~漢方医学とは~
漢方医学は、約1800年前に体系付けられた中国の医学が6世紀に日本に伝えられ、日本独自の発展を遂げた日本の伝統医学です。江戸時代に伝わった西洋医学「蘭方」に対して「漢方」と呼ばれるようになりました。現在では、多くの医療機関で治療に漢方薬が使用されており、その有用性が科学的に証明されてきています。148品目の漢方薬が健康保険の適用となっています。
漢方医学には、西洋医学と異なるいくつかの特徴があります。その中のひとつに「心身一如」という独特な考え方があります。西洋医学の場合、心の病は精神科、身体の異常はそれぞれの臓器や器官の専門診療科が治療するというように、「心」と「身体」を分けて診ますが、漢方医学では「心」と「身体」を紙の表と裏のように一体のものと位置づけ、心身全体の調和を図るような治療をします。
西洋医学の場合は病気が生じている部位に着目し、病気の原因となっている細胞や細菌・ウイルスなどにターゲットを絞って局所的な治療を行います。薬の成分は単一の化学物質なので、作用が強く、感染症やがんなど原因がはっきりしている病気や症状に対して、目覚しい効果を発揮します。
一方、漢方医学では個人個人の体質や症状から得られた情報を基に診断し、治療を行います。漢方薬は、多数の成分を含んだ天然の生薬が組み合わされた処方となっていますので、身体の様々な部位に複合的に働き、全身のバランスを整えることによって症状を改善していきます。自律神経失調症や不定愁訴など、西洋医学では診断(病名)がつかない症状に対しても治療が可能であり、効果が期待できるのです。
~漢方薬はこんな薬~
漢方薬の原料は、自然の生薬です。植物の根、茎、樹皮、葉、花、種子、果実など、「植物系」の生薬のほか、カキの貝殻や哺乳動物の化石など「動物系」の材料や、石膏や滑石、芒硝などの「鉱物系」もあります。
また、漢方薬というと、生薬を水で煮出して飲む「煎じ薬」のイメージが強いですが、現在は飲みやすさを考えたさまざまな製剤が作られています。近年広く使われているのが「エキス剤」。これは生薬の抽出液、つまり煎じた状態のものを濃縮して、フリーズドライ、あるいはスプレードライした顆粒状や細粒状(散剤)等で、煎じ薬のいい部分を残しながら簡便に飲めるよう工夫された製剤です。ほかにも、顆粒状や細粒状を打錠機で加圧成型した「錠剤」、散剤をハチミツなどで固めた「丸剤」、生薬を胡麻油で抽出し、蜜蝋などを使って固めた「軟膏」などもあります。
コラム1 漢方薬を正しく理解して
漢方薬には医師が治療行為として、処方するものと、一般の薬局・薬店等で販売されているものがあります。医師が処方する漢方薬の多くは健康保険も適用されます。現在、医師の約7割が漢方薬を処方しているにもかかわらず、「サプリメント」と思っている人が少なくありません。サプリメントの中には、特定保健用食品(トクホ)のように厚生労働省の審査を経て特定の保健効果が認められている「特定保健用食品(トクホ)」もありますが、各々の体質や症状に合わせて医師から処方される漢方薬や薬局・薬店等で販売されている漢方薬とは、全く違うものです。
また中国や韓国でお土産として「漢方薬」を購入する人も少なくありません。外国で購入された漢方薬は、日本の漢方薬とは違うものも多くあります。効能・効果が異なったり、副作用などの安全性も検証されていない場合も多くあります。服用には、十分注意をして下さい。