107号 (第36巻 第2号)2019年9月
一般社団法人 日本東洋医学学会 会長 伊藤 隆 |
2019年6月28日に開催されました第70回定時社員総会におきまして第22代会長に選出されました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
漢方薬に関しては多くの課題がありますが、現在最も深刻な課題は輸入生薬価格の高騰であります。
漢方薬は、江戸時代までは国民の医療を担ってきました。明治時代の富国強兵政策により、国の医療として認められなくなりましたが、戦後の種々の薬害等に伴い、副作用の少ない、身体に優しい医療として見直され、1961年に始まる国民皆保険制度の下では最初から生薬治療は認められていました。その後、医療用漢方製剤が導入され、一般医師にも次第に理解が広まり、専門化の進んだ現代医療の、ほとんど全ての科で漢方薬が用いられる時代を迎えています。江戸時代と最も違う点は生薬の自給率の低さです。かつて徳川吉宗は高価な生薬を輸入しなくてすむように国内栽培の振興を指示しました。特に人参については栽培が成功し、その後の増産により、海外へ輸出するまでに至り、それは第二次世界大戦後においても継続されていました。しかし、この半世紀の間に、中国の廉価な生薬のために国内栽培は壊滅し、8割の生薬を中国から輸入しているのが現状です。私たちは貴協会のご協力を頂き、生薬の国内栽培の現状を学会誌で報告しておりますが*、この状況を生んだ遠因として、我が国の戦後行政において、生薬が通常の薬品と同様に扱われてきたことを指摘できると思います。生薬は本来農産物であり、その価格は時価であるべきです。2年あるいは毎年の薬価引き下げに耐えうる西洋医薬品と本質的に異なっております。
漢方医学は現代の医療に貢献しています。多くの診療ガイドラインに採用され、様々な疾患、病態に対して需要があって用いられています。今後、万一、漢方薬の使用が困難な状況が発生すれば、その代替医薬品にはより高価な、あるいは副作用のより多い医薬品を使う機会の増えることが容易に推測されます。
本年5月WHO 総会において伝統医学の章の新設されたICD-11が承認されました。世界の伝統医学が新しい時代に入ったことを象徴する画期的な出来事です。我が国の漢方医学もこれまでの諸問題を乗り越えていく契機とせねばなりません。
私たちは毎年、厚労省に対しては不採算になった生薬、漢方製剤の薬価を調整していただけるようお願いをし、対応をして頂いております。生薬に関する、こうした課題を改善していくための議論を始めたいと思っております。
今後とも、貴協会のご支援ご協力をお願い申し上げます。
* 日東医誌68(3), p.270-280, 2017.
日本漢方生薬製剤協会 副会長 鈴木 一平(小太郎漢方製薬株式会社 代表取締役社長) |
5月21日に開催されました第37回定期総会・臨時理事会におきまして、会長ならびに副会長が再任され、引き続き日本漢方生薬製剤協会副会長の重責を担うこととなりました。今後とも協会の発展に寄与すべく頑張ってまいります。よろしくお願い申し上げます。
本総会では、昨年7月に策定した「漢方の将来ビジョン2040~国民の健康と医療を担う~」を見据えた「2019年度事業計画」、「2019年度収支予算」も承認されました。ビジョン実現に向けて、本年度の事業計画を着実に実行してまいります。
医療用医薬品関連では、本年度より「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の運用が始まっております。当協会においては、日本東洋医学会に協力いただき漢方医学における「証」に係る情報の適正な提供活動を推進するとともに、不適切な事例が生じないよう、情報の共有を行っています。情報伝達資料についても第三者を含めた審査を行い、会員会社間での情報共有をさらに図ってまいります。また、医薬品医療機器等法の改正案は次期国会での審議となりましたが、製造販売業者・経営陣の責務が明記されております。会員会社における法令遵守の体制がさらに整備されるよう情報の共有化を進めてまいります。
日漢協の主目的の一つに、漢方製剤、生薬製剤および生薬の安定供給がございます。その取り組みの一つとして、「原料生薬の安定確保」では、「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」をサポートし、栽培面積の拡大、取引成立件数の増加につながっております。引き続き生産者とともに、農林水産省をはじめ、各地の自治体のご理解とご協力をお願いしていきます。また、原料生薬の最大調達国である中国との良好な関係を維持することの重要性から「中国医薬保健品進出口商会」との交流を継続して実施しています。
また、医療用医薬品の継続的安定供給に関しましては、基礎的医薬品に関する活動を続けております。前回の薬価改定で医療用生薬が基礎的医薬品に適用されましたが、同じ原料生薬を使用している医療用漢方製剤・生薬製剤は適用されませんでした。度重なる薬価の引き下げと原料生薬の価格高騰などによる製造原価の上昇により、現行薬価制度においては安定供給できなくなるのではないかとの不安の声があがっています。国民の便益のために、引き続き、医療用漢方製剤・生薬製剤が基礎的医薬品に位置づけられるよう活動してまいります。
一般用医薬品については、「Information sheet」「繁用処方パネル」の作成を通じた活動や、当帰川芎製剤の開発などを通じて、セルフメディケーションの拡大を視野に入れた活動を継続していきます。また、OTC薬全体へのセルフメディケーション税制の適用拡大についても、積極的に活動してまいります。
関係各位の皆様には、当協会の活動にご理解を賜り、引き続きご支援ご指導頂けますよう、重ねてお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
- 教育研修部会
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「新MR漢方教本スライド」の改訂について
改訂箇所の検討を行った。統計資料および半夏厚朴湯の使用上の注意改訂を追加予定である。今後も更新箇所について各部会とすり合わせのうえ更新する。 -
研修会について
9月5日 MR教本改訂検討会
11月20日 「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」について
㈱ツムラ 法務・コンプライアンス部 若桑文夫氏
1月15日 (予定)マナー研修
3月11日 (予定)「原料生薬について」 - 有用性研究部会
- 日本東洋医学会EBM委員会への協力としての「漢方治療エビデンスレポート」作成については、EKAT 2016の前書き部分や除外リストの公開を随時行う。また、追補版についてはEKAT Appendix 2017、EKAT Appendix 2018を同時に冬頃に公開していくこととした。EKAT 2019については、構造化抄録(SA)作成を、日本東洋医学会EBM委員会のアブストラクターの先生方に依頼中である。
- 日本東洋医学会EBM委員会への協力作業「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」は、KCPG 2019掲載対象(2018年4月~2019年3月までに発行)のガイドライン調査を終え、結果のまとめは終了。KCPG 2019については、ホームページの全面改訂になるため、2013年以前の診療ガイドライン記載内容の見直しも行い、10月頃の公開を予定している。
- 「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」の公開情報を元に、2013年以降の診療ガイドラインへの掲載状況(掲載されたガイドライン数や処方数の推移)を、日漢協のホームページに公開することが、6月30日の日本東洋医学会EBM 委員会にて了承された。
8月2日、委員会を開催し、理事会の審議・報告事項等、漢方薬使用実態調査データおよび取り組みファイルの活用について説明、紹介した。
また、各部会、保険薬価およびコード委員会、ビジョンPJの情報を共有した。
医療用医薬品の流通改善ガイドラインについて6月28日に開催された流通改善懇談会の内容を部会員と共有した。また、公正取引委員会から排除命令のあった案件についても情報共有した。
本年度の部会での講演会の演題や演者について検討を行ない、卸連へ演者を依頼することで進めることとした。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
- 2019年度 「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」 開催日時について
- 国内における薬用作物の栽培面積調査結果について 日漢協で生薬を直接取扱っている29社を対象に、2012年と2017年における国内で栽培している薬用作物の栽培面積について調査を実施した。その結果、栽培面積は2012~2017年で約20%拡大していることがわかった。生産量が多く面積が拡大した生薬はトウキ、シャクヤク、ソヨウおよびオウギがあげられる。今後、2015年と2019年についても調査を実施し、現状を把握する計画である。
- 第5回原料生薬使用量等調査(2015年度および2016年度分)の調査結果の公表について 2015~2016年度の原料生薬の使用量等調査を実施し、第1回調査(2008年度)からの9年間の使用量の推移について俯瞰した資料を生薬学雑誌に投稿し、併せて広報委員会と連携して日漢協ホームページでも公表した(6月18日掲載)。皆様のご研究やご活動にご活用いただければ幸いである。
一般社団法人全国農業改良普及支援協会(普及協会)と日漢協が設置した薬用作物産地支援協議会は、6月25日に2019年度 第1回薬用作物産地支援体制整備検討会を開催した。検討委員として有識者を迎え、農水省と厚労省からもオブザーバーとして参加いただき、本年度の“農林水産省 茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業”の進め方や今後の予定について協議した。
また、日漢協の担当事業の一つである「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」の開催日程が決まったので上に示す。薬用作物の栽培等に興味をお持ちの方はぜひご参加いただきたい。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会 7月22日開催
- ・各部会からの活動報告
- ・漢方将来ビジョンプロジェクト会議:ビジョンチーム・啓発アウトリーチチーム活動報告
- ・組織見直しについての検討
- ・その他連絡事項
- 処方部会
- 漢方処方ソフトについて
- ・アプリをバージョンアップした。
- 新規追加候補処方の検討
- ・処方の使用実態の有無、実現性(生薬供給等)の確認、効能が類似し差別化が難しい処方の洗い出しをおこなった。
- ・削除候補処方の検討を始めた。生薬の流通、製剤としての前例など調査し削除候補の絞り込みを行っていく。
- 適正使用推進部会
- 「Information sheet」中国語版作成について
- ・簡体字と繁体字で作成することにし、今年度中に20処方、来年度19処方、計39処方作成予定である。
- 繁用処方パネル・チラシ新規作成
- ・「葛根湯」についてデザイン検討を行った。
- その他
- 7月21日日本薬科大学「漢方アロマコース※」
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本年度は「市販漢方薬の選び方」と題し、「漢方医学の特徴」「漢方医学と西洋医学の違い」「特に漢方治療が有効な症候」について説明。
虚実・寒熱の捉え方について言及。また、気・血・水の虚・実病態別に、代表処方を紹介。漢方薬の選び方のポイント・留意点について説明した。
生薬の多成分含有について、産地特性について説明。漢方薬の安全性の高さについても言及した。
また、OTC漢方薬の特性として、処方数の多さ、エキス量の違い等について説明を行った。
※文部科学大臣認定「職業実践力育成プログラム」。2016年4月から開催されており、漢方に加えて幅広い補完医療の現状を体系的に学ぶことができる。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
本草学なるほど!ミュージアム
での展示(2019/3/30)
AMED官民共同研究「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究」(代表研究者:国立衛研 生薬部長 袴塚 高志 先生)において、当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)の承認基準原案の策定に向けた検討が進められている。6月12日に2019年度 第一回 全体会議が開催され、「血の道症」や「更年期障害」の症状に関して、エビデンス候補となる婦人系漢方処方の臨床文献のエビデンスレベルについて、また、モデル製剤の品質評価試験の状況や今後の取り組みについて議論がなされた。
制度研究部会では、当帰川芎製剤の主体となる3生薬(当帰、芍薬、川芎)が配合されている婦人系漢方処方の臨床文献を収集し、全ての効能効果に対応する文献のエビデンスレベルを評価すべく、学識者に相談しながら調査を進めている。製剤開発部会では、モデル製剤の品質評価において懸案となっている「ビャクジュツのアトラクチレノリドⅢ」の定量法について、各社の知見を収集しながら、試験法の改良に取り組んでいる。また、効能効果に「月経前症候群(PMS)」の追加が提案されており、その定義や症状、エビデンス候補となる臨床文献を調査している。
「第30回 日本医学会総会 2019 中部」に関連して3月30日~4月7日にポートメッセなごやで開催された「健康未来EXPO 2019」の医学史サテライト展「本草学 なるほど!ミュージアム」において、漢方将来ビジョンPJの啓発・アウトリーチチームや一般用漢方製剤委員会と協力して、会員会社の製品パッケージを展示した。公式総来場者数は30万人以上であった。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 漢方処方エキスの日局収載 2019年6月28日付で日局17第二追補が告示された(同日施行)。呉茱萸湯エキスが新たに収載され、日局収載漢方処方エキスは計35処方となった。
- 局外生規 2018年末に「局外生規2018」が施行され、イカリソウエキスなど3品目の単味生薬エキスが新規収載された。すでに「局外生規2015」で収載済みのアカメガシワエキスなど3品目と合わせ、局外生規に収載された単味生薬エキスは計6品目となった。
6月19日と8月28日に、本年度第2回および第3回の原薬エキス委員会を開催した(6月大阪、8月東京にて)。委員会では日局関連情報や局外生規技術情報等の進捗状況を確認した。
また、本年7月に設置された「日漢協組織見直し検討班」の求めに応じ、これまでの委員会活動や今後改善すべき活動等について議論を行った。
また温清飲エキスと白虎加人参湯エキスの新規収載案が、本年6月に意見公募され(意見締め切り:8月末日)、これら2処方は2021年4月施行予定の日局18に収載される見込みである。
現在、これらに続く処方として柴胡桂枝乾姜湯、辛夷清肺湯、麻黄附子細辛湯および抑肝散加陳皮半夏4処方のエキス収載原案が検討されている。
また、2019年末を目標に「局外生規技術情報(仮)」を刊行すべく、各条の収載経緯、規格設定の考え方などについて原稿作成作業が進められている。当委員会担当のアカメガシワエキスについては7月末に原稿を提出したが、他品目については現在検討中である。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 坂上 誠(株式会社ツムラ)
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト(PJ)は、5月28日、6月25日、7月23日および8月27日に会議を開催した。
PJ各チーム活動報告では、各課題に対する進捗状況についてチームリーダーより報告がなされ意見交換が行われた。
2019年度の漢方将来ビジョン研究会の開催等について検討し、研究会は2 月に開催することとした。
総務委員会
委員長 竹下 真吾(株式会社ツムラ)
- 事業計画に関する事項 第37回定期総会において、2019年度事業方針および事業計画案を上程し承認された。
- 組織見直し検討班の立ち上げと運営について 第215回理事会で承認された「日漢協組織見直し検討班」を、総務委員会が検討班事務局となり、7月4日に第1回を開催した。目的は、2018年に公表した日漢協の新ビジョン「漢方の将来ビジョン2040」を実現するための組織を構築することである。
- 第216回理事会後の講演会について 7月19日にKKRホテル大阪にて厚生労働省医薬・生活衛生局 総務課長補佐 田井貴 氏に、「薬機法等制度改正について」ご講演いただいた。
- 総務委員会委員の募集について 第214回理事会で承認された総務委員会規程により、正副会長会社からの委員参加を必須として、4月から新規委員募集を行ったところ、正副会長会社からの委員登録があった。総務委員会では、引き続き正副会長会社および会員会社からの委員を募集している。
まず会員会社および委員会に今後期待する活動、組織の活動状況、活動メンバーの詳細等のアンケート調査を実施した。
広報委員会
委員長 土屋 洋介(株式会社ツムラ)
- 漢方・生薬に関する啓発活動
- (1)日本東洋医学会との共催による市民公開講座開催
6月30日、第70回日本東洋医学会学術総会(於:京王プラザホテル)において「養生シンポジウム -養生を知り、現代に活かす-」のタイトルにて開催した。
当日は学会会員を含めて345名が聴講に訪れ、予想を上回る参加者で大盛況のうちに終了した。 - (2)日漢協主催第21回市民公開漢方セミナー
2019年12月26日に、東京大学加齢医学講座・小川純人准教授を講師に迎えて開催することを決定した。 - 制作物
- 日漢協ガイド2019を発行し、ホームページへの掲載も完了した。引き続き、英語版の作成に取り組んでいる。
- 日漢協ホームページ
- (1)更新の状況
第70回日本東洋医学会学術総会市民公開講座に関する情報、日漢協トピックス、原料生薬等使用量調査(5)などを新規掲載した。 - (2)お問い合わせの状況
日本における生薬のニーズ・調達方法・使用実態や、漢方処方の英語情報などについての問い合わせが寄せられた。 - その他
- 6月12日に、中国陝西省銅川市の訪日団(9名)と日漢協事務所にて面談し、情報交換を行った。
国際委員会
委員長 諸田 隆(株式会社ツムラ)
国際委員会の活動の一つとして、ISO/TC249に関する活動が質的、量的に大きなウェイトを占めている。6月には全体会議がバンコクで開催され、日漢協からは3名のエキスパートが参加した。会期中には、分科会(WG meeting)も開かれ、多くの案件について議論された。WG1は、生薬原料、生薬に関する分科会であるが、中国を中心として毎年多くの新規提案がされ、限られた数のエキスパートでは対応が困難な状況であった。
このような中、各国の薬局方への収載状況、取引量によってスコアリングし、優先順位を付与するという新規提案(DTR 23975)が採択され、優先順位が100位以内の生薬を優先的に国際規格とする方向性が打ち出された。
この結果、本年度の新規提案6件のうち、次のステップに進む提案は2件が採択された。汎用される重要生薬が優先的に国際規格化されるのは、非常に良い方向性である。当会議の詳細については、6月25日発行の日漢協トピックスをご参照いただきたい。
現在、国際委員会では、10月15日に予定している中国医保商会との定期日中交流会(KKR ホテル東京)の実施に向けて準備をしているところである。中国からは、孟冬平副会長を始め、40名近くの訪問団をお迎えすることとなっている。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規および関係通知の調査研究、関係行政機関および諸団体との連絡ならびに意見具申を基本に活動している。
- 薬機法等制度改正について 2019年3月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。第198回通常国会は6月26日に閉会、衆議院で閉会中審査となり、成立は次期国会以降に持ち越された。
- 第十七改正日本薬局方第二追補 ] 6月28日、「日本薬局方の一部を改正する件」(令和元年厚生労働省告示第49号)が公布され、同日から施行された。経過措置期間は2020年12月31日までである。「呉茱萸湯エキス」が漢方処方エキスとして新規収載された。
- ・6月28日付け厚生労働省告示第49号「日本薬局方の一部を改正する件」(第十七改正日本薬局方第二追補)
- ・6月28日付け薬生発0628第1号「第十七改正日本薬局方第二追補の制定等について」(局長通知)
- ・6月28日付け薬生薬審発0628第1号「第十七改正日本薬局方第二追補の制定に伴う医薬品製造販売承認申請等の取扱いについて」(課長通知)
- ビタミン主薬製剤、胃腸薬の製造販売承認基準の改正 5月30日付けで承認基準の一部改正により告示、関連通知が発出された。ビタミン主薬製剤の効能または効果の表現を改め、有効成分が生薬成分など一部追加された。なお事務連絡については、6 月28 日付け事務連絡『「ビタミン主薬製剤製造販売承認基準の運用及び審査上の留意点について」の一部訂正について』の訂正通知が発出された。
技術委員会
委員長 古家 孝之(株式会社ツムラ)
日局18改正に向けて、温清飲エキスおよび白虎加人参湯エキスの収載原案が、日本薬局方原案検討委員会・生薬等委員会で了承された。また、日局17第二追補で収載された呉茱萸湯エキスにギンセノシドRb1の定量法と含量規格を追加設定する改正案が提出され、了承された。
マオウの純度試験(2)異物に関して、会員各社から異物のデータを収集して、7月の生薬等(B)委員会にて改正提案を行った。現行記載の「トクサ科又はイネ科の茎」という文言が削除され、純度試験(1)の木質茎以外の異物1.0%以上を含まないとする改正案が了承された。現在意見公募中である。
生薬管理責任者育成の一環として本年5月より、日本薬科大学新井一郎教授と山路誠一准教授の指導の下「内部形態に関する研修会」を4回シリーズで実施した。会員各社から43名が受講した。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●半夏厚朴湯(医療用)の「使用上の注意」改訂について
半夏厚朴湯との因果関係が否定できない肝機能障害の副作用が集積され、PMDAとの協議の結果、自主改訂にて「使用上の注意」の改訂を行い、注意喚起を図ることとなった。なお、一般用半夏厚朴湯は改訂の対象には該当しない。
改訂内容:「その他の副作用 肝臓:肝機能異常(AST、ALT 等の上昇)」
改訂品目の製造販売会社を対象に5月10日に臨時の委員会を開催し、該当会社で情報を共有するとともに、5月28日が情報提供開始日となることを周知徹底したうえで情報伝達対応を実施したところである。
また、本件についてはDSU「医薬品安全対策情報(Drug Safety Update)」No.280号に自主掲載され、6月18日にHP公開、6月25日より郵送発送の対応が開始されている。
コード委員会
委員長 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
2019年度第1回コード委員会を6月14日に開催した。コード審査会を組織改編して新設の委員会としてスタートしたため、委員長と副委員長の選任を行った。
「販売情報提供活動に関するガイドライン」の中で会員会社が行う「証」に関する情報提供のあり方について、厚生労働省と数回に亘って折衝を行い、従来通りの活動が行えることとなった。ただし情報提供のもとになる成書等の取扱いについては、各会員会社が現在使用しているものを日本東洋医学会に提示し、要件等を別途検討の上、定めることとした。また、「日漢協製品情報概要等作成上の留意点」についても改訂することとした。
保険薬価委員会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価委員会は、5月14日、6月11日、7月9日、8月6日に会議を開催した。4月1日、5月13日付で、経済課の異動があった。6月10日に、新任の田中ベンチャー等支援戦略室長、松田薬価等相談専門官と面会して、「漢方製剤・生薬の安定供給に向けた日漢協の取り組み」を説明し、理解を深めていただいた。
2020年度薬価制度改革へ向け、医療用漢方製剤・生薬の不採算品再算定の対応について、日漢協としての不採算品再算定希望予定品目をこれまでに取りまとめた。5月17日に日薬連より「不採算品再算定を希望する品目の提出について(日薬連発第403号)」が発出され、全ての製造販売会社が品目ごとに「不採算品再算定希望予定品目」を日薬連事務局へ提出した。
上記書類提出の後、6月27日に経済課より不採算品再算定希望予定品目フォーマットの提出依頼があり、全ての製造販売会社が提出した。また、8月8日に委員会を代表して、正副委員長・部会長が経済課と不採算品再算定希望予定品目(日漢協取りまとめ品目)のヒアリングを行った。
高崎健康福祉大学薬学部薬学科 天然薬物学研究室 渡辺 和樹 准教授
健康に役立つ成分の探索
自利利他の精神
「人類の健康と福祉に貢献する」を建学の理念とする高崎健康福祉大学の歴史は、1936年(昭和11)に須藤いま子女史により群馬県高崎市に創設された須藤和洋裁女学院に遡ります。以後、1966年に群馬女子短期大学の設立が認可され、家政科を開設、今日の礎となりました。本学の開学は21世紀が幕を開けた2001年(平成13)、当初は健康福祉学部の単科大学でしたが、その後、2006年に薬学部、看護学部(現保健医療学部)、2012年に人間発達学部、そして本年2019年には農学部生物生産学科が開設されています。
5学部8学科を擁する総合大学の地歩を築いた今日、人の喜びを自分の喜びとする「自利利他」を建学の精神として食、医療、福祉、健康、教育の分野で社会に貢献する人材の育成を目指しています。
一学年90名の少人数制
13年前の2006年に開設された薬学部は、「創薬研究を目指す基礎薬学と生命尊重の使命感、倫理観を持った医療人としての薬剤師を育てる」を目的にスタートしています。6年後の2012年には大学院薬学研究科(薬学専攻博士課程)が設けられました。同学部では私立大学では数少ない一学年90名という少人数制を採用、4~5人の学生を1人の教員が担当するアドバイザー制を通じて、きめ細かな教育体制が取られています。研究室は創薬科学系、生物科学系、薬理学系、医療科学系の4つの系、19の研究室で構成されています。この他に臨床薬学教育センター、修学支援室、薬学学修支援センターを備えています。
天然由来新規医薬品シーズの探索
渡邊和樹准教授
研究室
薬学部棟、後方は今春に開設した農学部棟
同大学へ赴任された当時は岩崎源司教授の率いる有機合成化学研究室で
・地域への貢献を目指して、地域の天然資源の活用に関する研究
・海外の天然資源物の活用に関する研究
に携わり、本年3月に岩崎教授が退任の後、天然薬物学研究室を担当しています。
現在の研究テーマは、健康に役立つ成分の探索の下に
・天然由来新規医薬品シーズの探索
・食品の新規機能性の開発
以上の二点を中心に地域、海外の天然資源の活用に関する研究に取り組んでいます。若手のホープとして今後の研究成果が注目されています。
私の健康法 日本将棋連盟 棋士九段 先崎学さん
ボクシングジムでトレーニング
2017年、奥様の穂坂繭さん(日本棋院 棋士三段)と初心者から有段者まで楽しめる交流の場として囲碁・将棋スペース棋樂を開設。囲碁、将棋の普及を目指されている |
●11歳で奨励会入会
一昔前、娯楽の王様の一つが将棋だった。アマとプロの差が最も大きいのは相撲と将棋とも言われていた。この将棋の世界では幼少の頃から頭角を現し、天才と呼ばれる棋士が時代に応じて輩出している。その一人が先崎学さんだ。小学校4年生の時に米長邦雄永世棋聖の内弟子となり、翌年の1982年、11歳で奨励会に入会している。5年後の1987年に四段に昇段、プロデビューを果たした。弱冠17歳だった。1990年に通算100勝達成により五段となり、第40期NHK 将棋トーナメント優勝、1991年には第14回若獅子戦で優勝の栄に輝いた。
その後、1997年にA 級八段になり、2014年に九段に昇段、現在に至っている。
●うつ病を克服
文才に長け、エッセイストとしても数々の著作を著している先崎九段が病魔に襲われたのは一昨年の6月の下旬であった。それまで病気らしい病気をしたこともなく、いわば健康を謳歌していた。「風邪をひいたり、疲れを感じることはありましたが、至って健康でした。一度だけ食中毒で入院した経験があります。1泊2日でした」
そのエピソードが振るっている。原因は飲み屋で食した秋刀魚の刺身に当たったからとか。
二年前に罹った病の経過を記したのが『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』とのタイトルの書物で、リハビリを兼ねて綴った世にも珍しい手記として評判となっている。
●焼肉が大好物
特段の健康法はないそうだが、10年ほど前からボクシングジム(輪島功一スポーツジム)に通っている。「すぐ近くにあり、以前は毎週のように通っていました。最近は疲れを感じるようになったものですから、月に2回ほどにしています。シャドウボクシングや、筋トレ、サンドバックを叩いたりしています」
好物は焼肉、辛い物も好きで麻婆豆腐やカレーにも目がない。野菜ではモロヘイヤや山芋、オクラなどネバネバ系を好み、納豆も好んで食べている。アンコ類、おはぎやアンパン、大福、甘い物は苦手だそうだ。
「ウイスキーが好きでした。普通の人の倍は飲めると思いますが、年齢のせいか、弱くなりました。最近は日本酒が好きですね」
プロフィール
1970年6月22日、青森生まれ、1981年、小学5年の時に米長邦雄永世棋聖門下で奨励会入会。1987年、四段になりプロデビュー。1991年、第40回NHK杯優勝。棋戦優勝2回、A級在位2期。2014年、九段に。
週刊文春でコラムを12年間にわたり執筆。漫画『3月のライオン』監修。
著書『世界は右にまわる- 将棋指しの優雅な日々』(日本将棋連盟)、『先崎学の浮いたり沈んだり』(文藝春秋)、『うつ病九段』(文藝春秋)他多数