漢方は素晴らしい!漢方薬の特長
第19回 日漢協・市民公開漢方セミナー 2016年11月14日(月)「漢方は素晴らしい!漢方薬の特長」
日本漢方生薬製剤協会 一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌 氏(薬剤師)
「漢方」は、中国の古代医学を起源としていますが、日本で独自の発展を遂げた日本の伝統医学です。江戸時代に伝わった西洋医学である「蘭方(らんぽう)」に対し、中国(漢)から伝わり、日本で発展した伝統医学は「漢方」と呼ばれるようになりました。
現代医学は患者さんを診断して病名を決定し、それに応じた治療を行いますが、漢方医学では個々の体の状態や体質を重視して治療を行います。そのため同じ病気でも違う薬で治療するということもありますし、同じ薬で違った病気を治療することもあります。
漢方治療は長く続けて服用しその効果をじわじわ実感することも多いのですが、風邪の初期などに使われる葛根湯や、痙攣やこむら返りに使う薬の芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)など、速効性のある薬も少なくありません。また「副作用がない」「使いやすい薬」というイメージが強い漢方薬ですが、薬である以上副作用が出ることもあります。気になる症状は、医師、薬剤師、登録販売者などに相談しましょう。
漢方治療では体質や年代に合わせた多種類の薬が用意され、お年寄りから小さいお子様まであらゆる年代の方に処方が可能です。さらに普段から体力がないという方に向く構成の処方もあります。
現代医学は患者さんを診断して病名を決定し、それに応じた治療を行いますが、漢方医学では個々の体の状態や体質を重視して治療を行います。そのため同じ病気でも違う薬で治療するということもありますし、同じ薬で違った病気を治療することもあります。
漢方治療は長く続けて服用しその効果をじわじわ実感することも多いのですが、風邪の初期などに使われる葛根湯や、痙攣やこむら返りに使う薬の芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)など、速効性のある薬も少なくありません。また「副作用がない」「使いやすい薬」というイメージが強い漢方薬ですが、薬である以上副作用が出ることもあります。気になる症状は、医師、薬剤師、登録販売者などに相談しましょう。
漢方治療では体質や年代に合わせた多種類の薬が用意され、お年寄りから小さいお子様まであらゆる年代の方に処方が可能です。さらに普段から体力がないという方に向く構成の処方もあります。
「未病」は、現代医学の診察では検査値などで異常はないものの、調子が悪い状態を指します。現代医学で治療の対象にするのは病気を発症してからになりますが、漢方医学では、未病の状態、つまり自覚症状があれば病名のつかない状態でも、治療の対象になります。
以下はとくに漢方治療が有効とされるケースです。
■病院で治療するほどじゃないけれども、体の不調を感じる状態
■あちこち、いろいろな症状を自覚している状態
■なんとなく体力が落ちた、体調が崩れた、不快な症状がじわじわと出てきたと感じる
■検査値は正常だが自覚症状が取れない
■精神神経の不調
医師が処方する一般的な薬(西洋薬)は、大半が一つの成分のみでできていますが、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られています。生薬を組み合わせることによって薬の作用が強くなる、ひとつひとつの生薬にはない新しい働きが生まれるだけでなく、それぞれの生薬の毒性が抑制されることもあります。
本来漢方薬は生薬を煎じて飲む煎じ薬ですが、現在は製剤技術の進歩によって、顆粒、粉薬、粒状の錠剤、液剤といった簡便な剤形で製品化されています。医薬品ですから、生薬そのものの安全性、生産環境、工程等も基準が定められ、厳格に守られています。日本で製品化された漢方薬は安心して飲んでいただけるものです。
以下はとくに漢方治療が有効とされるケースです。
■病院で治療するほどじゃないけれども、体の不調を感じる状態
■あちこち、いろいろな症状を自覚している状態
■なんとなく体力が落ちた、体調が崩れた、不快な症状がじわじわと出てきたと感じる
■検査値は正常だが自覚症状が取れない
■精神神経の不調
医師が処方する一般的な薬(西洋薬)は、大半が一つの成分のみでできていますが、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られています。生薬を組み合わせることによって薬の作用が強くなる、ひとつひとつの生薬にはない新しい働きが生まれるだけでなく、それぞれの生薬の毒性が抑制されることもあります。
本来漢方薬は生薬を煎じて飲む煎じ薬ですが、現在は製剤技術の進歩によって、顆粒、粉薬、粒状の錠剤、液剤といった簡便な剤形で製品化されています。医薬品ですから、生薬そのものの安全性、生産環境、工程等も基準が定められ、厳格に守られています。日本で製品化された漢方薬は安心して飲んでいただけるものです。
気・血・水
漢方医学では人の体を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで捉え、それぞれが量的にしっかりあって、そして全身をくまなくめぐっている状態が健康であると考えます。まず「気」は、元気、気力といった言葉からもわかるように、「目には見えないけれども体に影響を与えるもの」の総称です。酸素が体のすみずみまで送られるとか、神経伝達がスムーズに行われる、これが漢方医学でいう気の流れと考えていただきたいと思います。
「血」は栄養を含んだ赤い液体で、血液と考えてください。
「水」は、体を潤す「体液」です。
虚・実
「虚(きょ)」は必要なものが足りず、体がへこんでいる状態、「実(じつ)」は余分なものが取り付いていて、出っ張っている、いびつになっている状態と言えます。この状態を矯正するのが漢方医学の治療です。血虚
「血」が少ない状態を「血虚(けっきょ)」といいます。血が少ないというのは栄養も足りていないということですから、皮膚に艶がない、痩せる、貧血、肌がかさかさする、抜け毛、白髪が増えるといった症状が現れます。過度なダイエットによる栄養不足で、血虚になることもあります。栄養バランスのいい食事や規則正しい生活を心がけましょう。血虚を改善する処方の中でも女性の冷え症や貧血によく使うのは、当帰芍薬散、十全大補湯です。加味帰脾湯は、年齢に限らず血虚の状態、痩せている、冷え症・貧血症の人で眠りが浅い人にお勧めで、熟眠感を高める薬です。
瘀血
血の巡りが悪い血行不良の状態を、漢方医学では「瘀血(おけつ)」といいます。瘀血の人はしみや目の下のクマ、アザができやすい傾向があり、肩こりや関節痛、頭痛、生理痛といった痛みの症状を招きやすくなります。子宮筋腫も、漢方医学では瘀血と捉えています。また、足は冷え症だけども上半身はのぼせ症という「冷えのぼせ」も、瘀血の代表的な症状と言えるでしょう。桂枝茯苓丸は、血行を良くする処方です。瘀血傾向のある人はふだんから適度な運動をすることが大事です。同じ姿勢を長時間とらないように工夫をしてみてください。気虚
「気」が少ない状態、文字通り元気がない状態を「気虚(ききょ)」といいます。疲れやすい、声も力がない、また気虚の人は胃腸が弱い人とすごく相関関係があります。胃腸が弱いので食欲もない、というのは代表的な気虚の症状です。補中益気湯や六君子湯(リックンシトウ)が治療に用いられる代表的な処方になります。脾の衰え
「気」「血」「水」という考え方とともに、「五臓」という捉え方もあります。ここでいう五臓は解剖学的に分類したものではなくて、体の働き別に分けた考え方です。中でも「脾(ひ)」と「腎(じん)」を漢方医学では重視しています。「脾」は脾臓ではなく、胃腸の働きの事を指し、「腎」は腎臓ではなくて、成長を担当する働きを意味しています。脾が弱ると胃腸の働きが弱って、体に必要なものを全身に送れない、あるいは食べたものから体に必要なものを作り出すことができません。「ひ弱い」という状態になり、体力・抵抗力も弱くて風邪をひきやすい、気力・精神力が落ちている状態です。
胃腸が弱くて疲れやすい元気がない状態によく使われるのが補中益気湯、別名 医王湯(イオウトウ)です。構成する生薬のうち、薬用人参は胃腸を守る、当帰は栄養を補う働き、さらに柴胡や升麻は筋力をつけることを期待して配合されています。
また、感冒の効能も注目すべき点です。補中益気湯には風邪の症状を改善する直接の働きはありませんが、体力や抵抗力をつけることによって風邪を治す、風邪にならない体力づくりに役立つので、感冒の効能も持っているのです。特に胃腸が弱くて疲れやすい、風邪を引きやすい、食欲がない人に適した処方です。
腎の衰え
中高年が夜に2回以上トイレに起きる、トイレに行っても残尿感がある、出終わるまでに時間がかかる、尿に勢いがない、夜間尿でよく眠れないという症状があれば、「腎」に目を向けましょう。腎は成長・発育の要で、腎の働きが衰えるというのは老化するということなので、足腰が痛い、だるいといった症状が現れます。また腎は腎臓も含まれているため、おしっこのトラブルも現れやすくなります。腎の衰えに、よく使用されるのが八味地黄丸です。体に栄養を補う働き、水はけを良くする働き、体を温める働きがあります。一方で、消化が悪いという面もありますので、服用時にちょっと胃がもたれるようでしたら食後に飲む、またあくまで応用ですがスライスした生姜と一緒に飲んでいただくとか、胃を守るという働きを期待して、蜂蜜をお湯で溶いて一緒に飲むことを紹介する場合があります。
気滞
「気滞(きたい)」は気の巡りが悪い、神経伝達がうまくいかない状態です。自律神経が失調した状態や情緒不安定など、男性も含め更年期の時期に起こりやすい精神と体の不調は「気の巡りが悪い状態」と捉え、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯など「気滞の治療薬」を使います。例えば「ストレスがかかると気の巡りが悪くなって胃腸に症状があらわれる」「便秘と下痢を繰り返す」ということも気滞の代表的な症状の一つで、片頭痛として現れることもあります。男性も含めて更年期の症状に対する代表的な処方が加味逍遙散です。柴胡加竜骨牡蛎湯は、イライラして眠れない方にお勧めで、構成生薬の牡蛎の殻や竜骨(大型哺乳類の化石化した骨)でカルシウムの補給ができると捉えてください。イライラして眠れない、寝つきが悪いという人にお勧めです。また半夏厚朴湯は、気の巡りの悪さが喉に現れた状態、具体的には喉になにか詰まった感じがするけれどポリープもできていないという時に使う代表的な処方です。
気滞の漢方薬には気持ちをリラックスさせる働きがありますが、普段から「香り」に目を向けてみることもお勧めします。アロマテラピーを楽しみ、香味野菜を食べ、気持ちをリラックスさせて気の巡りを調えていきましょう。
燥
「燥(そう)」は、「水」が少ない状態です。燥に効果がある代表的な漢方薬は麦門冬湯で、空咳、痰がきれない、苦しい咳によく処方されます。燥になると体液が少なくなって体のあちこちが乾燥しますが、潤いをもたらす麦門冬湯は粘液の分泌を盛んにして痰を切れやすくしてくれます。また、喉の粘液の分泌を盛んにし、しわがれ声を改善して声の出が良くなる、という効果もあります。水滞
「水滞(すいたい)」は水の巡りが悪い状態で、水分代謝が悪くてむくみやすい、体内に水が多いので冷えやすいといった症状に加え、尿として水が出ないぶん汗をかきやすくなることもあります。五苓散は水分代謝を改善する代表的な処方で、二日酔いで下痢をしてしまった時などには腸からの水分吸収を高め、症状を軽減します。一方、防已黄耆湯はむくみ症によく使われる薬で、膝に水が溜まって膝が痛む人にもよく使われています。便秘
・悩む方の多い、便秘の症状改善にも漢方薬がおすすめです。
大黄という生薬が含まれた漢方薬が良く使われます。年配の方はあちこち症状が出やすいものです。漢方では「瀉下(しゃげ)」といいますが、便秘を改善すると長年困っていたそれらの症状が嘘のようにとれることがあります。代表的処方の一つである防風通聖散は便秘で血圧が高い人の症状に処方される薬です。肥満症の効能があり、便秘気味で皮下脂肪の多い人によく使われます。
Q.1 漢方薬の名前の末尾に漢字で「湯(とう)」、「散(さん)」、「丸(がん)」、などがつきますが、 なにを意味しているのでしょうか。(51歳女性)
A.1 八味地黄丸は「丸」、防風通聖散は「散」、葛根湯は「湯」、本来の使い方を表しています。今の日本の漢方製剤は基本的には全てエキスを抽出して錠剤・顆粒などにしていますが、昔の使い方を処方名で表しているということです。丸剤は生薬をつぶして固めた物、散は生薬を粉薬にした物、湯は煎じてその湯を服用した、というふうに昔はそういう作り方をしたということになります。Q.2 漢方薬はどのくらいの期間服用すれば、効果が出てくるのでしょうか。(55歳男性)
A.2 薬によって異なりますが、速効性を期待する薬以外は一カ月を目安に服用してください。一カ月飲んでも効果が全然感じられない場合は、薬局薬店で相談してください。Q.3 漢方を服用して症状が落ち着いたら、服用をやめてもいいのでしょうか。(45歳女性)
A.3 お薬は飲んで症状が消えたからやめても絶対に症状が戻らないということはありません。症状が落ち着いたら、1日3回を朝晩の1日2回にするとか、1回4錠飲む薬を半分や3錠にするなど、様子を見ていただくという方法もありますので薬局薬店で相談してください。Q.4 複数の漢方を使用しても問題ないでしょうか。サプリメントとの併用で注意することはありますか?(49歳女性)
A.4 薬局薬店で薬剤師もしくは登録販売者の方に具体的に相談してください。2処方を使用する時は、生薬が重複する場合が考えられますので、現在服用しているものを示して相談してみましょう。サプリメントとの併用についても、やはり相談していただくことをお勧めします。
漢方医学は現代医学にとって代わる治療ではありません。不調を感じたらまずは医師に診察していただくことが大事です。極端な事例ですが、胃がんで胃の症状がでていたのに、漢方の胃腸薬を飲んで症状が若干抑えられていると、早期発見の機会を逃してしまいます。さまざまな検査で病気を見つけ、現代医学で治療するというのが基本ですが、その中に漢方医学の考え方をとりいれることで治療の幅が広がり、生活の質は向上します。
現代医学は症状を臓器別や病名で考えますが、漢方医学には「全体的に人間の体を診る」「体質を考える」という視点があります。また心と体は密接に関わっているので、みなさん自身が自分の心と体の声に耳を澄ませましょう。何らかの症状があれば放置せずに、まず診察を受け、必要に応じて漢方薬を活用していただければと思います。漢方薬、あるいは現代医学の薬と組み合わせて治療効果を上げることも期待できます。
今日の話で「漢方薬を使ってみようかな」と感じたらぜひ薬局薬店にご相談ください。「漢方薬っていいものだね」と実感していただけると信じています。
現代医学は症状を臓器別や病名で考えますが、漢方医学には「全体的に人間の体を診る」「体質を考える」という視点があります。また心と体は密接に関わっているので、みなさん自身が自分の心と体の声に耳を澄ませましょう。何らかの症状があれば放置せずに、まず診察を受け、必要に応じて漢方薬を活用していただければと思います。漢方薬、あるいは現代医学の薬と組み合わせて治療効果を上げることも期待できます。
今日の話で「漢方薬を使ってみようかな」と感じたらぜひ薬局薬店にご相談ください。「漢方薬っていいものだね」と実感していただけると信じています。