113号 (第38巻 第2号)2021年9月
日本漢方生薬製剤協会への期待
日本製薬団体連合会 会長 眞鍋 淳 |
本年5月に、日本製薬団体連合会会長を拝命いたしました第一三共の眞鍋です。日本漢方生薬製剤協会会員のみなさま方におかれましては、日頃より当連合会の活動に対して多大なご支援とご協力をいただいておりますことに御礼を申し上げます。また、この度は貴会ニューズレターに寄稿する機会をいただきましたこと、重ねて感謝申し上げます。
COVID-19の世界的な流行下、わが国の社会システムにおける様々な課題が浮き彫りになって参りました。製薬業界においてもワクチン開発の遅れや、海外諸国での原薬輸出制限等によって、一部医薬品で供給不安が発生するなど、業界全体としての課題が顕在化しました。
こういった状況下、当連合会は今日的な重要課題として、医薬品の安定供給の回復、COVID-19ワクチン・治療薬をはじめとする革新的な医薬品創製力の強化、健康・医療ビックデータの活用ならびにデジタル・トランスフォーメーションの推進によるバリューチェーンの効率化・高度化などに対して官民一体となって取組みを推進しています。
一方、高齢化が加速するわが国において、人生100年を通して誰もが健康で活躍できる社会を築いていくことが重要な課題となっており、製薬産業は、医薬品の枠を超えた来たるべき「ヘルスケア・アズ・ア・サービス」の時代にどの様に貢献することができるかを考えていく必要があると思っています。つまり、国民の立場になって、健康を取り戻したいというニーズ、あるいは健康な人がそれを維持するためのニーズを医薬品に限定することなく、突き詰めて考えていくことが、この産業の5~10年後の発展につながると考えます。
最近では、日本老年医学会から「フレイル」、すなわち加齢による心身の衰えに対して、早期発見と適切な介入が重要であると提唱されています。フレイルの介入方法として運動療法、栄養療法などに加えて、漢方製剤等による改善効果のエビデンスも報告されるようになりました。このフレイルへの対応はまさに「ヘルスケア・アズ・ア・サービス」の好事例と言えましょう。
高齢化が進展する中、貴協会は直面する課題として「さらなるエビデンスの集積と有用性の確立」、「原料生薬の継続的安定確保と国産生薬生産量の拡大」など8項目からなる「漢方の将来ビジョン2040」を発表され、本年5月にはビジョン実現に向けたロードマップとアクションプランの中で、10年後および20年後のあるべき姿、そのために対処すべき課題と解決のための方向性、活動の道筋を明確に定められました。これらの取組みの中では、原料生薬の80%を中国に依存している現状から、安定的な必要量と品質確保のために国産化を進め、20年後には3倍の国内生産量を確保するという強い決意を示されています。貴協会の将来を見すえた取組みに対して心から敬意を表します。
今後、貴協会会員の皆様が一丸となってビジョンの達成に邁進され、漢方製剤等の安定供給を通じて国民の健康、健康寿命の延伸に貢献されることを心より期待申し上げます。当連合会といたしましても貴協会との連携を一層深め、国民生活の向上に貢献して参る所存です。
ご挨拶
日本漢方生薬製剤協会 副会長 鈴木 一平(小太郎漢方製薬株式会社 代表取締役社長) |
昨年来の新型コロナウイルス感染症拡大により、お亡くなりになりました方へ哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の方に心よりお悔やみ申し上げます。また、療養中の方々にお見舞いを申し上げますとともに、1日も早いご快復をお祈りいたします。そして、日々現場で患者様とご自身の大切な命を守りながら闘っておられます医療従事者の皆様に心より感謝申し上げます。
2017年3月に「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」から、漢方医療を取り巻く課題と対応策に関する「提言書」が発表されました。提言書発表から4年が経過した2021年2月には、診療ガイドラインに漢方を取り込むケースの増加、生薬62成分が薬価制度上の基礎的医薬品に位置付けられるなど、漢方を取り巻く環境の変化を踏まえて提言書の更新がなされております。
これを受けて日漢協では「漢方の将来ビジョン2040」を策定し、2018年7月に発表いたしました。2021年5月の第38回定期総会では、このビジョン実現に向けて、提言書更新内容を盛り込んだ10年後、20年後のあるべき姿を設定し、それに向けたロードマップと最初の5年間のアクションプランが了承されました。「漢方の将来ビジョン2040」、ロードマップ、アクションプランにもとづき、提言書更新で追加された、がん支持療法、身体的フレイルに対する有用性、漢方製剤等の基礎的医薬品への適用に一層注力することで、医薬品業界の発展と国民の健康に貢献すべく努力を続けてまいります。本年7月には、長年の懸案であった「医療用漢方製剤において剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性評価に関する基本的考え方について」が発出されました。
また本年8月には、改正医薬品医療機器等法2年目施行における法令遵守体制の整備の義務化、GMP省令改正による製造管理・品質管理の更なる徹底が明記され、当協会では、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課から発出された「医薬品の適切な製造管理等の徹底について」および、日本製薬団体連合会の緊急説明会等を受け、本年4月に会員会社の取り組み状況や課題についてのアンケート調査を行いました。改正薬機法や改正GMPに係る設問の回答から、各社が法令遵守体制の強化について取り組んでいる状況が確認できた一方で、4月時点では、責任役員の明確化やPQS(医薬品品質システム)の導入などの対応が遅れている会社があることもわかりました。その後、事務局からも製造販売業者の三役体制の状況と責任役員の明確化状況について各社に再確認しております。今後も会員会社におけるコンプライアンス体制、品質管理・安全管理体制がさらに整備されるよう情報の共有化を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症拡大の終息が見えない中、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を受け、日漢協ではWeb 会議を活用するなど感染防止を念頭にニューノーマルに対応した効率的・効果的な活動を推進してまいります。
関係各位の皆様には、当協会の活動にご理解を賜り、引き続きご支援ご指導頂けますよう、重ねてお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
- 教育研修部会
- 有用性研究部会
- 日本東洋医学会EBM委員会への協力作業「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン(KCPG)」に関して、追補版KCPG Appendix 2021のTable(案)を作成した。
- 「国内の診療ガイドラインへの漢方製剤記載の実態調査」の更新結果について、日漢協ホームページの「調査・研究・統計」の項目に公開した。(6月28日)
5月28日にWeb会議を開催した。新副委員長就任(クラシエ薬品:鈴木伸一氏)と部会長の交代(ツムラ:宮内清志氏)、第226回理事会、第227回理事会・総会の審議・報告事項および関係委員会情報等について情報共有した。
また、漢方の将来ビジョン2040ロードマップ「医療経済学的研究に係る助成事業」の進め方について意見交換した。
7月2日に開催された流通改善に関する懇談会について部会員へ情報共有した。また、厚生労働科学研究(成川研究班)薬価制度抜本改革に係る流通環境の実態調査研究の結果についても部会員へ情報共有した。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で部会の開催を見合わせている。次回開催については現在検討中。
2021年8月26日(木)13:15~16:30開催のMR認定センター主催「MRフォーラム」の内容に基づき業界内での認識を深めていく。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
- 2021年度「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」について
- 第6回原料生薬使用量等調査の調査結果について
- 中国の薬用植物栽培に使用される農薬に係る調査と対応について
生薬国内生産検討班が中心となって取組んでいる「地域説明会および相談会」については、今年度は次のとおり対象や説明内容を変えて実施することとし、「売買支援」の拡充などと共に準備を進めている。
1 薬用作物栽培に興味のある生産者を対象とした基本的内容
2 踏み込んだ形での薬用作物栽培の取組みに関する内容
3 行政担当者等を対象とした情報交換会
なお、地域説明会および相談会等の開催にあたっては、COVID-19拡大防止対策を行うと共に、広く情報提供することを目的としてオンデマンド配信も検討している。
生薬流通部会が継続して実施している原料生薬使用量等の調査については、2017年度および2018年度分の調査結果、ならびに2008年度からの11年間の原料生薬の使用量等の推移について取りまとめ、「日本における原料生薬の使用量に関する調査報告(2)」として生薬学雑誌に投稿し、第75巻第2号に資料として掲載された。本調査結果が皆様のご研究やご活動に活用いただければ幸いである。また日漢協ホームページでの公開についても順次作業を進めていく予定である。
生薬企画部会が取組んでいる「中国産生薬における使用農薬の実態調査」の第三期調査品目であるサンシシとサンシュユについて、生薬学雑誌に投稿した調査結果に関する論文概要、すなわち、現地調査及び日本市場品の農薬分析を実施した結果、いずれも問題は認められなかったという内容の要旨を日漢協のホームページで公開した。
2年毎の総使用量の推移
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 中井 玲(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- ・委員交代
- ・各部会活動報告
- ・漢方将来ビジョンプロジェクト会議:漢方の将来ビジョン2040報告
- ・日本薬局方外生薬規格改定WG報告
- ・第24回OTC医薬品等広告研修会報告
- ・7月24日セルフメディケーションの日の案内
- ・第71回日本東洋医学会学術総会 市民公開講座の案内
- ・その他:連絡事項、トピックス等につき情報を共有
- 処方部会
- 一般用漢方製剤承認基準の見直し案作成準備~製品化しやすい基準への見直し~
- ・削除候補処方の検討
-
・追加候補処方の追加提案
- *追加処方候補を絞り込むための判断基準:
- ・一般用漢方製剤としてふさわしい効能・効果が設定できる
- ・入手困難な生薬、安全性に疑問がある生薬を含まない
- ・基準収載処方と類似する処方、追加することの優位性がある
- ・市販品があり、広く使われる実績がある
- 適正使用推進部会
- 国立衛研「一般用漢方処方の確認票」メンテナンス
-
・会員各社に依頼し、「日本漢方生薬製剤協会による主な商品例」の商品差替えを実施予定。
7月12日に国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)を訪問し、打合せを行った。
8月に会員各社に商品変更・改廃の依頼を行う。
2021年7月19日 集会・Web併用開催
2021年6月11日 集会・Web 併用開催
2021年7月19日 書面開催
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
以下のように、オンライン会議を開催し、漢方の将来ビジョン2040の実現に向けてのロードマップ、5ヵ年アクションプラン(2021~2025)の策定を踏まえ、2021年度 事業方針や事業計画について共有した。また、局外生規2021(2022)の検討状況について共有している。
幹事会:4月15日、8月5日
委員会、制度研究部会、製剤開発部会:6月1日、9月14日
AMED官民共同研究「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究(代表者:国立衛研 生薬部長 袴塚 高志)」(配合生薬班)において、当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)の承認基準原案の策定に向けた検討が進められており、令和3年度第1回全体会議が6月23日に開催され、承認基準原案を洗練させる方向性について議論した。その方向性に沿って情報を再整理している。
当帰川芎製剤の次の検討テーマ候補である生薬主薬保健薬(ニンジン主薬製剤)の範囲拡大の可能性について、制度研究部会と製剤開発部会とで臨床文献や承認前例情報を収集しながら情報整理を進めている。
厚労省 医政局 経済課に設置された「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」で検討されたセルフメディケーション税制について、来年度(2022年)以降も5年間延長されることになり、6月25日に対象成分が告示(250号~253号)され、これまでのスイッチ89成分に加えて、2022年度からスイッチ成分以外の外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬やかぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬や抗ヒスタミン薬・その他のアレルギー薬の有効成分42成分(水和物や塩類も)が対象になることが示された。生薬としては、ジリュウ、ナンテンジツ、マオウが加えられた。合わせて、2026年度からスイッチ4成分が税制対象から外れることも示された。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
2021年4月21日に原薬エキス会議と第1回委員会を、また6月23日に第2回委員会をいずれもWeb会議にて開催した。
原薬エキス会議では、「漢方の将来ビジョン2040」を実現すべく策定中であった「ロードマップ」「5か年アクションプラン」を含め、今年度事業計画について審議した。また、昨年度の委員会活動および日局・局外生規の進捗状況等について取りまとめ、報告した。
委員会では、「局外生規2022」に収載予定のニンジンエキス等の試作、追試状況やヨクイニンエキスのヒ素実測値の収集等について議論を行った。
- 漢方処方エキスの日局収載
- 局外生規2022
2021年6月7日付で第十八改正日本薬局方が告示され、即日施行された。漢方処方エキス関係では、温清飲と白虎加人参湯2処方のエキスが新規収載され、これにより日局収載された漢方処方エキスは37処方となった。
また、柴胡桂枝乾姜湯エキスの収載案がすでに意見公募されていることから、18局第一追補(2022年10月施行予定)で新規収載されることは確実である。
4月23日、6月28日および8月31日に第4~6回局外生規検討連絡会議(医薬品審査管理課主催)が開催された。連絡会議では新規収載生薬のカントウカ、ソウジシ、ヤカンなどの収載案が審議された。局外生規からの移行品目であるヨクイニンエキスについては、純度試験・ヒ素と酸不溶性灰分を設定しないことを含めて収載案が了承された。
単味生薬エキスについては、オンジエキス、コウジンエキス、サイコエキス、シャクヤクエキス、チンピエキスおよびニンジンエキスの追試結果について報告した。追試データにもとづいて理化学的規格値を含めて収載案が了承された。
今後、検討連絡会議は9月と10月に開催される予定で10月が最終審議となる。次いで12月のパブコメを経て、局外生規2022通知発出は令和3 年度内とされている。
なおこの間、局外生規作成WG(国立衛研主催)が5月11日と7月20日に開催され、多数の品目の収載案が詳細に検討された。局外生規作成WG は9月22日が最終回となる。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 味岡 賢士(株式会社ツムラ)
6月22日、7月27日、8月31日にWeb会議を開催。骨太の方針2021等についての内容、東洋医学会提言書検討委員会シンポジウムの内容および今後の展開、次回研究会の開催についての検討、漢方将来ビジョンPJの組織についての検討などを行った。
また、令和3年7月19日発出 事務連絡(剤形追加におけるBE試験の基本的考え方)について、研究会提言3.の内容に関する成果の一つであることから、研究会組織の先生方へ情報提供を行った。
総務委員会
委員長 永野 聡(株式会社ツムラ)
- 事業計画に関する事項
- 協会活動の効率的運営に関する事項
- (1)第39回定期総会において、「漢方の将来ビジョン2040」ビジョン実現に向けたロードマップおよび5ヵ年アクションプランが承認された。
- (2)第9回ビジョン実現検討班会議(7月1日)において、ビジョン実現に向けた組織の見直しなどについて各組織と意見交換を行い、更に検討が必要と判断され検討期間を延長することとした。
- コンプライアンスに関する事項
- 環境活動に関する事項
- その他
第39回定期総会(5月18日)において、「2021年度事業計画」が承認された。
「漢方の将来ビジョン2040」実現に向けた取り組み(ビジョン実現検討班事務局)
2021年2月に実施した「コンプライアンスの取り組みに関する実態調査」の結果について、白神誠先生(ファーマコエコノミクス研究会)に2017年の調査結果と比較・検証するため、解析をお願いした。
会員会社に「環境活動取り組み実態調査」を実施するための検討を行った。
創立40周年記念事業実施体制等について、総務委員会、広報委員会および日漢協事務局と合同で取り纏め、第150回委員長会に提案し了承された。
広報委員会
委員長 犬飼 律子(株式会社ツムラ)
- 第39回定期総会後記者会見開催について
- 東洋医学会との共催による市民公開講座開催
- 日 時:2021年8月15日(日)14:30~16:30
- 開催方法:オンラインによるLIVE配信
- テ ー マ:東洋医学からみた健康法
- 司 会:池野 由佳 先生(いけの医院)
-
講 演:第一部 「漢方による風邪対策」菊地 章子 先生(東北大学大学院医学系研究科)
第二部 「太極拳の理論と実践」沼田 健裕 先生(国立病院機構米沢病院) - 令和3年度 「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」 について
- 日漢協創立40周年事業について
定期総会終了後に、「漢方の将来ビジョン2040」ビジョン実現に向けたロードマップおよび5ヵ年アクションプランの内容を説明する記者会見をオンラインにて開催した。当日は13社14名の記者が参加し、業界紙を中心に6紙での記事掲載が確認されている。
第71回日本東洋医学会学術総会に合わせて下記の内容で開催した。昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で学術総会自体が中止となったため2年ぶりの開催となった。本年度も感染対策の観点からオンラインで開催され、延べ240名近くの方にご視聴いただいた。
本年度も農林水産省の補助事業を活用して開催されることが決定したため、薬産協事務局の打ち合わせにも当初より参画し、開催内容やマスコミへの告知などについての情報を共有した。
また、5月21日に初めて開催された会員会社の生薬調達担当者による情報交換会にも参加し、情報を共有した。
2023年度に当協会が創立40周年を迎えることから、日漢協事務局・総務委員会とともに周年事業の担当としてプロジェクトに参画することとなった。広報委員会では40周年史の編纂を主テーマとして、これから具体的な取り組みが開始される予定である。
国際委員会
委員長 小柳 裕和(株式会社ツムラ)
2021年4月1日付けにて、国際委員長を諸田隆氏から引き継いだ、小柳裕和でございます。
国際委員会の活動の柱のひとつである、ISO/TC249国際標準化作業への参画に関しましては、日漢協に関係する新規提案案件が継続して発生しており、次々と提出される提案が業界に不利益な標準とならないよう十分にチェックしていかなければなりません。国際委員会に所属の方々および拡大会議に参加いただいている方々のお力添えを戴き、国際委員会としての期待役割に応えていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
国際委員会、拡大会議ともに5、7月はメール報告、6、8月はリモート会議で滞りなく実施した。
ISO/TC249関係では、JLOM主査会議(2回)、国内対策委員会(3回)、国際会議(プレナリーミーティング:2回、WG1:2回、WG2:1回)に各メンバーが参加し、当協会から意見を積極的に提出し、各国から提案されたISO 規格書に反映させた。薬用植物の栽培と採取に関する新規規格については、日中共同で提案し、重要性と国際性が認められたことにより、今後、開発が進められることとなった。日漢協ではタスクフォースチームを設置して、業界の利にかなう方向で草案を検討していく。
昨年、中止となった「中国医保商会との交流会(訪中)」は、昨今のCOVID-19の流行および規制の状況を踏まえ、訪中は実施しないものの、リモートによる情報交換の実施の可能性について、6月29日の国際委員会および7月1日の委員長会にて今年度の交流会の実施内容を検討することについての了解を頂き、具体的な実施内容の検討を行う。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規及び関係通知の調査研究、関係行政機関及び諸団体との連絡並びに意見具申を基本に活動している。
- 薬機法等制度改正について
- 第十八改正日本薬局方の施行について
- 医療用漢方製剤の新剤形開発における承認申請ガイドラインについて
令和元年12月4日付け法律第63号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」の施行期日については、令和2年3月11日付け政令第39号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」により、1年目施行は令和2年9月1日、2年目施行は令和3年8月1日、3年目施行は令和4年12月1日とされている。
令和3年8月1日、2年目施行関連について、法令遵守体制、総括製造販売責任者の要件、基準確認制度、変更計画確認申請と一変事前届出、保管のみを行う製造所の登録制度など新たな制度が施行された。
令和3年6月7日付け厚生労働省告示第220号「日本薬局方の全部を改正する件」が告示され、同日施行された(経過措置期間:令和4年12月31日、経過措置期間:令和6年6月30日 別名、通則34)。新規収載漢方処方エキスは、白虎加人参湯エキス、温清飲エキスの2処方で日局収載漢方処方エキスは37処方となった。
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より令和3年7月19日付け事務連絡「医療用漢方製剤において剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性評価に関する基本的考え方について」が発出された。日漢協・漢方将来ビジョンプロジェクト「承認申請ガイドラインチーム(主管:薬制委員会)」では、AMED研究班の「医療用漢方製剤の承認申請ガイドライン」策定検討に協力した。
技術委員会
委員長 高杉 泰弘(株式会社ツムラ)
2021年6月22日と8月24日に技術委員会を開催した。局方や局外生規、不純物に関する進捗や日薬連品質常任委員会を通した規制当局の動きについて、各部会の活動とともに共有化を図った。
- GMP等の法令遵守対応
- 不純物関連
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課より発出された通知「医薬品の適切な製造管理の徹底について」および「医薬品の製造業者におけるGMP省令違反等を踏まえた無通告立入検査の徹底強化等について」に対し、会員会社の取り組み状況について調査した結果をまとめ報告した。各社より挙げられた課題や要望に対し、品質向上への支援を講じていく。
国立衛研 合田先生にご指導いただき、定期調査(2016年度)の論文を生薬学雑誌へ投稿した。現在、投稿審査員の照会事項について対応中である。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●医療用医薬品添付文書新記載要領対応
PMDAとの医療用漢方・生薬製剤の新記載要領に伴う相談対応が2021年度から始まり、漢方製剤特有の問題点等の課題・検討結果内容を反映させた改訂相談結果を作業WGにて共有しながら改訂相談準備作業を進めている。
2021年度第1期相談品目分の改訂案の提出を3月末に行い、相談結果のフィードバックが7月に実施された。さらに第2期相談品目分の改訂案の提出を6月末に担当各社より実施し、記載事項の相談対応中である。
引き続き第3期、第4期相談品目分の対応を進めるとともに、生薬製剤については日本生薬連合会との連携を深めながら対応を進めることとなる。
●改正薬機法対応(添付文書の電子化)
改正薬機法に伴う添付文書電子化対応が、2021年8月1日より施行され、2年間の猶予期間内に各社対応を実施するところである。
関連通知や最新情報の共有等を行い、各社が適切な対応を実施できるよう各種対応を実施している。今後も引き続き最新情報の収集・共有化を進めていくとともに、生薬製剤については日本生薬連合会との連携を深めながら対応を進めることとなる。
コード委員会
委員長 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
2021年初めに協力した販売情報提供活動ガイドラインに関する厚労科研研究(渡邊研究班)の調査結果報告があり、会員会社へ情報共有を行なった。今回の調査では日漢協単独加盟の会社のみの回答である。調査は製薬協加盟会社とそれ以外の団体と区分され報告されている。モニタリング等は製薬協加盟会社と同様に実施されている。経営陣への報告や審査・監督委員会、研修等は行っているが製薬協加盟会社と比べて頻度は若干少ない。ディテール時の資料配布は製薬協加盟会社に比べて配布している会社が多い。Web面談の実施は製薬協加盟会社より少ないなどの傾向が見られた。
8月18日に厚生労働省より公開された令和2年度販売情報提供活動監視事業報告書について、情報共有を行なった。当協会会員会社で不適切な事案は無かった。また、本年度も会員会社の販売情報提供活動の取り組み状況について協会独自アンケートを実施することとした。
保険薬価委員会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価委員会は、5月11日、6月8日、7月13日、8月17日にWeb会議を開催した。
2022年度薬価改定へ向け、医療用漢方製剤・生薬の基礎的医薬品・不採算品再算定について日漢協要望品目の取りまとめ、日漢協の意見および今後の進め方等について協議した。5月17日に厚生労働省医政局経済課薬価係事務連絡「不採算品再算定を希望する品目の提出について」があり、日漢協として取りまとめた不採算品再算定希望予定品目について、全ての製造販売会社が6月18日の期日までに提出した。
7月28日に、委員会を代表して常務理事、正副委員長・部会長が不採算品再算定希望予定品目のヒアリングを行った。また、社会保障制度に係る議論など関係する審議会等の情報を共有した。
和歌山県立医科大学薬学部 生薬・天然物化学研究室 田村 理 教授
天然資源エキスライブラリーの構築
華岡青洲の「医の心」をルーツに
「地域とともに世界に羽ばたく大学へ」を基本方針に掲げる和歌山県立医科大学の歴史は、第二次世界大戦終戦前の1945年(昭和20)4月1日に設立された和歌山県立医学専門学校に遡ります。江戸時代に全身麻酔薬(通仙散)による世界初の乳がん手術に成功した華岡青洲の「医の心」をルーツに持つ同校は、以来、1948年4月15日に開校された和歌山県立医科大学(旧医科大学4年制)を経て、1955年4月1日に、現在の和歌山県立医科大学となりました。
その後、2004年(平成16)4月1日の保健看護学部の開設に続き、本年2021年(令和3)4月1日、近畿地方の公立大学では初めて薬学部が創設され、医療系総合大学として新たなスタートを切っています。
ファーマシスト・サイエンティスト(薬剤師科学者)
開校まもない薬学部は間近に和歌山城を望む伏虎キャンパスにあり、真新しい11階建ての南棟と5 階建ての北棟は景観重点地区にふさわしい黒と白を基調としています。同学部が養成する人材像として目指しているのは、地域での活躍は言うに及ばず研究能力を兼ね備えた国際的に活躍できるファーマシスト・サイエンティスト(薬剤師科学者)。その目的達成のために特に力を入れているのが基礎的な教養英語や実践的な薬学英語を通じて(読む・聞く・話す・書く)の4技能を強化する英語教育です。
教育、研究分野は物理・化学薬学、生命薬学、医療薬学、臨床・社会薬学の4つの部門に分かれ、学生はそれぞれの研究室に3年次後期から配属されます。
和歌山県の特産物に着目したライブラリーの構築
田村 理 教授
実験中の田中准教授(左)と氏家助教
和歌山城を望む学生用の研究室
田村教授はこれまで大阪大学における「沖縄産海綿より単離された抗腫瘍性環状デプシペプチドarenastatinA の構造活性相関とコンホメーション解析」、「血管新生阻害物質cortistatinAの標的探索」など数々の研究を行ってきました。それらの成果を踏まえ、これから行う主な研究は
・天然資源エキストラライブラリーの構築
‐ 局方収載の生薬、漢方薬構成生薬、薬用植物、海洋底生生物、微生物培養
‐ 和歌山県の特産物に着目したライブラリー
・細胞傷害性ではない新規抗がんリードの開発
‐ 血管新生阻害を標的とした抗がんリードの開発
‐ 細胞間接着阻害を標的としたがん転移抑制剤の開発
・新規メカニズムのアレルギー予防薬の開発
‐ マスト細胞上IgEレセプター発現抑制薬の開発
今後の研究成果が大いに期待されています。