109号 (第37巻 第1号)2020年5月
生薬会議の取組みについて
日本漢方生薬製剤協会 副会長 (株式会社ウチダ和漢薬 代表取締役社長) 吉川 英樹 |
日本漢方生薬製剤協会(日漢協)副会長および生薬会議議長の重責を担うにあたり、皆様の温かいご支援やご指導に心より感謝申し上げます。
本年1月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界規模で拡大し、日本政府は4月7日に地域指定による緊急事態宣言を発出し、さらに4月16日には緊急事態措置の対象を全都道府県に広げました。この緊急事態宣言の主旨は、未曽有の新型感染症から全国民の生命を国家として守るというものです。皆様におかれましてはCOVID-19の拡大防止対策として、3密(密閉空間、密集場所、密接場面)の重なりを避けることに努められていると存じます。また緊急事態宣言に伴い生活に影響を受けられている皆様におかれましては心よりお見舞い申し上げます。
こうした状況ですが、日漢協の調べでは現在までに生薬の調達に大きな影響は認められておりません。生薬会議は日漢協の第一義的課題である「原料生薬の安定確保」、「原料生薬から最終製品までの品質確保」を最優先事項とし、関係する会議体や専門委員会等のご協力を仰ぎながら1委員会(生薬委員会)、3部会(生薬栽培部会、生薬企画部会、生薬流通部会)、1検討班(生薬国内生産検討班)の体制で、取組んでおります。本年度は日漢協の「中長期事業計画2017(5ヵ年計画)-国民の健康と医療を担う-」がスタートしてから丁度中間地点を過ぎたところであり、2020年度事業方針および事業計画に基づいて中長期成果を取りまとめてゆく段階です。
つきましては、生薬会議の主な取組みをご紹介いたします。
○原料生薬の安定確保
日漢協と(一社)全国農業改良普及支援協会とで設置した薬用作物産地支援協議会により、農林水産省の支援事業を活用し「常設相談窓口の運営」、「薬用作物の産地化に向けた地域説明会の開催」、「売買支援」などに取組み、生薬の国内生産の推進・拡大に向けた支援を進めています。○ 原料生薬に関する流通実態の把握および的確な対応
全会員会社を対象に医薬品に使用する原料生薬の種類、使用量および産出国の調査を継続して実施しております。この調査結果は日漢協ホームページで公表しており、大学や研究機関等をはじめ生薬に携わる皆様に広くご活用いただいております。○ 原料生薬の品質向上と安全性に関する品質確保
中国産生薬に使用されている農薬の実態調査を継続実施し、その調査結果を公表するなど的確な対応を進めています。○ 日漢協版GACP(薬用植物の栽培と採取、加工に関する手引き)の啓発
生薬の品質は生育環境や収穫あるいは採取時期、加工調製方法などの影響を大きく受けることから、日漢協版GACP の啓発を進め国際標準化に向けた活動にも努めております。上述以外にも、最大の調達先である中国との良好な関係構築、ISO/TC249の国際対応、日本薬局方や日本薬局方外生薬規格への協力、保険薬価の対応など、協会として連携して取組まなければならない重要な事項も多く、こうした取組みは各社の委員のご尽力によって成り立っており、改めて各社・委員の皆様に深く感謝申し上げます。
未病への対策やフレイル・サルコペニアの予防や改善など、漢方薬に対する期待はますます高まっており、漢方薬を支える生薬が担う役割は極めて大きいと認識しております。これからも“ 原料生薬の安定確保および品質確保” の課題解決に向けて、加藤会長の迅速かつ的確なご判断のもと、会員会社様のお力添えをいただき、関係行政や関係機関のご指導を仰ぎながら取組んでまいります。時節困難な局面も多いかと存じますが、業界一致団結してこの難局を乗り越え、今後ともご支援ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
就任のご挨拶
日本漢方生薬製剤協会 副会長 (小林製薬株式会社 代表取締役会長)小林 一雅 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、医療や介護、検査等の最前線で懸命に取り組んでおられる皆様に敬意を表しますとともに、御礼申し上げます。また、罹患された皆様、緊急事態宣言により事業や生活に影響を受けられた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。事態の一日も早い終息を心より祈念いたしております。
このような状況下、日本漢方生薬製剤協会が第38回の定期総会を迎えられますこと、関係各位のご指導、ご支援によるものと、厚く御礼申し上げます。当協会の第220回 理事会におきまして、副会長の重責を担うこととなりました。当協会の発展に貢献いたしたく考えております。よろしくお願い申し上げます。
平成30年「薬事工業生産動態統計年報」によりますと、2018年の漢方製剤等の生産金額は、1976年以降で最大になり、医療用・一般用ともに漢方製剤等の利活用が広がっているように見られます。今後も漢方製剤等への期待やニーズの高まりに応えられるよう、一層の普及・啓発に努めてまいります。
さて、今日ほど「医療崩壊」が語られることはなかったと思っておりますが、人生100年時代に向けた全世代型社会保障において「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」という考え方への転換が述べられており、日本商工会議所からは、4月15日に「持続可能な社会保障制度の構築に向けた意見」が発出されています。日本製薬団体連合会のセルフメディケーション推進タスクフォースにおきましても、日本一般用医薬品連合会におきましても、2017年に5年間の時限的制度として始まった「セルフメディケーション税制」について、期限の延長(恒久化)やスイッチOTC 医薬品に限定されている対象品を、一般用漢方生薬製剤を含めた全てのOTC 医薬品に拡大する等の改正について要望していく準備が進められています。当協会といたしましても、この税制改正要望に協力してまいりたいと考えております。(本税制対象品パッケージに表示される共通識別マーク)
また、生薬製剤会議におきましては、日本医療研究開発機構(AMED)にご支援いただき、国立医薬品食品衛生研究所 生薬部等の先生方にご指導いただきながら、一般用生薬製剤の活用範囲の拡大と開発ルールの整備を目指して活動しております。その第一段として、当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)を取り上げており、社会における女性の活躍が推進される中、女性特有の健康課題への自己対処をサポートできるよう期待しております。
生薬の国内栽培につきましては、今年度も農林水産省から「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業」としてご支援いただき、全国農業改良普及支援協会とともに、栽培・加工といった生薬の生産や取引等に関する情報発信を推進していきたいと考えおります。
「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」でのご講演のように、漢方生薬製剤のエビデンス集積やその適用領域は広がりを見せておりますが、国民の漢方製剤等に対する認識は、まだまだ小さいと思われます。当協会の「漢方の将来ビジョン2040 ~国民の健康と医療を担う」の実現に向けて、会員会社の皆様と手を取り合って努力してまいりたいと考えております。関係各位の皆様には、当協会の役割や活動にご理解を賜り、引き続き、ご指導、ご支援くださるよう、重ねてお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
- 教育研修部会
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「新MR 漢方教本スライド」の改訂について
改訂できる箇所を確認および改訂作業を引き続き実施中である。 -
研修会の実施
3月11日、生薬の安定供給に関わる最近の話題に関し、株式会社ツムラ笠原 良二氏による講義予定であったが、日漢協のルールに則り中止した。 - 有用性研究部会
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日本東洋医学会EBM 委員会への協力について
1)「 漢方治療エビデンスレポート」作成について、EKAT 2016を3月に全面公開した。英語版の更新も夏頃までに実施予定である。また、追補版についてはE K A T A p p e n d i x 2 0 1 7 、E K A T Appendix 2018を同時に4月公開した。EKAT 2019については構造化抄録(SA)を確定した。今後、全面改訂へと作業を進める。
2)「 漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」は、2013年以前の診療ガイドライン記載内容の見直しも行い、4月にKCPG 2019に全面改訂した。また、KCPG Appendix 2020の調査分になる2019年11 月~2020年3 月までに発行された診療ガイドラインの調査については、東邦大学医学メディアセンターにて3月に実施した。 - 国内の診療ガイドラインへの漢方製剤記載の実態調査の結果について、2月に日漢協ホームページの「調査・研究・統計」の項目に公開した。
4月8日、Web にて委員会を開催し、理事会の審議・報告事項等、について説明した。
また、各部会、保険薬価およびコード委員会、ビジョンPJ の活動状況について情報の共有と共に部会長の交代、委員会の在り方等について検討した。
2月7日東京、2月14日大阪で開催される公取協本部主催研修会の案内を部会メンバーに行い、可能な限り参加するように要請した。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
- 2019年度 「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」 について 農水省の支援事業のもと薬用作物産地支援協議会の日漢協担当事業として、日漢協は地域説明会および相談会を全国7地域で実施した。参加者数は計234名、また個別相談が24件あった。地域説明会の参加者数は昨年度と比べるとやや減少したが、参加者の約80%が初参加で、かつ個々の生産者から市町村や都道府県の行政担当者が多数を占めていたことから、地域活性化を目指した薬用作物栽培が組織的に取り組まれ始めていることが示唆される。なお個別相談については、専門相談員による常設相談窓口や専用ホームページが充実してきたことから、相談内容を厳選して実施した。
- 中国の薬用植物栽培における使用農薬の実態調査について
常設相談窓口の運営は日漢協が担った主な事業のひとつであり、専門相談員が生薬および薬用植物栽培の相談などに逐次対応している。2019年4 月1 日~2020年3月25日の問い合わせ件数は、電話106件、メール72 件、訪問が14件であった。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- 処方部会
- 一般用漢方製剤承認基準の見直し案作成準備~製品化しやすい基準への見直し~ ・削除候補処方を検討
- 適正使用推進部会
- 「Information sheet」中国語版作成について ・簡体字・繁体字にて繁用39処方作成中。本年度上期の完成を予定している。
- 繁用処方資料作成・活用についての検討
- その他
- 一般用漢方製剤委員会主催の講演会を開催
2020年1月29日開催
・各部会からの活動報告
・2020年度事業計画・予算計画の検討
・12/26市民公開セミナー「みんなで考える健康長寿と漢方」報告
・製品箱・パネル陳列・チラシ配布。展示・配布の相乗効果か、受講者の皆様からの問い合わせは過去最大の反響があった。
消費者の皆様は特に「自分に合った漢方薬の選び方」に強い関心を持たれている。
・一般用漢方製剤委員会は、今後もお得意先・消費者の皆様への漢方製剤の周知・啓発活動に努めていく。
・漢方将来ビジョンプロジェクト会議:ビジョンプロジェクト・啓発アウトリーチチーム活動報告
・組織見直しについての検討
・その他:連絡事項、トピックス等の情報を共有
・追加候補処方を追加提案
講演会風景
梅岡講師
・日時:2020年1月29日16時~17時
・場所:全国家電会館 文京区湯島3-6-1
電話:03-3832-4291
・講師:日本OTC医薬品協会 広告委員会 梅岡 久 委員長
・医薬品等適正広告基準などで「不適正」「注意」と判断されたTVCM 等15事例を挙げ、指摘箇所を確認した。事例数が多く且つ具体性があり非常にわかりやすい内容で、81名の聴講の皆様からも“ 大変勉強になった” との声を多数いただいた。
・具体的な事例を通じ、医薬品を扱う企業は品位をもって正確な情報伝達に努めなければならないことを再確認した。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
市民公開漢方セミナー(2019/12/26)
での展示
当会議の議長に小林一雅(小林製薬株式会社 代表取締役会長)が就任。当委員会で2019年度の事業報告(案)を取りまとめ、「漢方の将来ビジョン2040」における当会議の役割について意見交換し、2020年度の事業計画(案)を策定した。
AMED 官民共同研究「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究(代表研究者:国立衛研 生薬部長 袴塚 高志 先生)」(配合生薬班)において、当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)の承認基準原案の策定に向けた検討が進められており、3月4日に予定されていた令和元年度 第三回全体会議はCOVID-19の影響により中止となったが、当委員会での検討状況は共有している。次回は6 月30 日に予定されいる。
制度研究部会では、当帰川芎製剤の効能効果の見直しのエビデンスとして収集した婦人系漢方処方等の臨床文献 約40報の内容を精査しつつ、学識者に相談しながらエビデンスレベルを改めて評価し、採用文献を再整理した。製剤開発部会では、「ビャクジュツのアトラクチレノリドⅢ」の定量法について、これまでの分析試験の経緯を取りまとめ、試験法の改良の方向性について議論している。
局外生規2021作成WG を意識して、配合生薬班で検討中の当帰川芎製剤の承認前例に配合されている93生薬の公定規格への収載状況を取りまとめた。
12月26日の市民公開漢方セミナーの会場ロビーで、会員会社16社の一般用漢方生薬製剤 約100製品のパッケージ等を展示し、来場者に漢方生薬製剤のセルフメディケーションにおける活用領域を紹介した。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 2020年度原薬エキス会議 会議では、2020年度事業計画と経費予算案が審議され、了承された。次いで2019年度の事業報告、日局および局外生規の昨年度1年間の進捗状況、単味生薬班の活動について、各担当委員から報告があり、いずれも了承された。
- 局外生規 本年3月に薬事日報社から『和英対訳日本薬局方外生薬規格2018(付・技術情報)』が刊行された(7,920円/冊)。
本年4月22日に2020年度の原薬エキス会議と第1回原薬エキス委員会を、書面決議にて開催した。会議では、2020年度原薬エキス会議の事業計画・予算の審議、また2019年度事業報告、日局や局外生規の状況等について報告があった。
また3月30日に国立衛研にて「局外生規2021第1回作成WG」が開催され、当委員会からは佐々木委員長らが参加した。作成WGでは、ロクジョウ末など新規収載品目とガジュツ末など既収載の改正品目の検討候補が明確にされ、またそれぞれの品目担当者が決められた。今後作成WG では、各品目の本格的な検討に入る。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 味岡 賢士(株式会社ツムラ)
2020年1月28日、国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト(以下、PJ)は、「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2019」の運営に関する情報共有を行った。PJ 各チーム活動報告では、各課題に対する進捗状況についてリーダーより報告がなされ、意見交換が行われた。
同年2月5日に開催された研究会2019では、「高齢者のポリファーマシー対策~関連指針を中心に~」、「COPD 患者のフレイルに対する漢方製剤の臨床応用」、「がんサポーティブケアとしての漢方:エビデンスとチーム医療」および「医療用漢方製剤の新剤形開発における生物学的同等性評価の考え方について」の講演をいただき、その後のディスカッションでは、委員の先生方を中心に活発な意見交換がなされた。
研究会ではこの日の議論を踏まえ、再度提言をまとめる方針を示し、現在、事務局にて整理を行っている。また、研究会終了後に記者会見が開かれ、各紙面にて研究会についての記事が報道された。研究会運営については、PJ 各チームメンバー、事務局の協力を得て無事終了した。
総務委員会
委員長 竹下 真吾(株式会社ツムラ)
- 事業計画に関する事項 1)第38回定期総会議案書における「2020年度事業計画の策定にあたって(案)」が第64 回正副会長会で承認された。
- 組織見直し検討班の運営について 2018年に公表した日漢協の「漢方の将来ビジョン2040」の実現に向け、このビジョン内の細項目に対応する担当組織を再確認し、組織の役割表の修正を行った。
- コンプライアンスに関する事項 1)「 企業行動憲章」と 「コンプライアンス・プログラム・ガイドライン」の見直しに向け、帝京平成大学の白神誠教授に草案の確認と追記修正をいただいた。
2) 日漢協2020年度事業方針(案)・事業計画(案)が第65回正副会長会、第220回理事会で承認された。
3) 中長期事業計画2017(5カ年計画)における各組織活動について、中間報告を取り纏め、第220回理事会で報告した。
2) 1月の理事会後に、帝京平成大学薬学部薬学科薬事・情報学ユニットの渡邊伸一教授を講師に迎え、「コンプライアンス意識のさらなる強化のための取り組み」というテーマでコンプライアンス研修会を開催した。
広報委員会
委員長 土屋 洋介(株式会社ツムラ)
- 漢方・生薬に関する啓発活動
- 薬産協主催「薬用作物(生薬)産地化推進のための行政担当者情報交換会」
- ビジョン研究会対応 〇2月5日、東海大学校友会館(霞ヶ関ビル35階)阿蘇の間において開催された「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2019」のプレス対応を実施した。当日は20名を超えるプレスが取材に訪れ、研究会後に行われた記者会見では、各先生の研究に関する内容や今後の課題、スケジュール感などについて活発な質疑応答が行われた。
2019年12月26日に、東京大学加齢医学講座・小川純人准教授を講師に迎えて開催した。
会場ロビーでは、広報委員会、一般用漢方製剤委員会、生薬製剤委員会の3委員会にてパネル展示と商品(空箱)紹介が行われた。セミナー開始前には大勢の人で賑わい、漢方薬について関心の高い方の情報交換の場ともなっていた。
このセミナーは、例年夕刻に開催していたが、今回は昼間に開催した。年末の師走時ではあったが、最終来場者数243名と、昨年を上回る大盛況のうちに幕を閉じた。
当日の運営にご協力をいただいた一般用漢方製剤委員会、生薬製剤委員会、事務局の皆様に改めてお礼を申し上げる。
この内容は、フジサンケイビジネスアイ、日刊薬業、薬事日報などで記事化された。
国際委員会
委員長 諸田 隆(株式会社ツムラ)
ISO-GACP日中プロジェクトチーム
(前列中央が郭教授)
国際委員会はISO/TC249関連を主管している。一昨年度から中国医薬保健品進出口商会と共同で検討を続けてきたGACP 国際規格化案が、2020年1月に新規案件として正式に各国に回付された。新規案件のProject Leaderは中国中医科学院中葯資源センター郭蘭萍教授、Co-Project Leader を諸田委員長が担当することとなった。本年6月にオランダで開催予定のISO/TC249第11回本会議で審議されることになっていたが、新型コロナウィルスの影響で会議は延期となった。WHO-GACP ガイドラインとの差異化が課題であるが、国際規格化を目指し努力していきたい。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規及び関係通知の調査研究、関係行政機関及び諸団体との連絡並びに意見具申を基本に活動している。
- 薬機法等制度改正について 令和元年12月4日、法律第63号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布された。施行時期については、令和2年3月11日付け政令第39号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」により、1年目施行は令和2年9月1日、2年目施行は令和3年8月1日、3年目施行は令和4年12月1 日とされた。
- レイヨウカクを含有する一般用医薬品の取扱い等について 今般、ワシントン条約第18 回締約国会議においてサイガに係る規制強化がなされ、今後、本邦においてレイヨウカクの入手が困難となることが予想される。このためレイヨウカクを含有する一般用医薬品の処方変更申請等を行う場合の取扱いについて、令和2年3月13日付け薬生薬審発0313第1号「レイヨウカクを含有する一般用医薬品の取扱い等について」、事務連絡「レイヨウカクを含有する一般用医薬品の取扱い等に関する質疑応答集(Q&A)について」が発出された。既承認のレイヨウカク含有医薬品の取扱いとして、レイヨウカクの削除を希望する場合は、代替新規申請を行い、令和3年9月30日までに承認申請されたものについては、申請書の記載に不備がないことを要件に迅速審査となる。なお、当該代替新規申請はレイヨウカクの削除に関連する事項以外の変更は認められない。
技術委員会
委員長 古家 孝之(株式会社ツムラ)
- 日局18 に向けた検討 第18改正日本薬局方第一追補への収載に向けて、引き続き柴胡桂枝乾姜湯エキスおよび抑肝散加陳皮半夏エキスについて試験法の検討を行っている。
- 医薬品品質システム(PQS:Pharmaceutical Quality System)啓発活動 日漢協内のPQS への理解を深め、取り組みを促進するため、PMDA の協力を仰ぎ、会員会社向けにPQS ワークショップを下記の通り開催した。
・日時: 2020年2月7日1030~1600
・参加: 16社/24名
・講演
● 「①改正GMP 省令について、② PQS導入、構築及び運用について」PMDA 医薬品品質管理部 GMPエキスパート 寳田 哲仁様
● 「ツムラ品質マネジメントシステムの導入」 ㈱ツムラ 古家 孝之
・富塚常務理事付きおよび技術品質部会メンバーがファシリテーターとなり、グループディスカッションを行い、各グループのまとめの発表後、総合討論を行った。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●一般用漢方製剤の「使用上の注意」の整備と安全使用に関する研究について
国立医薬品食品衛生研究所 生薬部からの依頼により参加している「一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究」(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)について、検討課題は以下の通りである。
(1)一般用医薬品と一般用漢方製剤の「使用上の注意」設定根拠検討
(2)一般用漢方製剤に特化した情報提供の検討
(3)医療用漢方製剤と一般用漢方製剤との「使用上の注意」整合性検討
令和元年度第2回研究班会議が2月3日に開催され、これまで検討されてきた事項<妊産婦、授乳婦等の記載、高齢者の注意喚起の考え方、並びに「してはいけないこと」の記載内容(「体力の虚弱な人」等)ついて>に関連する副作用発生状況調査結果報告をうけて、班会議としての最終判断および一般用漢方製剤に特化した情報提供の検討として、各社が使用できる適切な「製品の特徴」、「養生訓」の記載について、参考資料の提示を行いながら研究班メンバーから意見が出され記載方針についての検討がなされ。今後は具体的な記載内容を提示され検討が進められていく予定である。
●医療用医薬品添付文書新記載要領対応 2021年から始まるPMDA との医療用漢方・生薬製剤の新記載要領相談に先立ち、該当会社を対象としたWG を2月12日に開催し、医療用漢方・生薬製剤特有の課題の抽出および今後の具体的な作業について検討を行った。
コード委員会
委員長 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
2019年10月1日に厚生労働省より日本医師会他の団体へ販売情報提供活動に関する不適切事案の報告制度のお願い文書が通知されたので、委員へメールで情報共有を行った。厚生労働科学研究(調査研究班 研究代表者 渡邊伸一氏)の販売情報提供活動ガイドラインの社内体制整備等の調査に協力することとなり、同年12 月17 日に会員会社へ依頼し、1月10日迄に各会員会社からのアンケートを取りまとめて提出し、コード委員メンバーとコード管理責任者へ共有した。
2019年度資材審査を11月から4回行い、2月10日に完了した。本年度の対象資材総数は57件で製品情報概要等32件、広告25件であった。今後は審査会レポートとして5月の発刊を目指し、厚生労働省監視指導・麻薬対策課へ報告する予定である。本年度の資材審査を踏まえて、「製品情報概要等作成上の留意点」を改定した。また、2020年度は、会員会社の資材審査スキルアップの為、研修会を東京・大阪の2 拠点で開催することとした。
保険薬価委員会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価委員会は、1月14日、2月18日、4月14日に会議を開催した。
2020年度薬価基準改定へ、医療用漢方製剤・生薬の不採算品再算定について、日漢協取りまとめ品目の実施に向け進めてきた。3月5日に薬価基準の官報告示(2020年4月1日実施)があり、医療用漢方製剤3成分、生薬5成分の不採算品再算定実施がなされた。医療用漢方製剤としては、初めて不採算品再算定を受けることとなった。
また、基礎的医薬品については2018年度薬価基準改定において適用された生薬62成分、73 品目の製品が継続された。
私の健康法 日本薬剤師会会長 山本信夫さん
足がつった時に芍薬甘草湯
「以前は週に一度ほどスポーツジムに通っていましたが、最近 は行けなくなりましたね」 |
●25代会長として
新型コロナウイルスが文字通り猛威を振るい、世界中が戦後最大の危機に直面しているといわれる今、医療関係者への敬意と感謝がかつてなく数多く寄せられている。その一員として欠かせない薬剤師の職能団体である日本薬剤師会の歴史は、1893(明治26)年に遡り、爾来127年を経ている。初代会長の
●老舗薬局の三代目
戦後から5年を経た1950(昭和25)年、東京大学にほど近い文京区で「祖父の代からの薬局でした。そんなことから自ずと薬大に入りました」
東京薬科大学では、学業の傍ら高校時代と同様に写真部で青春を謳歌した。研究者になるつもりだったが、卒業後は本邦初の調剤薬局を創った水野睦郎氏の下で調剤のイロハを習い、1981年に保生堂薬局の三代目として後を継いだ。家業の傍ら1994年に日本薬剤師会の理事に就任、以後、常務理事、副会長を経て今日に至っている。
●甘いものが好き
子供の頃は近所でも評判のいたずら小僧で、食べ物の好き嫌いもあったそうだが、間もなく古稀を迎える現在は、「どうしてもパクチだけは食べられませんが、たいてい食べられるようになりました。小さい時は肉が嫌いで、そのにおいが苦手でした」 寿司や蕎麦など和食を好み、甘いものには目がない。「木村屋のアンパンが死ぬほど好きですね。これはどうも父親譲りのようです(笑)」国際薬剤師・薬学連合の副会長に就任してからは、それまで飲めなかったというよりもあまり飲む機会がなかった酒も、付き合いの関係からそこそこ飲むようになり、程よい潤滑油にしている。
特段の健康法や養生法はないそうだが、60歳になってからは定期的に人間ドックに入り、健康診断を欠かさない。2011年の東日本大震災の後、一時、体調を崩した時があったものの、その後は特に大過なく過ごされている。
「漢方はあまり勉強しませんでしたので、東大の前で漢方薬局を開局している学生時代の同級生を頼りにしています。足がつった時に飲んでいるのが芍薬甘草湯です」
プロフィール
1950(昭和25)年7月3日生まれ、東京都出身。1973年3月、東京薬科大学卒業、1981年4月、㈱保生堂薬局入局、1994( 平成6)年、日本薬剤師会理事、2005年厚生労働省 中央社会保険医療協議会委員、2013年、東京都薬剤師会会長、2014年、日本薬剤師会会長、厚生労働省医道審議会委員、国際薬剤師・薬学連合(FIP)副会長、内閣府社会保障制度改革推進会議専門委員、2015年、内閣府次世代医療ICT 基盤協議会構成員。2016年3月、薬学博士(昭和大学薬学部)