薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)との飲み合わせで、膠飴の中の糖分の吸収が妨げられて、お腹の中にたまり、腹部膨満感、腹部にガスがたまりやすくなるなどの症状がでることがあります。
・漢方薬と抗菌薬の飲み合わせ
多くの漢方薬は腸内細菌により分解されます。抗菌薬との併用で、腸内細菌が殺され、漢方薬の効果が弱まることがあります。
漢方薬の成分の牡蛎(ぼれい)、竜骨(りゅうこつ)、石膏(せっこう)などはカルシウムを含みます。カルシウムと抗菌薬が結合して、両方の作用が弱まることがあります。
・胃の中のpH影響
空腹時の胃の中のpHは低下しています。そのため、空腹時に漢方薬を飲むと、漢方薬の中に含まれている酸性の成分は吸収がよくなりますが、アルカリ性の成分の吸収は抑えられます。アルカリ性の成分には、麻黄のエフェドリンや附子(ぶし)のアコニチンがあり、どちらも副作用には注意が必要な成分です。これらは、空腹時に飲むことで吸収が抑えられ、副作用を防ぐことができます。西洋薬の胃酸を抑える薬との飲み合わせにより、胃の中のpHは上昇し、漢方薬の成分の吸収に影響を及ぼすことがあると考えられます。しかし、漢方薬には多くの成分が含まれているため、はっきりとしたことはいえません。
影響が明らかになっていない飲み合わせもたくさんあります。薬局では新たな情報が得られましたらお伝えするようにしています。
Q2. 漢方薬の副作用について教えてください。
A2. ご自分に合った漢方薬を選ぶことで、ある程度副作用を避けることができます。・自分に合っていない漢方薬を飲んだために起きる副作用
体力虚弱の方が、体力充実の方向けの漢方薬を飲むと、体力を消耗して体調を崩すことがあります。例えば、麻黄湯は体力虚弱の方が飲むと、動悸、不眠、胃障害、汗が出すぎて胃がキリキリ痛んだり、体がだるくなったりします。
逆に体力充実の方が体力虚弱の方向けの漢方薬を飲むと、体に熱が充満して血圧が高くなったりします。
かつて、持病に重症な肝疾患をお持ちの方が、小柴胡湯(しょうさいことう)を飲んで、間質性肺炎を起こしたということがありました。
・西洋薬との飲み合わせによる副作用(Q1.参照)
・2種類以上の漢方薬を同時に飲んだときに起きる副作用
共通して含まれる生薬をたくさん飲んだための副作用と考えられます。よくあるのは甘草の飲み過ぎです。甘草を多く飲むと、血液中のカリウムが減り、むくんだり、血圧が高くなったりします。
・1種類の漢方薬が効きすぎた場合
大黄(だいおう)など、便を緩くする成分が効きすぎて軟便を起こすことがあります。
・よくなっても同じ漢方薬を飲み続けたために起きる副作用
長く飲み続けることで、肝臓に負担がかかることがあります。また、体を温める漢方薬を、改善されたにもかかわらずに、飲みすぎたために、体が熱くなりすぎたり、冷やす漢方薬を飲み続けたために冷えすぎてしまったりすることもあります。
・アレルギーによる副作用
胡麻(ごま)、小麦(しょうばく;コムギ)、桂皮(けいひ;シナモン)、山薬(さんやく;ヤマイモ)などのアレルギー
・生薬が引き起こす主な副作用
麻黄……不眠、動悸、興奮、血圧上昇、胃障害、尿がでにくくなる
附子……のぼせ、吐き気、動悸
甘草……むくみ、血圧上昇、体がだるくなる
地黄……胃腸障害
大黄……下痢
そのほか、予期しない副作用を起こすこともありますので、漢方薬を飲まれていて、体調の変化があったらすぐに医療関係者にご連絡ください。
Q3. 現在漢方薬を服用しています。調子がよくなったので、回数を調整したり、服用をやめたり、自分で調整してもよろしいでしょうか。
A3. 調子がよくなったということは、ゆがみが改善したということです。また、ゆがみが改善したことで、体質が変わっている場合もあります。ご自分で購入されてお飲みになっている漢方薬に関しては。薬剤師や登録販売者にご相談ください。処方箋の指示により飲まれている場合は、医師の指示にしたがってください。