漢方で改善!!働く女性の健康管理
女性特有症状にもう振り回されない!
第20回 日漢協・市民公開漢方セミナー 2017年10月12日(木)「漢方で改善!!働く女性の健康管理 女性特有症状にもう振り回されない!」
麻布ミューズクリニック 院長 玉田 真由美 先生
現在、労働力の総人口に占める女性の割合は約4割。職種を問わず、女性の社会進出は年々増えています。潜在的ニーズを考えると、今後もさらに増加していくことでしょう。
活躍が望まれる一方で、女性の健康管理は一筋縄ではいかないという側面もあります。女性は男性に比べると体力が乏しいだけでなく、月経、妊娠、出産、授乳、更年期など、世代によって移り変わる女性特有の変化もあり、体調が変化しやすいことが理由として挙げられます。また、仕事をしていても家事や育児などを主に担っており負担が大きいこと、脳の構造上、女性は男性よりも感情的なストレスに弱く、周囲に気を遣う傾向にあることなども影響しています。
そこで、今回は「働く女性の健康管理」にスポットを当てました。
女性のライフステージは、「女性ホルモンの変動」に大きな影響を受けます。
思春期からエストロゲンレベルが急激に増加し「性成熟期」に入ると、月経周期に応じて女性ホルモンが変動します。この世代では「月経前症候群」(月経前におこる不快な症状)や「月経随伴症候群」(月経に伴って起こる不快な症状)に悩まされる方が少なくありません。激しい腹痛や情緒不安(イライラや落ち込み)、胸の張り、むくみ、異常な眠気などが代表的な症状です。
50歳前後で「更年期」を迎えると、エストロゲンレベルの急激な低下により、ホットフラッシュ(冷えのぼせやほてり)、情緒不安(イライラや落ち込み)、関節痛といった不快な「更年期症状」に苦しむ方が出てきます。
月経前症候群、月経随伴症候群、更年期症候群、いずれの場合でも、日常生活や仕事に支障を及ぼしてしまうほど不快な症状に苦しむ方もいらっしゃいます。
つまり、働く世代は最も女性特有の症状に悩まされやすい時期と言えるのです。
程度の差はあれ、女性特有の不快な症状を感じている方は多いと思います。いつものことだから仕方がないと諦めないでください。なぜ、そのような症状が改善しないのか、まずは生活習慣から見直していきましょう。
活躍が望まれる一方で、女性の健康管理は一筋縄ではいかないという側面もあります。女性は男性に比べると体力が乏しいだけでなく、月経、妊娠、出産、授乳、更年期など、世代によって移り変わる女性特有の変化もあり、体調が変化しやすいことが理由として挙げられます。また、仕事をしていても家事や育児などを主に担っており負担が大きいこと、脳の構造上、女性は男性よりも感情的なストレスに弱く、周囲に気を遣う傾向にあることなども影響しています。
そこで、今回は「働く女性の健康管理」にスポットを当てました。
女性のライフステージは、「女性ホルモンの変動」に大きな影響を受けます。
思春期からエストロゲンレベルが急激に増加し「性成熟期」に入ると、月経周期に応じて女性ホルモンが変動します。この世代では「月経前症候群」(月経前におこる不快な症状)や「月経随伴症候群」(月経に伴って起こる不快な症状)に悩まされる方が少なくありません。激しい腹痛や情緒不安(イライラや落ち込み)、胸の張り、むくみ、異常な眠気などが代表的な症状です。
50歳前後で「更年期」を迎えると、エストロゲンレベルの急激な低下により、ホットフラッシュ(冷えのぼせやほてり)、情緒不安(イライラや落ち込み)、関節痛といった不快な「更年期症状」に苦しむ方が出てきます。
月経前症候群、月経随伴症候群、更年期症候群、いずれの場合でも、日常生活や仕事に支障を及ぼしてしまうほど不快な症状に苦しむ方もいらっしゃいます。
つまり、働く世代は最も女性特有の症状に悩まされやすい時期と言えるのです。
程度の差はあれ、女性特有の不快な症状を感じている方は多いと思います。いつものことだから仕方がないと諦めないでください。なぜ、そのような症状が改善しないのか、まずは生活習慣から見直していきましょう。
まず、症状を悪化させる原因を知りましょう。女性特有の症状で悩む多くの方に共通するのが「冷え」です。「冷え」を放置し悪化させると、女性特有の症状でもある婦人科系のトラブルをはじめ、泌尿器系・消化器系・運動器系・神経系・免疫系などさまざまな不快症状を引き起こしやすくなります。
よく「女性のほうが冷えやすい」と言われますが、それはなぜでしょうか。「冷え」が起こる要因として、男性よりも筋肉量が少ない、女性ホルモンの変動が起こる、過度のストレスや冷暖房と外気の急激な気温差などによる自律神経の乱れがおこりやすいといった身体的要因が挙げられます。
環境的な要因も無視できません。ワンピースやスカートなど外気に触れやすく熱が奪われやすいファッション、極端なダイエットによる栄養の偏り、サラダやスムージーなど冷たいものを選びがちになることなども「冷え」を誘発する要因となります。このような身体的・環境的要因により熱産生低下や熱の運搬力低下を引き起こしてしまう結果、女性は男性より冷えやすくなってしまうのです。
まずは食生活から目を向けてみましょう。冷たいものを摂りすぎると胃腸を直接冷やしてしまいます。胃腸が冷えていると、身体はそちらを温めることを優先的に行い、末端である手足はあと回しになります。手足の冷えは気にするものの、胃腸の冷えは気にしていない方が多いのではないでしょうか?胃腸の冷えを改善させない限り、手足の冷えは治りません。普段の飲み物はできる限り常温以上にしましょう。冷たいものを飲みたいなら一日一杯だけにする、毎日はやめるなど、自分でルールを設定してみましょう。コンビニランチなどで軽く済ませるようなときも、お味噌汁など温かいものを一品加えるなど工夫をするようにしましょう。普段から腹巻をしてお腹が冷えないようにすることも冷え対策の重要なポイントです。
極端な食事制限や単品ダイエットも冷えの原因につながります。バランス良い食事や腹八分目を心がけましょう。甘いお菓子は身体を冷やす方向に。しかし、甘いものが好きな人にとってそれを完全にやめるというのは辛いものです。ストレスがたまらない程度に少しずつ減らしてみてください。
運動をすることで筋肉量を増やし、代謝をあげることも大切です。天候や気温に左右されずに毎日できること(ラジオ体操やスクワットなど)から始めてみましょう。
首・手首・足首など、「首」という文字がつくところは熱が出ていきやすく、熱を取り込みやすい場所でもあります。冷え対策にひざ掛けを使用しているけれども冷えが改善しないという方は、レッグウォーマーで足首を温めつつ、熱が逃げるのを防いでみてください。
本来、冷えの改善には、ゆったりと湯船につかる全身浴がおすすめですが、忙しくてどうしてもシャワーしかできないという方は、首・手首・足首を重点的に温めると身体が温まりやすくなります。時間があるときには湯船にゆったりとつかり、マッサージをしてみましょう。お風呂から出た後は、暑いからといってすぐに扇風機にあたったり、バスタオルのままでうろうろしたりするのは避け、ある程度汗がひいたら服に着替え、腹巻やレッグウォーマーなどをして熱が逃げないようにしてください。夏でも薄手の腹巻をすることをおすすめします。
「冷えのぼせ」に困っている方は、温度調節がしづらいタートルネックなどを避け、のぼせたら首元を開けて熱を逃がし、冷えてきたらスカーフなどをかけて熱を逃さないようにするとよいでしょう。脱ぎ着できる服装で温度調整をしやすくすることが重要です。
女性の快適温度は男性よりも2~3℃高いといわれ、男性にとって快適なエアコンの設定温度は女性にとっては寒く感じるものです。男性は女性の健康を守るためにも、室温の設定をやや高めにするよう協力してください。
よく「女性のほうが冷えやすい」と言われますが、それはなぜでしょうか。「冷え」が起こる要因として、男性よりも筋肉量が少ない、女性ホルモンの変動が起こる、過度のストレスや冷暖房と外気の急激な気温差などによる自律神経の乱れがおこりやすいといった身体的要因が挙げられます。
環境的な要因も無視できません。ワンピースやスカートなど外気に触れやすく熱が奪われやすいファッション、極端なダイエットによる栄養の偏り、サラダやスムージーなど冷たいものを選びがちになることなども「冷え」を誘発する要因となります。このような身体的・環境的要因により熱産生低下や熱の運搬力低下を引き起こしてしまう結果、女性は男性より冷えやすくなってしまうのです。
■日常生活での注意点と対策
「冷え」が悪化しないようにするには、日常生活の中で対策をとっていくことが重要です。まずは食生活から目を向けてみましょう。冷たいものを摂りすぎると胃腸を直接冷やしてしまいます。胃腸が冷えていると、身体はそちらを温めることを優先的に行い、末端である手足はあと回しになります。手足の冷えは気にするものの、胃腸の冷えは気にしていない方が多いのではないでしょうか?胃腸の冷えを改善させない限り、手足の冷えは治りません。普段の飲み物はできる限り常温以上にしましょう。冷たいものを飲みたいなら一日一杯だけにする、毎日はやめるなど、自分でルールを設定してみましょう。コンビニランチなどで軽く済ませるようなときも、お味噌汁など温かいものを一品加えるなど工夫をするようにしましょう。普段から腹巻をしてお腹が冷えないようにすることも冷え対策の重要なポイントです。
極端な食事制限や単品ダイエットも冷えの原因につながります。バランス良い食事や腹八分目を心がけましょう。甘いお菓子は身体を冷やす方向に。しかし、甘いものが好きな人にとってそれを完全にやめるというのは辛いものです。ストレスがたまらない程度に少しずつ減らしてみてください。
運動をすることで筋肉量を増やし、代謝をあげることも大切です。天候や気温に左右されずに毎日できること(ラジオ体操やスクワットなど)から始めてみましょう。
首・手首・足首など、「首」という文字がつくところは熱が出ていきやすく、熱を取り込みやすい場所でもあります。冷え対策にひざ掛けを使用しているけれども冷えが改善しないという方は、レッグウォーマーで足首を温めつつ、熱が逃げるのを防いでみてください。
本来、冷えの改善には、ゆったりと湯船につかる全身浴がおすすめですが、忙しくてどうしてもシャワーしかできないという方は、首・手首・足首を重点的に温めると身体が温まりやすくなります。時間があるときには湯船にゆったりとつかり、マッサージをしてみましょう。お風呂から出た後は、暑いからといってすぐに扇風機にあたったり、バスタオルのままでうろうろしたりするのは避け、ある程度汗がひいたら服に着替え、腹巻やレッグウォーマーなどをして熱が逃げないようにしてください。夏でも薄手の腹巻をすることをおすすめします。
「冷えのぼせ」に困っている方は、温度調節がしづらいタートルネックなどを避け、のぼせたら首元を開けて熱を逃がし、冷えてきたらスカーフなどをかけて熱を逃さないようにするとよいでしょう。脱ぎ着できる服装で温度調整をしやすくすることが重要です。
女性の快適温度は男性よりも2~3℃高いといわれ、男性にとって快適なエアコンの設定温度は女性にとっては寒く感じるものです。男性は女性の健康を守るためにも、室温の設定をやや高めにするよう協力してください。
日常生活でこうした工夫をしても頑固な冷えが治らない場合には、「漢方治療」という方法があります。東洋医学では、病気と診断される前の「なんとなく調子が悪い」という「未病」の段階から治療の適応になります。「冷え」は未病の代表格。上述のとおり、「冷え」の予防や改善が、女性特有の症状をはじめ、様々な体調不良の予防につながります。
すでに症状が出てしまった方や、なんらかの病気と診断されてしまった方でも遅くはありません。「漢方治療」を検討してみましょう。
同じ症状でも、その原因や体質によって、処方される漢方薬は異なります。漢方薬も薬。副作用が全くないわけではありません。自己判断で漢方薬を購入するのではなく、必ず医師の診断を受けることをおすすめします。
すでに症状が出てしまった方や、なんらかの病気と診断されてしまった方でも遅くはありません。「漢方治療」を検討してみましょう。
同じ症状でも、その原因や体質によって、処方される漢方薬は異なります。漢方薬も薬。副作用が全くないわけではありません。自己判断で漢方薬を購入するのではなく、必ず医師の診断を受けることをおすすめします。
■漢方では「四診(ししん)」と呼ばれる方法で診察を行います。
1. 望診(ぼうしん)=視診
患者さんが診察室に入ってきたときの姿勢や歩き方、表情、話をするときの目線・目力などは大切な診察所見となります。また、「舌の状態」も重要な診察項目で、舌の色や大きさ、付着している苔の色や厚さ、さらに舌の裏にある舌下静脈の太さなどを診ていきます。そのため、診察の前は色の濃いものの飲食を避け、舌ブラシで舌苔をとりのぞくことは控えてください。2. 聞診(ぶんしん)=聴診・臭診
聴診器で呼吸音、心音、腸蠕動音などを聴診します。口臭、体臭も重要な情報となるため、病院を受診されるときは、香水や香料のはいった制汗剤の使用は控えてください。3. 問診(もんしん)=詳しい問診
困っている症状の有無だけでなく、いつから自覚したか、その症状の頻度や程度、どのような条件で悪化もしくは改善するかなど、一つ一つの症状に対し詳しくお話を伺っていきます。4. 切診(せっしん)=脈診と腹診
脈は触ってすぐに触れるか、あるいはしっかり押さないと触れないのか、脈の強弱・幅・テンションなども診ていきます。腹部の所見は漢方学的な情報の宝庫。西洋医学の場合は膝を曲げてお腹の緊張を取ってから行いますが、漢方では足を伸ばした状態で、丁寧に腹部を触って診察していきます。■四診を経て、次のようなことを見極めます。
虚実(きょじつ)
体力がなく「虚」しているのか、それとも多すぎて「実」しているのか、体力の強弱や病気に対する反応の強弱を判断します。寒熱(かんねつ)
その症状が「寒」によって起きているのか、「熱」によって起きているのかを判断します。「寒」と「熱」が同時に交錯して存在するような「寒熱錯雑」といった状態も見極めていきます。■気血水の状態
漢方には「気・血・水」という特有の概念があります。「気(き)」とは元気の気や、気力の気といったように、目には見えない生命活動を行うエネルギーのことを、「血(けつ)」は赤色の体液、いわゆる血液とその働き、「水(すい)」は生体を潤す無色の体液(リンパ液や汗)のことを指します。「気・血・水」それぞれがバランスよく巡っていることが健康維持につながります。一方、その巡りやバランスが崩れてくると、身体は不調が出やすい状況に陥ってしまいます。漢方では、「四診」により身体のどの部分に症状や疾患の本質が存在しているのか、どの巡りやバランスが悪く不具合を生じているのかを見極めつつ症状の治療(標治)および疾病本態の治療(本治)を行うため、検査所見の異常の有無や診断名にはとらわれません。「病」だけでなく「人」を診るといえるでしょう。
「気・血・水」について掘り下げていきましょう。
「気」が低下すると、疲れやすい、元気がない、やる気が出ないといった「気虚(ききょ)」の状態になります。「気」の巡りが滞って「気滞(きたい)」という状態になると、喉や耳が詰まった感じがする、堂々巡りの思考、お腹が張るといった症状が出やすくなります。「気」が一気に上がってくる「気逆(きぎゃく)」という状態では、発作性の頭痛やめまいを感じたり、イライラ、動悸、冷えのぼせを訴えたりする方もいます。
「血」の巡りが滞ってしまった状態を「瘀血(おけつ)」といいます。月経前症候群、生理痛、不妊、更年期症候群といった女性特有の症状には「瘀血」が関わっていることが少なくありません。
一方、「血」が不足して「血虚(けっきょ)」という状態になると、皮膚がカサカサする、髪の毛が抜ける、爪がもろくなる、顔色が悪いといった症状を引き起こしやすくなります。
「水」巡りのバランスが崩れた「水毒(すいどく)」は、余計なところに「水」がたまりやすい一方、必要なところに「水」が不足している状態です。喉が渇いて水をよく飲むにもかかわらず、お小水の回数が少なく、むくみやすい傾向になります。お小水の回数が少なすぎるのも「水毒」でおこる症状ですが、頻尿も「水毒」で引き起こされる場合があります。雨の日や台風の日など天候不良時に、頭痛やめまいなどの体調不良がおこりやすいことも、「水毒」の特徴です。
このように「気・血・水」のバランスや巡りが乱れると、様々な不快症状を引き起こしやすくなります。
「冷え」との関係性はどのようなものでしょうか。「気・血・水」の巡りが乱れると、熱の運搬が滞ってしまいやすくなり、「冷え」を誘発しやすくなります。冷えると「気・血・水」の巡りはさらに乱れやすくなり、悪循環に陥ってしまう結果、さまざまな不快症状を引き起こしやすくなるわけです。
「気」が低下すると、疲れやすい、元気がない、やる気が出ないといった「気虚(ききょ)」の状態になります。「気」の巡りが滞って「気滞(きたい)」という状態になると、喉や耳が詰まった感じがする、堂々巡りの思考、お腹が張るといった症状が出やすくなります。「気」が一気に上がってくる「気逆(きぎゃく)」という状態では、発作性の頭痛やめまいを感じたり、イライラ、動悸、冷えのぼせを訴えたりする方もいます。
「血」の巡りが滞ってしまった状態を「瘀血(おけつ)」といいます。月経前症候群、生理痛、不妊、更年期症候群といった女性特有の症状には「瘀血」が関わっていることが少なくありません。
一方、「血」が不足して「血虚(けっきょ)」という状態になると、皮膚がカサカサする、髪の毛が抜ける、爪がもろくなる、顔色が悪いといった症状を引き起こしやすくなります。
「水」巡りのバランスが崩れた「水毒(すいどく)」は、余計なところに「水」がたまりやすい一方、必要なところに「水」が不足している状態です。喉が渇いて水をよく飲むにもかかわらず、お小水の回数が少なく、むくみやすい傾向になります。お小水の回数が少なすぎるのも「水毒」でおこる症状ですが、頻尿も「水毒」で引き起こされる場合があります。雨の日や台風の日など天候不良時に、頭痛やめまいなどの体調不良がおこりやすいことも、「水毒」の特徴です。
このように「気・血・水」のバランスや巡りが乱れると、様々な不快症状を引き起こしやすくなります。
「冷え」との関係性はどのようなものでしょうか。「気・血・水」の巡りが乱れると、熱の運搬が滞ってしまいやすくなり、「冷え」を誘発しやすくなります。冷えると「気・血・水」の巡りはさらに乱れやすくなり、悪循環に陥ってしまう結果、さまざまな不快症状を引き起こしやすくなるわけです。
四診の見立てをもとに漢方薬の処方を決定します。それぞれの見立てに対する代表的な処方を紹介しましょう。
便秘と下痢を繰り返し、お腹が冷えて張る場合には大建中湯(だいけんちゅうとう)が適しています。冷えて下痢の症状が出やすい場合や、水様性の下痢をしやすい人には真武湯(しんぶとう)などが処方されます。食欲低下や食後の胃もたれなどの症状に対しては、人参湯(にんじんとう)や四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)が代表的な処方と言えるでしょう。
「血」が不足する「血虚」の状態では、皮膚がカサカサする、髪の毛が抜ける、爪がもろいなどの症状が見られます。「血」を補う「補血剤」の代表処方は、四物湯(しもつとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、帰脾湯(きひとう)などです。
「腎虚(じんきょ)」では、トイレが近くなって何度も目が覚める、腰痛、物忘れや生殖機能の低下などの症状が現れます。「腎気」を補う「補腎剤」として、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが処方されます。
「水」の巡りが悪くなる「水毒」では、口渇・多飲・尿不利(尿の回数が少ない)・むくみといった症状が特徴です。雨の日の体調不良も「水毒」の典型的な症状の一つ。「水毒」の改善には「利水剤」を使用します。「利水剤」は余分な「水」は排出する方向へ、「水」が不足している部分には保持する方向へ、つまり「水」のバランスをとります。「利水剤」の代表処方は五苓散(ごれいさん)です。膝関節に水がたまって膝が痛いときに選択されることの多い防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)にも利水作用があります。
ここで紹介した症状にぴたりと当てはまる場合でも、自己判断で薬を選択することはすすめません。「気・血・水」の乱れや「虚実」、「寒熱」は複雑に絡み合うことが多く、単純ではありません。一見、のぼせていて「熱」をもっているように見える方が実は「冷え」ていたり、大柄でがっちりしていていかにも体力の満ち溢れているように見える方が「虚」しているようなこともあります。症状が同じであっても、その不快な症状を引き起こす原因が異なれば、治療する内容も異なります。
漢方専門医は「四診」を丁寧に行いながら、不快な症状をおこしている原因を見極めていきます。また配合されている生薬の組み合わせや量にも万全の注意を払っています。また、内服を始めてからの身体の変化、診察所見の変化を定期的に観察し、副作用チェックも行いながら治療をすすめていきます。漢方治療を検討する際には、自己判断を避け、医師の診察を受けることをおすすめします。
■胃腸機能の低下
胃腸機能を整えることは基本中の基本。どのような症状に悩む方であれ、胃腸機能が低下している場合には、まず胃腸機能を整えることが優先されます。便秘と下痢を繰り返し、お腹が冷えて張る場合には大建中湯(だいけんちゅうとう)が適しています。冷えて下痢の症状が出やすい場合や、水様性の下痢をしやすい人には真武湯(しんぶとう)などが処方されます。食欲低下や食後の胃もたれなどの症状に対しては、人参湯(にんじんとう)や四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)が代表的な処方と言えるでしょう。
■気虚・血虚・腎虚
「気虚」とは気力が低下している状態で、疲労感や食後の眠気が強いといった症状が現れます。「気虚」の改善には、四君子湯や六君子湯、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)など、「気」を補う「補気剤」が使用されます。「血」が不足する「血虚」の状態では、皮膚がカサカサする、髪の毛が抜ける、爪がもろいなどの症状が見られます。「血」を補う「補血剤」の代表処方は、四物湯(しもつとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、帰脾湯(きひとう)などです。
「腎虚(じんきょ)」では、トイレが近くなって何度も目が覚める、腰痛、物忘れや生殖機能の低下などの症状が現れます。「腎気」を補う「補腎剤」として、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが処方されます。
■気滞・気逆
「気」の巡りが滞り、喉のつまりや腹部膨満感を訴えるような「気滞」の治療には、香蘇散(こうそさん)や半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など気の巡りを良くする「気剤」が用いられます。また「気」が上がってくる「気逆」では、動悸や過緊張、イライラなどの情緒不安定な状態が起きやすくなります。抑肝散(よくかんさん)や黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが代表処方です。「気逆」による発作性のめまいには苓桂朮甘湯などが選択されます。■瘀血・水毒
「血」巡りが滞ってしまう「瘀血」の治療には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの「駆瘀血剤(くおけつざい)」が中心になります。「瘀血」の程度が強く、便秘を伴うような場合は通導散(つうどうさん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が選択されます。「水」の巡りが悪くなる「水毒」では、口渇・多飲・尿不利(尿の回数が少ない)・むくみといった症状が特徴です。雨の日の体調不良も「水毒」の典型的な症状の一つ。「水毒」の改善には「利水剤」を使用します。「利水剤」は余分な「水」は排出する方向へ、「水」が不足している部分には保持する方向へ、つまり「水」のバランスをとります。「利水剤」の代表処方は五苓散(ごれいさん)です。膝関節に水がたまって膝が痛いときに選択されることの多い防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)にも利水作用があります。
ここで紹介した症状にぴたりと当てはまる場合でも、自己判断で薬を選択することはすすめません。「気・血・水」の乱れや「虚実」、「寒熱」は複雑に絡み合うことが多く、単純ではありません。一見、のぼせていて「熱」をもっているように見える方が実は「冷え」ていたり、大柄でがっちりしていていかにも体力の満ち溢れているように見える方が「虚」しているようなこともあります。症状が同じであっても、その不快な症状を引き起こす原因が異なれば、治療する内容も異なります。
漢方専門医は「四診」を丁寧に行いながら、不快な症状をおこしている原因を見極めていきます。また配合されている生薬の組み合わせや量にも万全の注意を払っています。また、内服を始めてからの身体の変化、診察所見の変化を定期的に観察し、副作用チェックも行いながら治療をすすめていきます。漢方治療を検討する際には、自己判断を避け、医師の診察を受けることをおすすめします。
働き盛りの世代は女性特有の症状に悩まされやすい世代です。まずは日常生活における注意点から見直し、改善させるべき点がある場合は対策をとりましょう。それでもなかなか改善しない不快な症状にお困りの方は、「漢方治療」を検討してみましょう。「病名」や「検査異常の有無」に関わらず、一人ひとりの状態を診て治療をおこなっていきますので、改善策が見つかりやすいと言えるでしょう。
男性の方は、女性特有の症状はよくわからないと目をそむけず、まずは理解してさしあげてください。女性が寒がらない空調温度に設定するといった気遣いも優しさのひとつ。お互いの理解が働く女性の健康維持にもつながります。
皆様の健康が社会を元気にすることを忘れないでください。
男性の方は、女性特有の症状はよくわからないと目をそむけず、まずは理解してさしあげてください。女性が寒がらない空調温度に設定するといった気遣いも優しさのひとつ。お互いの理解が働く女性の健康維持にもつながります。
皆様の健康が社会を元気にすることを忘れないでください。
Q.1 現在、漢方薬を服用しています。調子が良くなったので回数を減らしたり、服用を止めたり、自分で調整してもいいですか?
A.1 調子が良くなると自己判断でやめてしまう方がいますが、せっかく良くなってきた症状が悪化してしまう場合があります。処方通り内服しているからこそ、調子が整っていることが多いのです。悪化した症状を再度調子のいい状態に戻すのには時間がかかります。減らしていくときほど慎重さが必要です。症状や漢方学的所見の悪化がないことを確認しながら、慎重に減薬を行っていくと、最終的には頓服でもよくなり、廃薬につながるケースが多いので、自己判断せず、必ず医師に相談してください。
Q.2 漢方を飲んでいる途中で妊娠が判明した場合にはどうすればいいでしょうか。
A.2 産婦人科で確実に妊娠と判定されるまで、基本的には漢方薬を飲み続けてかまいません。妊娠初期である器官形成期は、赤ちゃんが重要な臓器を作る期間ですので、一旦休薬するのが基本です。妊娠希望のある方はその旨伝えておくといいでしょう。妊娠が判明した場合には、まず医師に相談してください。Q.3 漢方薬を飲み続けていると、身体に悪影響を及ぼすことはありますか?
A.3 同じ方でも、内服していくうちに身体の状態が変化したり、また環境要因に影響され、身体の状態が変わってしまう場合があります。そのため、医師は定期的に診察を行いながら、治療内容を決めていくわけです。体調に変化があるにもかかわらず、受診せずに「ずっとこの薬が出ているからこのままでいいや」と飲み続けたり、前にこの薬が効いたから飲んでみようと内服してしまうと、悪影響をおよぼすこともあります。医師の指導に従ってください。近年、山梔子(さんしし)という生薬を含む漢方薬を10年以上服用した例で、副作用が報告されました。こうした副作用の情報はすべての医師に伝えられ、この生薬を含む処方を長く飲んでいる方には対処をしています。
Q.4 複数の漢方薬を服用しても大丈夫ですか?
A.4 増えすぎると副作用が出やすくなる生薬がありますし、組み合わせによって相反する効果になってしまうものもありますから、決して自己判断はしないでください。すでに漢方薬を飲んでいて、別の病院にかかる場合には、必ずお薬手帳を先方の医師に見せてください。漢方薬は本来単独処方が基本です。漢方専門医でも、組み合わせる場合には、構成生薬の内容や各生薬が合わせて何グラムになるかというところまで注意を払い熟考しています。決して自分では組み合わせないでください。
Q.5 自宅や、会社の近くでなかなか漢方薬を処方してくださる病院を見つけられません。どのように探せばよいか、教えてください。
A.5 「漢方のお医者さん探し」「QLife漢方」「みんなの漢方」など一般の検索サイトのほか、日本東洋医学会の漢方専門医を検索できるサイトもあります。お住まいの地域の医療機関を探すことができるので、上手に利用しましょう。Q.6 ホットフラッシュ、動悸の治療で漢方薬を服用していますが、女性ホルモン剤も処方されています。漢方薬と西洋薬との併用が心配です。
A.6 女性ホルモン剤だけでは抑えきれないホットフラッシュが漢方薬の併用で落ち着くなど、併用により症状のコントロールが行いやすくなることもあります。例えば、今ある強い症状を西洋薬で抑え、その症状が出ない体質改善を漢方薬が担うことで、次第に症状が出づらくなり、西洋薬が減量や休薬できることもあります。西洋薬だけ、漢方だけと偏らず、両方のいい面を取り入れていくことが重要だと考えています。
ただし、併用を控えたほうがいい組み合わせもありますので、受診している病院では必ずお薬手帳を見せ、内服中の薬剤情報を医師に知らせることが大事です。
Q.7 食生活に偏りがありサプリメントをすすめられ服用しています。漢方薬との併用は大丈夫でしょうか?
A.7 東洋医学では食養生を重視します。本来ならサプリメントに頼らずに食生活を見直すことが基本です。サプリメントをどうしてもとりたい場合は注意が必要なものもあります。漢方とは全く関係のないようなネーミングのサプリメントに、様々な生薬が含まれていることもあります。生薬も多すぎると副作用が出やすくなりますので注意が必要です。サプリメントも医師に相談したら怒られるからと隠すのではなく、きちんと伝えていただく方が、最終的に副作用を抑えたり回避したりすることができます。
サプリメントではありませんが、ハーブティーの甘味付けに使われることがあるリコリスは、多くの漢方製剤に含まれる「甘草」という生薬です。そのハーブティーと甘草を含む漢方薬を飲めば、おのずと甘草を多く摂取することになってしまいます。このように、気づかないうちに生薬成分を摂っている可能性もありますので、パッケージの表示などで原材料を確認するようにしましょう。
Q.8 雑誌や情報番組で紹介されるはやりの健康法はすべての人に良いわけではないと聞きます。知らず知らずのうちにやってしまいがちな悪い習慣など健康管理の盲点や間違いなど教えてください。
A.8 単品ダイエットや炭水化物を極端に減らすなど極端なものはおすすめしません。食べ過ぎているなという方は、まずは、だらだら食いをやめる、バランスの良い食事などを心がけながら、食事量を現在の1~2割ほど減らすなど、ストレスが溜まらない程度に日々取り入れていくことが大事です。運動もジムに行かなければできないとか、30分以上とか、雨の日でも走ってなどという厳しいルールを作ってしまうと長続きしません。たとえば、ラジオ体操のように自分の好きな時間に家の中でできること、雨の日も風の日も暑い日も寒い日も必ずできることをから始めてみましょう。たとえ10分間でも継続して行えば良いのです。寝つきが悪い方の中には、眠れないからテレビや携帯を見ているという方が少なくありません。ブルーライトが睡眠には悪影響を及ぼすことはすでにご存じの方も多いと思います。また、画面を見ることで脳に情報が入ると、無意識とはいえ、どの情報が自分にとって有益かなどを判断してしまうため、やはり寝つきを悪くします。体内時計がずれていかないようにすることも大切です。どんなに眠れなくても朝起きる時間は一定にし、朝は必ず光を浴びるようにしましょう。休日に起きる時間をずらす場合は1時間以内とし、昼寝も30分程度にとどめましょう。
インターネットからさまざまな情報が得られる時代になりましたが、正しい情報とは限りません。出典が分からないものや誰が書いたか分からないもの、間違った解釈をしたものが出回っていることがありますので、闇雲に信じないようにしましょう。