105号 (第35巻 第3号)2019年1月
厚労省 医薬・生活衛生局長 宮本 真司 |
新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、本年の医薬品、医療機器等行政を展望し、所感を申し述べます。
近年、少子高齢化の進行、再生医療・AI等の科学技術の進歩、国際化の進展など、行政を取り巻く環境が大きく変化しております。これらを踏まえ、本年も様々な施策を進めてまいります。
第一に、本年は医薬品医療機器等法の施行から五年を迎える年にあたります。昨年は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、薬機法の施行状況に加え、人口構成の変化や技術革新の進展などの環境変化を踏まえ、医薬品・医療機器等を取り巻く現状や課題についてご議論をいただきました。本年は議論の結果を踏まえ、薬機法改正を含めた具体的な措置について検討を進めてまいります。
第二に、有効かつ安全な医薬品、医療機器等をできる限り早く患者の皆様にお届けできる環境を整備するとともに、安全対策の高度化を図ってまいります。
昨年は、「先駆け審査指定制度」の四回目の募集を実施いたしました。既にこの制度に指定された医薬品、医療機器、再生医療等製品が承認されており、安全性を担保しつつも国民の皆様により良い製品をより早くお届けすることに貢献ができていると考えております。本年も、「先駆け審査指定制度」や「条件付き早期承認制度」を適切に運用することで、革新的な医薬品、医療機器等の早期実用化を推進します。
また、大規模な医療情報を活用した医薬品の安全対策の取組として、昨年四月に医療情報データベース(MID-NET)の本格運用が開始され、産業界やアカデミアの方にも活用いただけるようになりました。本年は、MID-NETの利活用の推進を図るとともに、リアルワールドデータを活用した医薬品の安全対策の高度化と効率化をさらに推進します。
第三に、地域で暮らす方々が、医薬品等を適切に使用することができる環境づくりに取り組んでまいります。
まず、患者の皆様が医薬分業のメリットを実感し、安全・安心な薬物療法を受けられる環境を整備します。今後、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、在宅医療の需要が増大し、がんの薬物療法など専門性が高い薬学的管理が継続的に必要となる機会も増大していくことが必要となります。この様な状況に適切に対応するため、薬剤師・薬局が、服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導を行う環境を整備することにより、かかりつけ薬剤師・薬局を推進してまいります。
さらに、違法薬物対策にも力を入れていく必要があります。昨年八月、薬物乱用対策推進会議において、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」が策定されました。同戦略に基づき、薬物に対する強力な取締りや広報啓発をはじめとする、総合的かつ積極的な施策を引き続き推進してまいります。
第四に、国際的な取組を推進してまいります。近年の国際化の進展に対処するために「国際薬事規制調和戦略」の着実な実施を進めるとともに、これまで日本が主体的に参加してきた医薬品規制調和国際会議(ICH)や国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)における規制調和の成果を、アジア諸国が積極的に取り入れていくよう支援してまいります。また本年は、医薬品査察協定・医薬品査察共同スキーム(PIC/S)の総会及びセミナーを日本で開催することとしており、医薬品査察における外国当局との協力を推進するとともに、引き続き国際規制調和における主導的役割を担ってまいります。
第五に、血液事業の推進に取り組んでまいります。少子化によって献血可能な人口が減少する中、将来にわたり血液製剤の安定供給を確保すべく、特に若年層への普及啓発活動の強化をはじめとする献血の推進に引き続き取り組みます。加えて、科学技術の発展や血液事業を巡る情勢の変化を踏まえ、血液法の改正に向けた検討を進めてまいります。
国民の生命と健康を守ることこそが厚生労働省の使命であり、日々高まる医薬品、医療機器等行政に対するご期待に応えるよう、本年も全力で取り組んでまいります。皆様の一層のご支援、ご協力をお願いしますとともに、皆様方のますますのご発展とご多幸をお祈りいたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
日本漢方生薬製剤協会 会長 加藤 照和 |
新年おめでとうございます。
昨年を振り返ってみますと、日本の伝統医学である漢方医学ならびに伝統薬である漢方薬にとりまして、大きな2つのトピックスがありました。
◆ICD11に伝統医学導入
一つは、昨年6月にWHO(世界保健機関)が、約30年ぶりの改訂となる国際疾病分類の第11回改訂版ICD11を公表し、初めて伝統医学がWHOのもとに公式に認められました。日本、中国、韓国の伝統医学の用語がハーモナイズされ、標準化されました。日本東洋医学サミット会議(JLOM)のご尽力の賜物と、心から敬意を表し感謝申し上げます。JLOMが提案されている通り、日本においても中国や韓国と同様に、厚生労働省内に伝統医学に関する部局を設置し、伝統医学を支援・推進する体制を早急に構築することに、日漢協としても賛同・協力させていただきたく考えております。◆医療用漢方製剤を基礎的医薬品に
もう一つは、昨年4月の薬価制度改革におきまして、煎じて服用する刻み生薬である医療用生薬が基礎的医薬品に位置付けられたことです。伝統薬である漢方薬が、国民医療に必要不可欠なもの、安定供給を図るべきものとして位置づけられたと理解しております。しかしながら、医療用生薬は医療用漢方製剤等の生産金額全体のわずか2.4% であり、同じ生薬を原料とする漢方製剤の生産金額は95.1% を占めております。つまり、多くの患者様が治療に必要としている漢方製剤が基礎的医薬品に位置づけられなければ、国民の便益とはなり得ないことは明らかであります。また、天然物由来の生薬を原料とする漢方製剤は、度重なる薬価の引き下げと原料生薬の価格高騰などによる製造原価の上昇により、不採算品となり会員会社が再算定を希望している品目が5割を超えています。すでに一日薬価の単純平均が85.5円であることから、現行薬価制度においては、基礎的医薬品に位置づけられなければ、安定供給できなくなるのではないかと医療現場からの不安の声もあがっております。
当協会は、国民の便益のために、引き続き、医療用漢方製剤が基礎的医薬品に位置づけられるよう活動してまいります。皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
◆原料生薬の安定調達
次に、当協会が昨年7月に発表した「漢方の将来ビジョン2040」においても重要なテーマとしております原料生薬の安定調達に関して、国内の薬用作物栽培においては、農林水産省の支援事業を活用した、薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会も6年目を迎え、国立研究開発法人農研機構の薬用作物の技術開発の紹介などの新しい取り組みも進めております。しかしながら、国内の生薬栽培産地としての課題は、大規模化、機械化、組織化、設備投資、取引価格などのハードルがあり、生産者に対する支援なくして栽培拡大は難しいと言わざるを得ません。引き続き、農林水産省をはじめ、各地の自治体のご理解とご協力を生産者とともに訴えさせていただきます。
中国から調達する原料生薬については、その必要量確保の点から、中国との良好な関係の維持発展に加え、自然災害等のリスクヘッジの観点より、産地の複線化も進めております。
また2014年から実施しております中国医薬保健品進出口商会との定期的交流では、中国国内最大の広州交易会に合わせて訪中団を結成し、11月に交流会を実施いたしました。当協会からは、新ビジョンの内容を紹介しましたが、今後の生薬取引について有意義な意見交換ができ、伝統薬のカウンターパートという地位を確立してまいりました。
中国では、国務院が2016年に「健康中国2030計画」を発表し、医療、食品安全、医療保険、環境保護など幅広い分野に亘った国家の方針として目標を明確にしております。その中では中医学の発展を掲げており、中国国内の生薬の需要も拡大が予想され、生薬調達の動向を注視していく必要があります。当協会では、双方の良好な関係を維持発展させ、良質な原料生薬を安定的に確保してまいります。
◆セルフメディケーションの推進
一般用漢方製剤および生薬製剤につきましては、引き続きセルフメディケーションの推進に取り組んでまいります。2017年、セルフメディケーション税制がスタートしましたが、国税庁の調査によると、2017年分の確定申告者に占めるセルフメディケーション税制利用の割合は0.12% にとどまっているという結果でした。この制度を充実するためにも、OTC薬全体の税制への適用拡大を視野に入れ、使用者に対する情報提供のあり方の検討など、活動を一層強化してまいります。◆漢方の将来ビジョン研究会
さて、本年2月5日に「漢方の将来ビジョン研究会2018」を開催いたします。当協会と日本東洋医学会とが共同で立ち上げた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」が、2017年3月に提言を発表した後の進展が報告・ディスカッションされる予定であります。基調講演は、日本医師会会長の横倉義武先生に「高齢社会における漢方」というテーマでお話しいただきます。さらに、漢方製剤等が我が国の医療と国民の皆様の健康にいかに貢献できるか、新たな研究の一端が示されると期待をしています。◆コンプライアンス体制の充実
本年は4月より、厚生労働省が策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が適用されます。このガイドラインの遵守はもちろんですが、漢方薬と西洋薬には効能などの点で大きな違いがありますので、漢方薬がより適正に使用されるよう、必要な意見交換を行ってまいりたいと考えております。当協会では引き続き、会員会社の社会的信頼を確保・向上するため、コンプライアンス体制の充実および企業倫理の向上を推進し、国民の皆様の信頼感醸成につなげてまいります。皆様におかれましては、当協会が漢方製剤の安定供給を果たし続けるために、医療用漢方製剤等を取り巻く喫緊の課題ならびに一般用漢方製剤等の果たす役割についてご理解賜り、変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
- IFPMA(国際製薬団体連合会)コードが2019年1月1日から改定されるのを受け、個人への金品の提供が全面廃止となるため、香典・プロモーション補助物品等の対応について情報共有を行った。製薬協コードも2019年1月1日に改定することから、当協会でも日漢協コードを2019年4月に改定することで検討を開始した。11月のコード理解促進月間には、会員会社への通知を行い、コード遵守の意識向上に努めた。
- 日漢協(医療用)透明性ガイドラインの改定が11月の理事会で承認され、施行した。なお、改定した透明性ガイドラインでは2019年度分を2020年度からの公開が適用されることとなる。
- 「販売情報提供活動に関するガイドライン」の通知発出に伴い、部会メンバーで情報共有し、今後の対応について協議をした。
- 公取協での最近の話題(説明会での弁当提供等)、流通改善ガイドライン、バーコードに関する情報についても部会メンバーで共有を図った。
- 教育研修部会
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『MR漢方教本Ⅰ、Ⅱ』の改訂について
『教本Ⅰ』は、会員企業での教育教材として利用できるだけでなく、医育機関においてもご使用いただける内容を目指し、専門書を用いて主要な生薬から内容を討議し、生薬スライドの形で改訂している。また、『教本Ⅱ』の「PMS」についても、安全性委員会の協力により改訂を進めている。 -
研修会の実施について
(1) 9月6日、東京都薬用植物園にて、管理者の山上勉氏による説明のもと植物観察を行った。
(2) 10月4日、「生薬事情 ~韓国編~」と題し、株式会社ツムラ笠原良二氏を招いて許浚博物館や慶熙大学附属漢方病院の内容を交えた生薬事情についての講演会を行った。
(3) 12月7日、「漢方薬の安全性や適正使用に関わる最近の話題」と題し、株式会社ツムラ杉山泰哲氏を招いて講演会を行った。 - 有用性研究部会
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日本東洋医学会EBM 委員会への協力作業
(1)「 漢方治療エビデンスレポート」作成は、11月7日にEKAT 2016へ全面改訂した。追補版EKAT Appendix 2017は、今冬の公開を目指し作業中である。また、EKAT Appendix 2018もRCT論文の構造化抄録がほぼ出来上がり、今後英訳依頼を行う予定である。
(2)「 漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」の追補版KCPG Appendix 2017は、12月に公開した。KCPG Appendix2018掲載対象の2017/4/1~2018/3/31までに発行された診療ガイドラインの調査については、7つを残し調査終了し、結果を整理している。 - 医療用漢方製剤の添付文書情報集は、2018年度改訂し、10月2 日、日漢協ホームページへ公開し、冊子版も作成した。
「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて(平成30年9月25日付薬生発0925第2号)」、会員企業における対応と組織体制の見直しに向け、関係メンバーによる検討を開始した。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
講演の様子/小柳 生薬国内生産検討班長
(金沢会場)
質疑応答の様子
(大宮会場)
「平成30年度 薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」について
農林水産省の平成30年度補助事業である「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業」を活用し、「平成30年度 薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」(地域説明会)を、9/25(火)北海道・札幌の開催を皮切りに全国8地域で実施し、11/30(金)北陸・金沢の開催をもって終了した。
この地域説明会は、生薬の国内生産の推進と拡大を目指し、生産者様への薬用作物に関する情報提供や情報共有、情報交換の場とすること、そして生産者様と実需者とのマッチングを後押しすることを目的としたものである。
本年度の地域説明会は昨年度と同様に2部制で開催したが、その内容は生産者サイドに立った形で刷新した。すなわち、1部では農林水産省、厚生労働省、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センターからの薬用作物に関する情報提供に加え、新たに各地域の生薬生産団体による「薬用作物の産地化への取り組み事例」や、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構による「薬用作物の国内生産拡大に向けた技術開発の紹介」などを盛り込んだ。さらに、当協会からは、薬用作物の需給情報の他に「技術アドバイザー派遣」や「WEBを使った売買支援」などの新たな取り組みを説明した。参加者からは生産者が活用できる情報が大幅に増加したなどの声も上がり、好評をいただいた。また生産者同士のネットワーク作りについて要望が出され、先ずは地域ごとに地域説明会の参加者(希望者のみ)を対象としたネットワーク作りを実施した。
一方、2部の個別相談会については、常設の専門相談員による相談窓口の対応が充実していることから、対象とする生産者を選定し実施した。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- 2018年10月17日(水)開催
- ・各部会からの活動報告
- ・第21回市民公開漢方セミナー、陳列関連
- ・漢方将来ビジョンプロジェクト会議:ビジョンチーム・啓発アウトリーチチーム活動報告
- ・局外生規WG 活動報告
- ・その他連絡事項
- 処方部会
- 漢方処方ソフトについて
- ・システム導入(ハード・ソフト)後の動作確認を実施した。
- 新規追加候補処方の検討
- ・今後の部会活動について、新規処方の検討方針についての意見交換をおこなった。
- ・今まで検討した処方のまとめについて基準を設けて整理する。
- 適正使用推進部会
- 「Information sheet」作成について
- ・28処方監修原稿につき最終確認を行ない、デザイン化依頼中。
- ・日漢協ホームページに掲載の際には、プレス発表を行う予定。
- 繁用処方パネル新規作成
- ・「自分の症状が対象になるか」の判断に役立つ補中益気湯、八味地黄丸の新規パネルを作成した。
- ・10月29日に行われた公開セミナー時に展示、大きな反響を得た。
- その他
- 9月30日(日) 日本薬科大学「漢方アロマコース」*
- *文部科学大臣認定「職業実践力育成プログラム」。2016年4月から開催されており、漢方に加えて幅広い補完医療の現状を体系的に学ぶことができる。
- ・昨年度に続き「OTC漢方」と題し、「漢方医学の特徴」「漢方医学と西洋医学の違い」「特に漢方治療が有効な症候」について説明。気・血・水の虚・実病態別に、代表処方を紹介。
生薬の多成分含有について、産地特性について説明。漢方薬の安全性に高さについても言及した。
また、OTC漢方薬の特性として、処方数の多さ、エキス量の違い等について説明を行った。 - 10月29日 市民公開漢方セミナー「理解してほしい、漢方・生薬製剤の知識」
- ・既成の葛根湯に加え新規作成の補中益気湯、八味地黄丸のパネルを展示。
- ・新規パネルと同内容の、A4版チラシを受講者に配布した。
- ・テーマにちなんだ葛根湯・防風通聖散・補中益気湯・八味地黄丸4処方の製品箱の陳列をエキス量ごとに区分し陳列した。
- ・パネル・エキス量別製品箱展示は相乗効果か、受講者からの問い合わせは過去にない大きな反響を得た。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
市民公開漢方セミナーでの
展示の様子
AMED官民共同研究「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究」(代表研究者:国立衛研 生薬部長 袴塚 高志 先生)の平成30 年度 第3回目の配合生薬班会議が9月20日に開催され、「当帰川芎製剤(実母散等)」(いわゆる婦人薬)の承認基準原案の策定に向けて、品質評価のための当帰川芎製剤モデル製剤について、また、効能効果の設定に係るエビデンスについて議論が進められている。
製剤開発部会では、モデル製剤の品質評価方法について調整を進めつつ、効能効果の追加・読み替えの根拠資料とすべく「血の道症」の症状を成書や文献などから抽出して整理した。制度研究部会では、効能効果の追加・読み替えのエビデンスについて、当帰川芎製剤の主体となる3生薬(当帰、芍薬、川芎)が配合されている婦人系漢方処方から調査対象処方を選定し、選定処方での臨床文献を入手してエビデンスとして採用できるか読み込みを開始している。
9月20日、PMDAからOTC等の審査サービスの充実と手数料の増額について説明があり、委員会内で意見募集するとともに、情報共有した。
10月23日付けでケイヒ製剤の広告に関する事務連絡が発出され、広告上の訴求表現について情報共有した。
10月29日の「第21回 市民公開漢方セミナー/四谷区民ホール」において、漢方生薬製剤等の啓発活動の一環として、一般用漢方製剤委員会や広報委員会と協働し、当委員会参加企業など16社の88製品のパッケージを展示し、一般の来場者などに興味を持って見ていただいた。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 漢方処方エキスの日局収載 日局17第二追補(2019年5月施行予定)で呉茱萸湯エキスが新規収載される。
- 局外生規2018 日薬連との調整を経た後、昨年12月14日に医薬品審査管理課長通知「日本薬局方外生薬規格2018について」(以下、局外生規2018)が発出された。局外生規2018では、ジョテイシ、ハンピなど4生薬と、単味生薬エキスであるイカリソウエキス、ショウキョウエキスおよびチョウトウコウエキスの計7品目が新規収載された。既収載のアカメガシワエキスなど3品目と合わせ、合計6品目の単味生薬エキスが局外生規2018に収載されたことになる。
2018年10月24日と12月5日に、本年度第4回および第5回原薬エキス委員会を開催した。委員会では、日局および局外生規2018の進捗状況などを確認した。
また、11月13日の生薬等(A)委員会で、温清飲および白虎加人参湯エキスの収載原案が提案され、現在各社で追試験が実施されている。特に問題がなければ、これら2処方のエキスは日局18(2021年4 月施行予定)で収載される見込みである。
次に続く処方として、柴胡桂枝乾姜湯、辛夷清肺湯、麻黄附子細辛湯および抑肝散加陳皮半夏の各エキスについて、現在収載案が検討されている。
なお今回、既収載のアカメガシワエキス、ウラジロガシエキスおよびメリロートエキスについても、定量法などが一部改正された。
また、これら既収載エキスの製造工程でヒ素は混入する可能性が極めて少ないことから、純度試験のヒ素が削除された。ただし、製法がまだ安定していないイカリソウエキスなど新収載エキスについては、とりあえずヒ素が設定された(いずれも3ppm 以下)。今後工業的製法が安定してきた段階で、見直すこととされている。
局外生規2018については、各条の収載経緯や規格設定の考え方などを情報提供するため、近く「局外生規技術情報(仮)」の作成作業が開始される予定である。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
会員会社に2018年度製品情報概要等審査の為の資材提供を依頼し、10月30日に収集した資材の整理を行なった。11月15日から本年度の審査に入り、12月18日に第2回を実施した。2019年1月に第3回を行い、審査結果を取りまとめる予定である。
販売情報提供活動に関するガイドラインの通知が9月25日に発出された。会員会社への情報共有を図るとともに、今後の協会での審査体制について組織横断の検討会を発足させてガイドラインの対応を検討していくこととした。
保険薬価協議会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価協議会は、9月11日、10月9日、11月6日、12月11日に会議を開催した。10月9日は保険薬価部会との合同会議であった。
2020年の次期薬価基準改定に向けて、漢方製剤・生薬の不採算品再算定の対応について、会員各社の希望品目アンケート調査行い、引き続き協議しているところである。
また、生薬については、保険適用され薬価で扱われている医療用生薬の品目別市場調査を行っている。
中医協等における審議状況、保険薬価協議会での改定データ、日漢協の新たなビジョンである「漢方の将来ビジョン2040~国民の健康と医療を担う~」および「平成28年漢方製剤等の生産動態」の情報共有を行った。9月11日の保険薬価協議会において、丸木前委員長から坂上委員長への交代(10月1日)を決議した。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 坂上 誠(株式会社ツムラ)
漢方将来ビジョンプロジェクト(PJ)は、9月18日、10月23日、11月20日および12月18日に会議を開催した。PJ各チームの課題に関する活動報告と、各課題について時間軸を用いた工程表の作成を行っている。
日漢協の新たなビジョン「漢方の将来ビジョン2040~国民の健康と医療を担う~」を7月に策定後、行政(厚労省、農水省、文科省、内閣官房等)、関係機関(国立衛研、PMDA、AMED)、関係団体(日本東洋医学会、日本医師会、日本薬剤師会、日薬連等)を訪問し、冊子を提供した。その際にいただいたご意見などをPJで共有化した。
現在、2019年2月に開催される「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018」のプログラムを確定し、研究会当日の運営などについて準備を進めている。
総務委員会
委員長 竹下 真吾(株式会社ツムラ)
- 事業計画、事業報告に関する事項 (1)2019年度事業計画の前文となる「事業計画策定にあたって(案)」を策定し、2018年11月の第57回正副会長会で承認された。
- 協会活動の効率的運営に関する事項 (1)「協会活動におけるコンプライアンス規程(案)」を策定し、2018年9月の第56回正副会長会で承認された。
- コンプライアンスに関する事項 2018年9月の第211回理事会後、コンプライアンス研修の一環として、帝京平成大学の白神 誠 教授に「日漢協コンプライアンスの取り組みに関する実態調査」というテーマで講演いただいた。
- 講演会に関する事項 2019年の講演会開催スケジュール(案)を第57回正副会長会および第212回理事会で報告した。
- 漢方製剤の生産動態に関する事項 2016年薬事工業生産動態統計年報概要から「漢方製剤等の生産動態」を作成し第212回理事会で配布した。
(2)2019年度の事業方針(案)、担当組織における事業計画(案)の策定を、業態別会議、機能別委員会、審査会、協議会、プロジェクトに依頼した。
(3)2018年度の事業報告を各組織に依頼した。
(2)2018年度中に、現行組織の役割を見直すとともに、日漢協を取り巻く環境の変化に対応する組織の検討を進め、その過程において規程の整備を図っていくことを第57回正副会長会および第212回理事会で報告した。
(1)開催回数:2回
(2)日 程:1回目 3月理事会後(東京)、2回目 7月理事会後(大阪)
国際委員会
委員長 諸田 隆(株式会社ツムラ)
日漢協として2年ぶりとなる5回目の訪中団を結成し、2018年10月31日(水)から11月3日(土)の4日間、広東省 広州市を訪問し、中国医薬保健品進出口商会(以下、中国医保)との交流会を開催するとともに、第124回中国輸出入商品交易会(広州交易会)を視察した。当協会からは、会長を始め約30名が参加し、漢方、生薬の現状について情報交換を実施した。中国では、伝統薬の使用促進策もあり、希少生薬の価格上昇はあったものの全体としては供給量、価格ともに安定しているとの良い報告を受けた。2020年に向けて薬用植物の栽培面積が拡大され、また、GACP、トレーサビリティへの取り組みなど、「安全・安心」の向上が図られているようであった。中国医保、およびその会員会社との親睦も回を重ねるごとに深まっており、全体的に収穫の多い訪中であった。来年度は、秋頃に訪日団を迎えて定期交流会を実施する予定である。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規および関係通知の調査研究、関係行政機関および諸団体との連絡ならびに意見具申を基本に活動している。
- ケイヒ製剤の広告等における取扱いについて 平成30年10月23日付け事務連絡(審査管理課・監麻課)「ケイヒ製剤の広告等における取扱いについて」が発出された。効能または効果、広告表現について留意点が示されたことから、当該製品の販売にあたっては適正な情報提供が求められる。
- 日薬連「第2回製造販売業管理に関する実態調査の結果について」 日薬連では、業許可等に係る責任者の規定の見直しを検討する際に必要な情報を収集することを目的として「第2回製造販売業管理に関する実態調査」(2018年7月26日付け日薬連発第563号、薬制・品質・安全性委員会)が実施され、「第2回製造販売業管理に関する実態調査の結果について」(2018年11月1日付け日薬連発第770号、薬制・品質・安全性委員会)により結果が示された。
- 漢方将来ビジョンプロジェクト(承認申請ガイドラインチーム) 漢方の将来ビジョン2040(2018年7月)のビジョン4では「医療用漢方製剤の新剤形の開発や効能拡大に関する研究などを推進し、漢方製剤など多成分系医薬品の承認申請ガイドライン策定に協力していきます」とされている。承認申請ガイドラインチームでは、AMED研究班に協力して剤形追加のための医療用漢方製剤の生物学的同等性試験ガイドライン(案)について検討している。
ガイダンス通知のケイヒ末の効能:「口渇、のどの渇き、糖尿病」
技術委員会
委員長 古家 孝之(株式会社ツムラ)
日局18に向けて、温清飲および白虎加人参湯2処方エキスの試験方法の案が固まり、現在各社で追試中である。追試結果により各項目の規格値案を提案する予定である。
日局マオウの純度試験(異物)に関するアンケート調査を実施した。この調査結果に基づいて、生薬等委員会に改正提案する予定である。
『生薬学雑誌』に再投稿した特定微生物試験法の検証に関する論文については、査読対応が完了し、2019年2月号に掲載される予定である。
生薬を管理する責任者の育成の一環として、昨年10月12日に京都大学大学院薬学研究科付属薬用植物園の見学会を開催した(参加者10名)。伊藤三千穂准教授の案内で、生薬を実際に味見するなどして、各生薬の特性について興味深いお話しが伺えた。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●第100回安全性委員会記念講演会開催
医療用製剤委員会安全対策小委員会を発展的解消し、医療用漢方製剤、一般用漢方・生薬製剤の適正使用確保のために2003年1月に第1回安全性委員会を開催してから、2018年11月に第100回を開催することができた。今回は記念講演会を企画し、「一般用生薬製剤・漢方製剤の承認基準と安全使用について」の演題で国立医薬品食品衛生研究所生薬部長の袴塚高志先生にご講演を賜った。安全性委員会25名を含む45名が聴講し、会場は満席の盛況であった。
広報委員会
委員長 土屋 洋介(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(2018年9月~12月)
- (1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 20件
- (2)一般用ホームページ新規掲載事項 18件(トピックス10件)
- (3)電話対応 5件
- (4)漢方啓発セミナー
- 第21 回日漢協市民公開漢方セミナー
10月29日 八木多佳子先生(日本薬剤師会薬局製剤・漢方委員会委員)
「理解してほしい、漢方・生薬製剤の知識」
167名参加(うち報道関係者7名) - マスコミへの対応
- (1)9月から12月にかけて4件対応
・漢方の将来ビジョン2040(クリニックマガジン)
・漢方の現状(日本テレビ)
・サンシュユ栽培(読売新聞:宮崎)ほか -
(2)薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会の会場での報道対応
札幌会場(1社)、さいたま会場(4社、うち3社会見)、京都会場(1社)、熊本会場(1社)、金沢会場(1社) - 制作物
- (1)『ニューズレターNo.104』を発刊
- (2)『日漢協ガイド2018』の発行および英語版のホームページへの掲載
- ホームページ企画部会活動
- (1)日漢協HPにトピックス13件(公式HP9件)記事掲載
- (2)日漢協HPリニューアル後、約半年経過の検証を委員長会にて報告
- その他
- 日漢協関連記事・番組およびHP更新などについて、事務局を通じて会員会社の窓口担当者に32件の情報提供を実施した。
広島大学大学院医歯薬保健学研究科生薬学研究室 基礎生命学部門 松浪 勝義 教授
天然植物資源からの生物活性シード化合物の探索研究
自由で平和な一つの大学
日本で最も多くの前身校を持つ大学として知られる広島大学は、国立大学では珍しい建学の精神があることでも異彩を放っています。前身校は明治7年(1874)に創設された広島師範学校(白鳥学校)を始め広島女子高等師範学校、広島高等師範学校、広島文理科大学など9校に及んでいます。建学の精神が掲げられたのは昭和24年(1949)に新制大学として創設された翌年の開学式でした。文部大臣を経て初代学長に就任した森戸辰男氏が「自由で平和な一つの大学」を表明し、今日に受け継がれています。
この建学の精神の下には、原子爆弾で壊滅的な被害を蒙った広島大学ならではの「平和を希求する精神」など理念5原則があり、「平和科目」という科目が全学部生の必修科目になっています。
東広島、霞、東千田の3つのキャンパスから成る広島大学には、昨年の4月に新設された文理融合の情報科学部の他に総合科学、文、教育、法、経済、理、医、歯、薬、工、生物生産の12の学部があり、学部生10,810人、大学院生4,559人が在籍、“100年後にも世界で光り輝く大学へ” を目指しています。
プレハブ棟からのスタート
国公立大学では最も小規模とされる薬学部は昭和44年(1969)、医学部薬学科(定員40名)として隣県の岡山大学と共に設置され、翌年、薬化学、生理化学、生薬学の3講座が設置されています。折しも当時は学園紛争が全国の大学で吹き荒れていました。その影響で校舎の新築計画は大幅に遅れ、仮設のプレハブ棟が研究室代わりとなっていたそうです。以後、昭和52年(1977)に薬学科が総合薬学科に改組され、6大講座制、定員60名となりました。
薬学部が医学部薬学科から独立したのは平成18年でした。4年制の薬科学科(定員22名)と6年制の薬学科(定員38名)が設置され、今日に至っています。
薬学部がある霞キャンパスは広島駅からバスで15分ほどの至便の地にあり、医学部、歯学部と軒を連ねています。
医薬品シード化合物の探索
松浪勝義教授
研究室
霞キャンパス
現在、同研究室では、熱帯・亜熱帯植物資源や植物内生菌(エンドファイト)、病原微生物代謝産物を中心に医薬品シード化合物の探索に取り組み、
・ ヒトがん細胞に対する増殖抑制作用を持つ化合物
・ 種々の疾患に関係する酸化ストレスを緩和する抗酸化物質
・ 熱帯域で問題となっているリーシュマニア感染症に対する化合物
などの探索を、培養細胞やモデル生物(ゼブラフィッシュや線虫)を用いて進めており、その成果が注目されています。
私の健康法 明治薬科大学 奥山 徹 理事長
早寝早起き、10時就寝5時起床
「正倉院の調査員としての活動が認められたと思うのですが、1月16日の歌会始の儀に陪聴者に推挙されました」と相好を崩す奥山理事長。都下清瀬市の明治薬科大学理事長室で。 |
●幼少の時から生薬とともに
「物心ついた頃から、将来は生薬を勉強すると決めていました」父は高校の生物の教師、伯父は植物学者として知られる奥山春季氏、祖父は漢方医という環境に育ち、幼少の時から生薬と縁が深かった。その頃の思い出として印象に残っているエピソードを大事にされている。
「小学校に入る前でした。親父と散策中に、この植物を口に入れてみろと言われ、含んでみたら苦いのなんの、ものすごく苦かった。その時なんでこんな意地悪をするんだと子供心に思ったのですが、この苦みが胃腸にいいんだ、と教えてくれました」にがきの苦さを教わったことが端緒になり、明治薬科大学、東北大学で生薬学徒としての道に進まれ、半世紀を過ぎた今、母校の理事長として後進の育成に取り組まれている。
生薬の研究に勤しんだ中で忘れられないのが、正倉院薬物調査の一員としての活動。平成6年(1994)から7年に宮内庁の委嘱を受けて正倉院第二次調査に携わられた。この時の顔ぶれは柴田承二、相見則朗、小島正夫、水野瑞夫、難波恒雄、米田該典、そして、奥山徹の七氏で、今やそれぞれ生薬学の重鎮として名を成されている。
●病気知らず、風邪ひかず
今年は2月に後期高齢者75歳を迎えるが、これまで病気をしたこともなく、風邪もひかないそうだ。東北大学の院生の時、クラス対抗のテニスの試合でアキレス腱を切り入院したことがあるものの、それ以外、病院とは年に一回の検査の他は縁がなく、健康そのものの日々を送っている。●プールで足がつったら芍薬甘草湯
健康の秘訣の第一は、昔ながらのというよりも、先人の知恵とでも言うべく早寝早起き。夜は10時前に床に入り、朝は5時に床を出る。意識的にとっているのが医者いらずとされるリンゴと蜜柑、この2つを皮ごとと明日葉をジューサーでブレンドし、ヨーグルトを入れて毎朝欠かさず食している。食べ物に好き嫌いはなく、殊に果物、野菜を好み、酒も日本酒を中心に、焼酎、ワインなどを欠かさない。
「若いころはよく飲みました。最近はほどほどです」。
元気の源として見逃せないのが内助の功だ。
「ワイフ自慢になるかもしれませんが、旬の物を活用して手作りの料理を手早く、食卓に出してくれます。しかも伝統行事に則り、例えば冬には七草、春にはヨモギ、つくし、冬至には小豆カボチャなど、季節ごとに自然の恵みを素材に作ってくれるので、ありがたい限りです」
運動としては1日5千歩の歩数を課し、週に一度、自宅近くのフィットネスクラブで泳いでいる。普段は薬に頼ることもないが、「プールで脚がつった際には最適です」と芍薬甘草湯を愛用されている。
プロフィール
昭和19年(1944) 2月29日、山形県東根市生まれ。1967年、明治薬科大学卒業。1975年、東北大学大学院修了薬学博士。1986年、明治薬科大学生薬学教授(天然薬物学に名称変更)、平成21年(2009)、名誉教授、2015年、理事長就任。