106号 (第36巻 第1号)2019年5月
第70回総会会頭 北里大学東洋医学総合研究所 花輪 壽彦 |
来る令和元年6月28日(金曜日)~30日(日曜日)の3日間、第70回日本東洋医学会学術総会を東京・新宿の京王プラザホテルで開催させていただきます。テーマは「伝統の継承と近未来へのチャレンジ」とさせていただきました。
会期中の6月30日には日本漢方生薬製剤協会(日漢協)との共催で、「養生シンポジウム」という市民公開講座を開催いたします。「養生を知り、現代に活かす」をサブタイトルとさせていただき、養生の歴史的解説や養生の実際について、この方面に造詣の深い先生方にお話しいただきます。養生は健康のありようや生活習慣を考え直す契機となる重要な課題と考え、この企画をいたしました。市民講座として多数の一般の方、会員各位の参加をお待ちしております。
さて、1950年に日本東洋医学会が創設され、今年は70回目の節目の学術総会となります。学会創成期の先人の労苦を顕彰し、我々は何を継承すべきか、改めて考えたいと思います。またAIが日常の生活だけでなく、医学・医療にも急速に浸透してきました。大量の情報処理や複雑系の解明が人工知能を活用することによって、すみやかに行われる時代になりつつあります。先人が時間をかけて構築した漢方の経験知・暗黙知を、近未来はAIの活用によって計量化・可視化して、関係者が情報や知識を共有できる時代になるでしょう。漢方や鍼灸のように「個別の事情」を充分勘案した、「証」という個別医療においてはAIの機械的標準化は無理という意見もあります。
AI活用の可能性をさぐることによって、かえって個別医療の「利点」が浮き彫りになるのではとも考えています。「近未来のチャレンジ」とさせて頂いた理由もそこにあります。
このテーマに沿って、特別講演を3題(「合気道について」(実演演武あり)、「日本の医療の過去・現在・未来」、「暗黙知と形式知」)、招待講演を4題、教育講演を1題(「令和版・医界の鉄椎」)組みました。また「医史学シンポジウム」(現代漢方を揺るがす新出土資料の発見)、「生薬シンポジウム」(漢方薬利用の近未来~最近の研究成果を踏まえて~)など7つの興味深いシンポジウムも組みました。
さらに「伝統医学セミナー」や「漢方入門セミナー」「医師のための鍼灸セミナー」「医師と鍼灸師のための鍼灸セミナー」「漢方薬剤師セミナー」など初心者からベテランまで受講できるさまざまなセミナーを企画しました。
スマホアプリを用いて、演壇・演者と会場の各位がリアルタイムに議論できる、双方向・インタラクティブな試みをするセッションも試行いたします。スケジュールの詳細は日本東洋医学会のホームページに遂次掲載しております。ぜひともご覧いただき、多数の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げる次第です。どうぞ宜しくお願い致します。
日本漢方生薬製剤協会 副会長 小林 豊(小林製薬株式会社 代表取締役副会長) |
日本漢方生薬製剤協会(日漢協)の37回目の定期総会を迎えられますこと、関係各位のご指導、ご支援によるものと、厚く御礼申し上げます。
我が国が高齢化社会のピークとなる2040年頃に向けて、健康寿命の延伸は、ますます重要になってまいります。活力ある長寿社会を実現するには疾病の重症化を予防することや、病後、術後の回復をサポートすること、いわゆる未病に対処することが求められると考えられます。日本東洋医学会とともに立ち上げた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」では、漢方製剤等が我が国の医療と国民の皆様の健康に貢献できることを示すとともに、6つの提言が出されています。日漢協では、これらの提言を実現させるためにプロジェクトを組織し、「漢方の将来ビジョン2040-国民の健康と医療を担う-」を策定、漢方生薬製剤等の継続的な価値の向上に努めています。
ここで、原料生薬から最終製品の安定供給や品質確保には課題もあり、解決に向けての取り組みが進められています。生薬の最大の供給国である中国とはGACP(薬用植物の栽培と採取, 加工に関する手引き)を国際標準化するため、JLOM(日本東洋医学サミット会議)のご支援のもと、日中共同でISO/TC249に提案するよう中国医薬保健品進出口商会との情報交換を進めています。国内では農研機構と連携して地域説明会や相談会を通じて薬用作物の栽培環境を整備しようとしていますが、栽培技術、機械化、取引価格など多くのハードルが顕在化しており、農林水産省の更なるお力添えの必要性を感じています。品質につきましては、厚生労働省のガイダンスで、日局や局外生規への収載が進められ、品質基準が整備されつつあります。
一般用漢方製剤・生薬製剤では、国立衛研のご指導による訪日外国人への情報提供資材の整備や当帰川芎製剤の活用領域の拡大を意図したAMED研究などを通じて、セルフメディケーションの進展を志向していますし、全てのOTC薬がセルフメディケーション税制に適用されることを大いに期待しているところです。
漢方生薬製剤等の有用性に関しましては、これまで漢方製剤等が記載されている診療ガイドラインを調査してきており、最新の調査では、その診療ガイドラインの数は約90に増加してきました。エビデンスの蓄積が進むとともに評価が高まり、漢方生薬製剤等の利活用の領域が拡大していることが伺えます。
健康なシニア世代の社会参加が進めば、医療関係者の働き方改革に貢献できるとともに、セルフメディケーションの推進と相まって、医療保障制度をサスティナブルに健全化させることにつながると考えられます。
新たな令和時代におきましても、日漢協では会員会社が高い倫理観を持ち、社会的な信頼を得られるよう、透明性を確保するなどコンプライアンス体制を充実させ、フェアな企業活動を継続することで発展していくことを目指してまいります。関係各位の皆様には、当協会の役割や活動にご理解を賜り、引き続き、ご指導、ご支援くださるよう、重ねてお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
- 教育研修部会
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『MR漢方教本Ⅰ、Ⅱ』の改訂について
『教本Ⅰ』は、会員企業での教育教材として利用できるだけでなく医育機関においてもご使用いただける内容を目指し、主要生薬から専門書を用いて内容を討議し、生薬スライドの形で改訂している。2月7日の部会において3生薬を追加し25生薬のスライドを作成した。また、『教本Ⅱ』の「PMS」については、次年度以降も安全性委員会の協力を頂き改訂を進める。 -
次年度の研修会について
次年度については、今年度実施した「安全性情報に関する内容」「生薬に関する内容」「薬用植物園の視察」研修会に加えて「ビジネスマナー」などの研修会も検討していく予定である。 - 有用性研究部会
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日本東洋医学会EBM委員会への協力作業
日本東洋医学会EBM 委員会への協力としての「漢方治療エビデンスレポート」作成については、追補版EKAT Appendix2017、EKAT Appendix 2018のSA英訳終了を待って、学会ホームページへの公開作業へ進めていく。 -
日本東洋医学会EBM委員会への協力作業
「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」の追補版KCPG Appendix 2018を、3月に公開した。KCPG 2019掲載対象の2018年10月~2019年3月に発行された診療ガイドラインの事前調査を、東邦大学メディアセンターで実施した。4月に国会図書館で行った本調査結果と合わせ整理し、夏頃の公開を目指す。 -
医療用漢方製剤の添付文書情報集について
2018年度改訂の英語版も作成し、日漢協ホームページに3月公開した。
2019年2月1日、医療用漢方製剤員会・流通適正化部会、コード審査会合同で、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課広告専門官による「販売情報提供活動ガイドラインについて」講演会を開催した。漢方医学に基づく情報提供の在り方については、引き続き当局と相談していくこととした。
製薬協コードが2019年1月1日から改定されたことを受けて、日漢協コードの改定を2019年4月1日に実施することが1月の理事会で承認された。主な改定内容は、個人への利益となる金銭類、物品等の提供が禁止されることである。具体的には、香典、供花、中元、歳暮、手土産等の提供禁止とプロモーション補助物品等の提供禁止である。
公取協での最近の通知(運用基準の改定)と話題(説明会での弁当提供等)について情報共有を図った。
「販売情報提供活動に関するガイドライン」の実施に伴い、当協会内に対応する委員会として、販売情報提供活動とコードに関する業務ならびに適正広告基準に対する業務を行うコード委員会を設置とすることとした。本件は3月の理事会で承認された。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
薬用作物産地支援体制整備検討会の様子
原料生薬の使用量と生産国(平成20-28年度)
- 農林水産省の2018年度補助事業「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業」の実施結果とその評価について 一般社団法人全国農業改良普及支援協会(普及協会)と当協会が設置した“薬用作物産地支援協議会” は、2018年度の補助事業における共同事業の総括を行うため、3月5日に東京赤坂の三会堂ビルにて、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センター長の川原信夫先生をはじめとする薬用作物に関する専門家の先生方を検討委員に迎えて“第2回薬用作物産地支援体制整備検討会”(検討会)を開催した。
- 第5回原料生薬使用量等調査(2015年度および2016年度分)の調査結果について 2008~2014年度までの調査結果と合わせて9年間の調査結果として取りまとめ、生薬学雑誌に投稿したものが2月号に掲載された。
本検討会では、共同事業における事前相談窓口の運営、地域説明会および相談会の実施、技術アドバイザーの派遣、栽培技術研修会の実施および調査・分析について、実施結果報告とその評価がなされた。日漢協では主に“ 事前相談窓口の運営”、“ 地域説明会および相談会の実施”、“技術アドバイザーの派遣”を担っており、これらについて活発な意見交換が行われ、良好な評価をいただいた。本活動で得られた知見は、今後の活動に反映させていく。
医薬品原料として使用する生薬の総使用量は、全体として増加傾向にあることが確認された。
皆様のご研究やご活動に本報告を活用いただければ幸いである。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- 2019年1月29日(火)開催
- ・各部会からの活動報告
- ・平成31年度事業計画(案)・経費予算(案)提案
- ・漢方将来ビジョンプロジェクト会議:ビジョンチーム・啓発アウトリーチチーム活動報告
- ・その他連絡事項
- 処方部会
- 「漢方処方大成ソフト」の運用について
- ・リモート接続の操作方法の実演を行った。
- 一般用漢方製剤承認基準の見直し案作成準備~製品化しやすい基準への見直し~
- ・新規候補処方から一般用漢方製剤として相応しい処方を絞り込み、追加候補とする。
- 適正使用推進部会
- 「Information sheet(英文説明書)」作成について
- ・39処方完成。日漢協ホームページにアップ、プレスリリースを行った。
- 繁用処方パネル新規作成
- ・「 自分の症状が対象になるか」の判断に役立つ新規パネルの継続作成を予定。葛根湯を優先候補として考えている。
- その他
- 日漢協(一般用)「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」改定
- ・2018年4月に施行された臨床研究法に鑑み、同法における公開費用と透明性ガイドラインにおける公開費用との重複を避けるために、「対象となる費用」の末尾に「ただし、臨床研究法において公開が義務づけられている費用については、同法を遵守して適切に公開することが必要になりますので本ガイドラインからは除きます。」との但し書きを追記した。
- ・2019年度の運用から適用となる。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
大分農業文化公園
正面ゲートにて(2019/2/11)
AMED官民共同研究のひとつに「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究」があり、そこでは当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)の承認基準原案の策定を目的に検討が進められている(代表研究者:国立衛研袴塚生薬部長)。去る2月26日に、2018年度創薬基盤推進研究事業研究成果発表会が開催され(川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)、国立衛研にて)、これまでの研究成果と今後の展望が発表された。また、3月11日に2018年度第4回全体会議が開催され、モデル製剤の品質評価試験の状況や、効能効果設定のエビデンスとなる婦人系漢方処方の臨床文献に関して議論が行われた。
製剤開発部会では、モデル製剤の品質評価試験における問題点などについて、詳細な実施手順などとともに解決策を検討している。また制度研究部会では、婦人系漢方処方の臨床文献を収集し、効能効果の追加や読み替えのエビデンスとして採用できるか否か文献内容を精査している。
2012年11月に策定した「日漢協(一般用):企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」について、2018年4月に施行された臨床研究法で公表が義務づけられた情報に一部重複があり、それを避けるためOTC薬協の改定に準じて日漢協版を改定し、2019年度から運用することとした。また周知を図るため、日漢協ホームページに改定版を掲載した。
2月11日に幹事会メンバーで、大分県杵築市の大分農業文化公園を訪れ、2013年5月に世界農業遺産に認定された国東半島宇佐地域の「クヌギ林とため池がつなぐ農林水産循環」について学ぶとともに、薬草・薬木の森やハーブガーデンを視察した。
3月30日~4月7日に“ポートメッセなごや”で開催された「健康未来EXPO2019」の医学史サテライト展「本草学なるほどミュージアム」に企画段階から協力し、期間中一般用漢方製剤や生薬製剤の製品パッケージを展示した。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 漢方処方エキスの日局収載 日局17第二追補(2019年5月施行予定)で呉茱萸湯エキスが新規収載される。
- 局外生規2018 2018年12月に医薬品審査管理課長通知「日本薬局方外生薬規格2018について」が発出され、単味生薬エキスのイカリソウエキス、ショウキョウエキスおよびチョウトウコウエキスが新規収載された。局外生規2015で収載されたアカメガシワエキス、ウラジロガシエキス、メリロートエキスと合わせて、計6品目の単味生薬エキスが局外生規2018に収載された。
2019年2月20日に昨年度第6回原薬エキス委員会を、また4月24日に2019年度原薬エキス会議と第1回委員会を開催した。委員会では日局改正検討の進捗状況等の確認や会議に向けての準備を行った。4月の会議では今年度の事業計画の審議、昨年度の活動報告等について報告を行った。
また3月の生薬等(B)委員会で、温清飲および白虎加人参湯エキスの新規収載案が、含量規格や乾燥減量など各規格値を含めて了承され、6月に意見公募される予定である。この2処方は、日局18(2021年4月施行予定)で収載される。
現在、次に続く処方として柴胡桂枝乾姜湯、辛夷清肺湯、麻黄附子細辛湯および抑肝散加陳皮半夏の4処方エキスの収載案が検討されている。
また局外生規については、各条の収載経緯や規格設定の考え方などについて情報提供すべく、「局外生規技術情報(仮)」の作成作業が開始されている。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
2018年度製品情報概要等審査を行ない、2月22日のコード審査会で判定を確定させた。審査判定結果は総審査件数37件中、「可」26件、「話題」6件、「好ましくない」5件であった。審査結果は審査会レポートNo.7としてまとめ、5月に厚生労働省へ報告する予定である。
「販売情報提供活動に関するガイドラインについて」と題して2月1日に厚生労働省監視指導・麻薬対策課よりご講演いただいた。
2019年度よりコード審査会をコード委員会と改称して、販売情報提供活動に関すること、製品情報概要等の審査に関すること、コードに関すること、適正広告基準に関することの4つの業務を担当する委員会として立ち上げることが3月の理事会で承認された。
保険薬価協議会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価協議会は、4月より保険薬価委員会と改められた。1月15日、2月12日、3月5日、4月9日に会議を開催した。2月は保険薬価部会との合同会議である。
2020年度薬価制度改革へ向け、医療用漢方製剤・生薬の不採算品再算定の対応について、会員会社希望品目を、これまで行ったアンケート調査結果を踏まえ業界案を取りまとめた。
「中医協にて表明する意見に盛り込む事項」の業界提案について検討を行い取りまとめ、理事会に報告した。取りまとめた業界案を日薬連へ提出した。
中医協における審議状況では、2019年10月に予定されている消費税引上げに伴う薬価改定に係る議論等について情報共有を行った。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 坂上 誠(株式会社ツムラ)
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト(PJ)は、1月22日、2月19日、4月19 日に開催した。
「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」の運営に関する情報共有等および研究会開催報告を行った。PJ各チーム活動報告では、各課題に対する進捗状況についてリーダーより報告がなされ意見交換が行われた。
2月5日に開催された「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」では、「高齢社会における漢方」「漢方製剤の薬物動態研究」「フレイル・サルコペニアにおける漢方補腎薬の分子薬理機序について」および「大規模データを用いた漢方製剤のアウトカム評価および費用分析」のご講演をいただいた。その後、本研究会の委員の先生方と活発なディスカッションがなされ、様々な意見等が示された。運営は、PJ各チームメンバー、事務局の協力を得て無事終了した。また、研究会終了後に記者会見が開かれ、各紙面にて研究会についての記事が報道された。
総務委員会
委員長 竹下 真吾(株式会社ツムラ)
- 「2019年度事業計画(案)」を策定し、第214回理事会に上程し、承認された。
- 企業倫理委員会の位置付けを明確にした「企業倫理委員会規程(案)」を策定し、第213回理事会に上程し、承認された。
- 日漢協を取り巻く環境変化に対応するため、名称等の一部変更を含む 「協会組織の役割表見直し(案)」を策定し、第213回理事会に上程し、承認された。
- 日漢協活動の中心的役割を担う総務委員会の委員資格を、正副会長会社からの推薦委員と参加を希望する会員とした「総務委員会規程(案)」を策定し、第214回理事会に上程し、承認された。
- 機能別委員会の位置付けを明確にするため「機能別委員会に関する規程」の一部改正案を策定し、第213回理事会に上程し、承認された。
- 第211回理事会で承認された「協会活動におけるコンプライアンス規程」の報告・相談窓口について、公正さを担保するため「事務局長と総務委員長」に「専務理事または常務理事」を追加し、さらに相談窓口の実務的な運用に関する「相談窓口対応フロー」を策定し、第213回理事会で報告した。
- 日薬連「低炭素社会実行計画フェーズⅡ」の会員会社への周知と参加募集を行った。
- 第214回理事会後、以下の通り講演会を開催した。 演題:「最近の安全性情報と適正使用について─漢方・生薬の安全性情報を中心に─」
- 総務委員会規程に基づき新規委員の募集を行った。
講師:PMDA医薬品安全対策第一部 近藤恵美子 部長
国際委員会
委員長 諸田 隆(株式会社ツムラ)
国際委員会の活動の一つとして、ISO/TC249に関する活動が質的、量的に大きなウェイトを占めている。2018年度からは、委員会横断的な会議体として「国際委員会拡大会議」を設置し、新規提案に対して日本の利益を最優先とした意見の集約に注力している。また、国際登録したエキスパート5名を当協会から派遣しており、国内委員会、JLOM主査会議および国際会議に参加して、日本の漢方・生薬業界の代表として精力的に活動を行っている。国内の会議は、平日の夜間や休日返上での参加が余儀なくされており、エキスパート各位には大きな負担となっているところである。2018年11月のWG1*会議(ソウル)には2名、2019年2月のWG2*会議(フライジング、独)には1名を当協会から派遣した。これらの詳細については、それぞれ2018/11/20および2019/3/11付けの日漢協トピックスをご参照いただきたい。現在は、6月にバンコク(3名を派遣予定)で開催される全体会議に向けて、準備を実施しているところである。
*WG1:生薬原料、生薬に関する分科会、WG2:伝統薬工業製品の分科会
技術委員会
委員長 古家 孝之(株式会社ツムラ)
日本薬局方第18改正に向けて、白虎加人参湯エキス、温清飲エキスの新規収載案を検討してきたが、日本薬局方原案検討委員会(局方委員会)にて原案が承認された。今後、意見公募される。
特定微生物試験法の検証に関する論文を生薬学雑誌に再投稿し、照会対応を完了し、2019年2月号に掲載された。
会員会社に対してマオウの純度試験/異物に関するアンケートを実施し、集計結果をまとめた。今後、日漢協の規格改正要望として局方委員会に提案していく。
生薬を管理する責任者の育成の一環として、生薬の鏡検を中心とした「内部形態に関する研修会」を5月より開催すべく準備を進めている。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬制委員会は、薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規および関係通知の調査研究、関係行政機関および諸団体との連絡ならびに意見具申を基本に活動している。
- 薬機法等制度改正について 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において検討されてきた法改正については、2018年12月25日に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」が公表され、次いで2019年3月19日の第198回国会(常会)で「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」が提出された。
- レイヨウカク含有製剤について ] 第18回ワシントン条約締約国会議(COP18)が、5月23日~6月3日にスリランカで開催される。COP18では、レイヨウカク(羚羊角)の基原動物サイガレイヨウが、附属書Ⅱ(輸出国政府の発行する輸出許可証があれば国際取引可)から附属書Ⅰ(商業目的のための国際取引禁止)へ引き上げ提案される見込である。日薬連の2017年度在庫数量調査によれば、レイヨウカクは年間約500kgが日本に輸入されており、提案が可決された場合、レイヨウカク配合医薬品の供給に深刻な影響が予想される。日薬連ワシントン条約関係連絡会では、製品の安定供給に向けて「レイヨウカク検討班」を設置し、行政や関係機関と協力して製造販売承認代替申請への対応などが検討されている。
- 漢方将来ビジョンプロジェクト:承認申請ガイドラインチーム 日漢協の「漢方の将来ビジョン2040」(2018年7月公表)では、ビジョン4で「医療用漢方製剤の新剤形の開発や効能拡大に関する研究などを推進し、漢方製剤など多成分系医薬品の承認申請ガイドライン策定に協力していきます」とされている。
承認申請ガイドラインチームでは、AMED研究班に協力して剤形追加のための医療用漢方製剤の生物学的同等性試験ガイドラインについて検討している。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●一般用漢方製剤の「使用上の注意」の整備と安全使用に関する研究について
平成30年度医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業にて平成30年4月1日~平成33年3月までの3年間で検討する「一般用漢方製剤の「使用上の注意」の整備と安全使用に関する研究」(代表研究者:国立医薬品食品衛生研究所 生薬部長 袴塚高志先生)への協力依頼が安全性委員会にあり、対応を行っている。
検討課題は以下の通りである。
(1)一般用医薬品薬効群と一般用漢方製剤の「使用上の注意」設定根拠検討
(2)一般用漢方製剤に特化した情報提供の検討
(3)医療用漢方製剤と一般用漢方製剤との「使用上の注意」整合性検討
1月25日に第2回研究班会議が開催され、「妊産婦、授乳婦」および「高齢者」の注意喚起についての検討が行われた。
広報委員会
委員長 土屋 洋介(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(平成31年1月~4月)
- (1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 15件(3月28日現在)
- (2)一般用ホームページ新規掲載事項 12件(トピックス2件)(3月28日現在)
- (3)電話対応 3件(3月28日現在)
- (4)漢方啓発セミナー
- 第70回日本東洋医学会学術総会市民公開講座
1月16日 開催予告ホームページ掲載
3月7日 会頭の花輪先生と進捗状況確認の打ち合わせ - マスコミへの対応
- (1)1月から4月にかけて1件対応(3月28日現在)
-
(2)国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018後の会見対応
参加記者:12社13名
掲載記事:5社5記事 - 制作物
- (1)『ニューズレターNo.105』をを発行
- (2)コラム集「理解してほしい、漢方生薬製剤の知識」をホームページに掲載
- ホームページ企画部会活動
- 日漢協HPにトピックス5件(公式HP5件)記事掲載(3月28日現在)
- その他
- 日漢協関連記事・番組およびHP更新などについて、事務局を通じて会員会社の窓口担当者に25件の情報提供を実施した。(3月28日現在)
株式会社皇漢薬品研究所
株式会社皇漢薬品研究所(本社:東京都千代田区)は、昭和58年の創立以来、「治療より予防、予防より健康づくり」という理念を掲げ、健康・美容・医薬品を通して皆様に貢献することを使命としています。創業当時から取扱う高級素材「スッポン」のパイオニア企業であり、南米ペルーのハーブ「キャッツクロウ」や「マカ」を日本で初めて紹介した実績もあります。
機能性素材、動植物、ハーブなどを世界各国から直輸入し、国内外の大学や研究機関、医療機関とも提携を結ぶなど、長年築き上げた幅広いネットワークは活躍の確かな基盤となっています。
平成21年に発売した生薬ガジュツ製剤の芳香性健胃薬「貴命健胃爽(きめいけんいそう)」を主力商品とする他、近年では医薬品のドリンク剤「エネゲル」も展開しています。
また、東京都北区赤羽にGMP(医薬品の製造・品質管理基準)認定の自社工場をもち、高度な品質と安全性を遵守した商品を提供しています。
取扱う製品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、さらに野草・ハーブ茶、自然食品、ドリンクまで。原料調達から製品化までを完全サポートするOEM・受託製造をはじめ、通信販売「健康王国ランド」の運営や卸販売も行い、あらゆるお客様のニーズにお応えいたします。
熊本大学大学院生命科学研究部 天然薬物学分野 塚本 佐知子 教授
世界中の天然物をターゲットに人類に役立つ薬を探索
源流は再春館、蕃滋園
あんたがたどこさ、肥後さ、肥後どこさ、熊本さ…と唄われ、森の都、水の都と言われる熊本市の中心部に三つのキャンパスを有する熊本大学は、夏目漱石先生の碑・銅像・句碑などの歴史的記念物が数多く残され、居ながらにして歴史散策も楽しめます。大学の前身は、熊本医科大学、熊本薬学専門学校、旧制五高、熊本師範学校、熊本工業専門学校の五校で、さらに遡れば、源流は江戸時代中期の宝暦6年(1756)に肥後藩主細川重賢が設置した医療機関の再春館と薬草園の蕃滋園とされています。
以来、263年の年月を経た現在、黒髪、本荘、大江の三つのキャンパスに文、法、理、教育、工、医、薬の七つの学部があり、「創造する森、挑戦する炎」をコミュニケーションワードに一万有余の学徒が勉学に勤しんでいます。
薬を創り、薬を育て、命を衛る
“熊薬”と呼ばれ、130年以上の歴史を誇る薬学部は、明治18年(1885)、私立熊本薬学校の名で設立されました。その後、九州薬学専門学校と名称を変え、大正14年(1925)に官立富山薬学専門学校とともに官立熊本薬学専門学校となり、昭和20年(1945)4月には創薬も薬学の本来の使命であるとの考えから全国に先駆けて製薬学科を設置しています。同24年の熊本大学の設置時は、製剤学科と製薬学科の2学科制の薬学部としてスタート、この流れが今日の薬学科と創薬・生命薬科学科に継承されています。
全国的にも珍しい単独のキャンパスを有し、温故知新、温故創新のフレーズのもとに同学部が進めているのが、天然資源の見つめ直しです。その一つが日本一美しい薬草キャンパスを目指す「薬草パーク構想」。これは多種多様な薬用植物と希少植物を守り、育て、地域の人々に開放することを目的としています。
これとともに平成29年(2017)に文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」の採択を受けたのを機に、植物や海洋生物、微生物などの天然資源から革新的な医薬品や健康社会づくりに役立つ産物を生み出す、「有用植物×創薬システムインテグレーション拠点推進事業(UpRod)」の推進に取り組んでいます。
海洋生物資源からの新規医薬シーズの探索
塚本佐知子教授
研究室
大江キャンパス前の通りは
昔ながらの“薬専通り”の名で
親しまれている
同研究室は塚本先生をはじめ助教2名、文部科研技術支援者2名、博士後期3年2名、博士(4年制)3年1名、博士後期1年1名、博士前期2年2名、博士前期1年3名、6年生2名、5年生3名、4年生5名、3年生4名で構成されています。
研究テーマは、
・海洋生物・微生物由来の医薬リード化合物の探索と作用機構に関する研究
・海洋由来真菌が産生するアルカロイドの生合成に関する研究
特に新規抗がん剤として注目されているユビキチン-プロテアソームシステムに対する阻害物質の探索に力を入れており、その成果が待たれています。
令和と漢方
平成から令和へ元号が変わり、新たな時代が訪れた。令和の訪れを祝し、漢方との関わりについてトピックスとしてお届けする。
●初春令月、気淑風和
そもそも元号は中国から始まっている。時の支配を意味する元号は前漢時代(紀元前206~8)の武帝(紀元前156~87)により創設され、日本に伝わり制度化されたのは大化の改新による大化元年(645)だった。以来1374年、明治、大正、昭和、平成を経て成立したのが令和である。元号の元は始まり、号は称号を意味し、漢字二種類で命名されるのが常であり、古来、その出典は漢籍をもとにしていた。
しかしながら、平成に続く新しい元号の出典は国書からとの声もあり、令和はわが国最古の歌集である『万葉集』から採られている。
4536の歌からなる万葉集は、天平宝字3年(759)に大伴家持による編纂とされ、278番目の元号となった令和の典拠は、出典が
「万葉集巻五の梅花の歌三十二首并せて序」、
引用文は
「初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」
書き下ろし文は
「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」
令和を発案した中西進著『万葉集』では現代語訳を以下のように表している。「時あたかも新春の好き月、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている」
●日漢同根
戸井田三郎元厚生大臣の色紙
「黄帝内経 霊枢」の一節
令和はこの他に『黄帝内経 霊枢』終始編(第九)に、「故寫者迎之、補者隨之、知迎知隨、氣可令和」(ゆえに、寫なる者はこれを迎え、補なる者はこれに隨う。迎を知り、隨を知れば、気、和せしむべし)という一文がある。
『黄帝内経 太素』にも、巻第三陰陽の項に「此之失者、皆是自失将攝、故令和氣銷削也」とあり、中国と日本との浅からぬ縁を改めて知る。戸井田三郎元厚生大臣が『日漢協会報(現日漢協ニューズレター)』24号(1991年12月刊)に揮毫された「日漢同根」に倣い、令和の英語訳であるBeautiful Harmonyが実現されることを期待したい。