102号 (第34巻 第3号)2018年1月
厚労省 医薬・生活衛生局長 宮本 真司 |
謹んで新年の御祝辞を申し上げます。
年頭に当たり、今年の医薬品、医療機器、再生医療等製品の行政を展望し、所感を述べさせていただきます。
まず、昨年の特別国会において、C 型肝炎救済特別措置法が改正され、給付金の請求期限が5年間延長されました。特定フィブリノゲン製剤等によるC 型肝炎ウイルス感染被害者の早期救済を図るため、厚生労働省としては、医療機関に対し、医療記録からの投与事実の確認や、確認された方へのお知らせと肝炎ウイルス検査の受検勧奨を行うよう促すとともに、本法の内容の周知に努めてまいります。
次に、少子高齢化の進行、再生医療・AI等の科学技術の進歩、国際化の進展など、行政を取り巻く環境も変化している中、国民の皆様に有効かつ安全な医薬品、医療機器、再生医療等製品をできる限り早くお届けするため、承認審査等を行う独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の機能の強化をはじめ、様々な施策を進めてまいります。
特に、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で著明な有効性が見込まれる画期的な医薬品、医療機器、再生医療等製品の、審査期間を通常の半分にするなど、各種支援により早期の実用化を目指す「先駆け審査指定制度」について、昨年3回目の募集を実施しました。また、昨年医薬品と医療機器の承認において「条件付き早期承認制度」を導入いたしました。こうした制度を活用して、革新的な医薬品・医療機器等の早期実用化を推進してまいります。
一方、革新的な医薬品の中には、有効性の発現の仕方、副作用の種類や頻度が既存の医薬品と大きく異なるものがあります。そのような医薬品については、有効性および安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間、その医薬品の恩恵を強く受けることが期待される患者に対し、副作用が発現した際に対応が可能な医療機関でのみ使用を認めるなど、医薬品の最適な使用を推進することが重要です。こうした観点から、最適使用推進ガイドラインを作成し、医療現場での普及に努めてまいります。
また、これまで医療情報データベースシステム「MID-NET」の構築を進めてまいりましたが、平成30年度から本格運用を開始し、製薬企業やアカデミアの方にも薬剤疫学解析などに活用していただけるようになります。また、本年4月に改正GPSP 省令が施行され、製造販売後調査の一類型として「製造販売後データベース調査」が位置づけられることとなります。大規模な医療情報の活用により、医薬品等の安全対策の高度化と効率化をさらに推進してまいります。
国際的な取組に目を向けますと、昨年10月には、日本、米国、EU、中国等の世界29か国の薬事規制当局の責任者が集まる「薬事規制当局サミット」が京都市で開催され、日本が初めて主催しました。本サミットでは、再生医療等製品に関する国際的な規制調和の推進等が合意されたことから、各国と連携しながら、合意事項の実現に向けて、さらなる国際協力を進めてまいります。
また、近年の国際化の進展に対処するために「国際薬事規制調和戦略」を策定しており、これを着実に実施してまいります。PMDAに設置したアジア医薬品・医療機器トレーニングセンターでは、国内外でアジア等の規制当局を対象とした医薬品・医療機器の規制に関する研修を実施しています。昨年は一昨年を大きく上回る数の参加者が集まる等、海外からの評価が高まっていますが、本年はさらに、対象国をアジアから新興国に広げるなど、その活動を充実強化してまいります。
本年は、医薬品規制調和国際会議(ICH)等を日本で開催する予定であり、引き続き、国際規制調和において主導的な役割を果たしてまいります。
地域で暮らす方々が医薬品等を適切に使用いただく環境づくりも重要です。薬物療法における有効性や安全性の確保や、地域住民による主体的な健康の維持、増進に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局が、地域包括ケアシステムにおいて医療機関等と連携しつつ、在宅医療・介護の一翼を担っていくよう、薬局、薬剤師のあるべき姿の実現を図ってまいります。
また、現在、日本の少子化により、献血可能な人口が減少しています。そのような中でも、将来にわたり血液製剤の安定供給を確保すべく、特に若年層への普及啓発活動の強化等、献血の推進に取り組んでまいります。
違法薬物対策にも力を入れていく必要があります。覚醒剤事案については、検挙者に占める再乱用者の割合が近年は六割を超えており、再犯防止の取り組みも行ってまいります。また、大麻事犯については、インターネット上で「タバコよりも危険ではない」等の誤った情報が流布されており、これに影響を受ける、特に若年層に乱用が広がっている傾向が見られます。そのため若者向けの薬物乱用防止の啓発に更に力を入れるとともに、取締を徹底してまいります。
また、薬物乱用対策推進会議において、政府全体での薬物に対する強力な取締り、広報啓発その他総合的かつ積極的な施策を推進するため、本年夏までに、次期計画である「第五次薬物乱用防止五か年戦略」をとりまとめます。
今後とも、国民の皆様に有効かつ安全な医薬品、医療機器、再生医療等製品をできる限り早くお届けするという責務を果たすとともに、平成25年の医薬品医療機器法改正法に定められた検討規定に基づき、制度の見直しを進めてまいります。このような取組に向け、関係者の皆様とも、透明性のある率直な意見交換等を行いながら、施策を進めてまいりたいと考えています。
皆様の医薬品・医療機器行政に対する一層の御理解と御協力をお願い申し上げますとともに、皆様方のますますの御発展と御多幸をお祈りいたしまして、新年の御挨拶といたします。
日本漢方生薬製剤協会 会長 加藤 照和 |
新年おめでとうございます。
昨年を振り返ってみますと、2月に「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」のフォーラムが開催され、3月には6つの提言内容を中心とした同研究会の提言書が公表されました。
この提言内容を踏まえ、5月の日漢協総会にて、新たな『中長期事業計画2017(5カ年計画)』の策定、活動をスタートした、日漢協にとりまして、極めて大きな変革の年であったと認識しております。
◆提言書への取り組み
研究会の6つの提言である、「漢方製剤等の必要性」「研究の推進」「品質確保と安定供給に向けた取り組み」「医療保険制度における位置づけ」「海外展開の推進」そして「産官学・国民との連携」について、迅速かつ着実に実行するため、日漢協として組織横断的な「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト」を設置し、漢方を取り巻く課題解決を図るべく鋭意活動しております。日本東洋医学会においても「提言書検討委員会」を設置いただいており、双方が連携を取り、事業を推進しているところであります。いずれも、国民の健康と医療に貢献するとともに、漢方の持続的な発展を目的として取り組んでおります。◆研究会2017の開催
去る12月12日には、漢方の新たな展開と研究の進捗の発表のため「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2017」を開催いたしました。がん支持療法においては、手術後の合併症である「麻痺性イレウス」「術後肝不全」「食欲不振」に対して、漢方薬の新たな薬効やバイオマーカーが明らかになりつつあるという報告がありました。支持療法だけではなく、肝臓における発がんおよび進展の予防という直接的な作用の基礎研究成果の報告もありました。また、高齢者医療においては、認知症に伴う周辺症状、睡眠薬による転倒や健忘などの例が挙げられ、漢方薬治療の副作用軽減は患者さんにやさしい医療の構築に加えて、介護者の負担軽減にもつながるという報告がありました。さらに漢方製剤の剤形追加については、多成分系の生物学的同等性の評価に関する研究が進んでおり、2018年度から剤形変更に関する承認申請ガイドラインの策定に入るという報告がありました。そして、医療ビッグデータを用いた漢方薬の臨床研究・医療経済研究の追加報告もあり、漢方薬の費用対効果については、他の医薬品では少ないCost-saving つまり、健康アウトカムを改善し、医療費も減少させるという高評価でありました。このように、提言書発表後、一歩も二歩も進展している状況に感謝するとともに、日漢協といたしましても、先にお話ししましたプロジェクト活動にさらに注力してまいります。◆原料生薬の国内栽培推進
『中長期事業計画2017(5カ年計画)』における重要かつ会員会社全てに共通する課題は「原料生薬の安定確保」特に、国内栽培です。日漢協は、厚生労働省および農林水産省と共同で、2013年度から「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を開催し、国内栽培化を推進してまいりました。2016年度からは、全国農業改良普及支援協会と薬用作物産地支援協議会を設立し「薬用作物の産地化に向けた地域相談会」として全国8地域で継続開催しています。2017年度は、前年度までの参加者の要望を踏まえて、日本産と中国産の原料生薬購入価格等の調査結果を提示しました。中国産の価格高騰が進むなか、品目数は少ないものの、日本産が価格的に優位な生薬もあります。価格と品質が同等であった場合、資源枯渇の可能性や輸出規制上のリスク回避、中国だけに頼らない資源開発が必要などの理由から、多くの企業が栽培可能な日本産生薬の購入および増産を希望していることがわかりました。
2017年度は生産者からの薬用作物生産拡大に関する要望票の提出を締め切ったところです。2016年度までの4 年間で、36の団体・個人と折衝が成立し、折衝品目は計41品目に上っておりますが、試作栽培まで進んでいるのは2件という状況です。
会員会社の薬用作物栽培事業の成功例であります熊本県での取り組みを見てみますと、自治体の理解と支援が整っていること、熱心なリーダーが組織を束ね、栽培加工の指導者がいること、そして加工設備建設の補助が受けられることなどが組み合わさっているという現状があります。
国産化の推進には生産者の組織化の後押し、そして設備投資の援助などが必須です。企業側も種苗の提供や栽培指導などの努力をしておりますが、生産者に対する何らかのサポートが無ければ国内栽培の拡大は困難であります。関係される皆様には、こうした現状をご理解いただき、課題解決に向けてお力添えをお願いしたいと思います。
◆生薬が基礎的医薬品に
さて、今年は診療報酬改定の年です。日漢協として薬価改定ならびに薬価算定ルールの見直しに係る意見として「医療用漢方製剤・生薬製剤の基礎的医薬品への適用」と「生薬の不採算品再算定の実施」を要望し、この1年活動してまいりました。今回、薬価制度の抜本改革における基礎的医薬品の対象薬効分類に生薬(刻み生薬)が新たに追加されました。しかしながら、価格が高騰している同じ生薬を原料とする漢方製剤・生薬製剤も基礎的な医薬品に位置づけ貢献し続けなければなりません。高品質な「医療用漢方製剤・生薬製剤」を患者さんの治療のため、継続的に安定供給する必要があります。現行の不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度として位置づけられている基礎的医薬品に適用されるよう、引き続き粘り強く要望してまいります。この面におきましても、皆様のご理解とご支援を賜りたくお願い申し上げます。
冒頭申し上げましたように、国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会の提言書を踏まえ、『中長期事業計画2017(5ヵ年計画)』に沿って、様々な課題解決に向け、スピード感をもって取り組んでいく。これがこの一年の計であります。医療用・一般用漢方製剤、生薬製剤、生薬ならびに原薬エキスを通じて、国民医療に貢献し、漢方のさらなる発展に寄与して参る所存でございます。あらためまして、皆様方の変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 流通適正化部会
- 教育研修部会
- 「MR漢方教本Ⅰ」の改訂について
当初MR漢方教本Ⅰの改訂については、アンケートにより是非や要望などを調査する予定であった。しかし、日漢協として一般的な漢方医学教育に使用可能なオリジナル教材を準備、提案できるようにすることが必要ではないかと考え、制作を進めることとした。
会員企業での教育教材として利用できるだけでなく、医育機関においても使用できる内容を目指す。
既存のMR漢方教本Ⅰの改訂ではなく、オリジナルで作り直す。
印刷物の冊子ではなく、実質の教育に使えるようなパワーポイントで制作する。 - 研修会の実施
1) 10月5日(木)、安全性委員会の杉山泰哲氏を講師に迎え「医薬品安全対策をめぐる最近の話題」について講義を実施した。(内容:市販後安全対策、添付文書記載要領改訂に伴う注意点、高齢者・妊婦・授乳婦・小児の医薬品適正使用、重篤副作用新刊別対応マニュアルについて)
2) 12月6日(木)は、「生薬の安定供給に関わる研修」をテーマに開催した。 - 有用性研究部会
- 日本東洋医学会EBM 委員会への協力としての「漢方治療エビデンスレポート」作成は、EKAT 2016への全面改訂を年明け頃に実施予定。追補版EKAT Appendix2017は、RCT 論文の構造化抄録作成を、アブストラクターの先生方に依頼中。今年度中の公開を目指す。
- 日本東洋医学会EBM委員会への協力作業「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」の調査まとめは、KCPG 2016を10/31に公開。追補版KCPG Appendix 2017 は、今年度中に公開予定。また、2017/4/1~11/1までに発行された診療ガイドラインの調査も終了し、今後公開に向け、結果を整理中。
「日漢協コード・オブ・プラクティス」の改定に当たり、部会内にコード改定プロジェクトを立ち上げ改定作業を行い、11月1日に施行・実施した。改定した「日漢協コード・オブ・プラクティス」を、日漢協ホームページ上に更新し、掲載した。
厚生労働省監視指導・麻薬対策課が行った平成28年度の広告活動監視モニター制度報告書の内容を共有するとともに、会員会社へは適切な資材作成は基より適切なプロモーション活動をするように依頼した。11月のコード理解促進月間では、日漢協コードの改定に合わせて「コード理解促進の再徹底」をテーマに実施した。
生薬会議
生薬委員会 委員長 白鳥 誠(株式会社ウチダ和漢薬)
- 「平成29年度 薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」について
- 「第5回原料生薬使用量等調査」について
農林水産省の平成29年度補助事業である「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」における「薬用作物産地支援体制整備事業」を活用し、「平成29年度 薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」(地域説明会および相談会)を、9/13(水)北海道・札幌の開催を皮切りに全国8地域で開催し、11/30(木)北陸・金沢の開催をもって終了した。
この地域説明会および相談会は、国内産生薬の生産拡大および推進を目指し、生産者への薬用作物に関する情報提供、情報共有、そして情報交換の場として、さらに生産者と実需者のマッチングを後押しすることを目的としたものである。
今年度の地域説明会および相談会は、昨年度と同様に2部制で開催した。すなわち、第1部では農林水産省、厚生労働省、そして国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センターにご協力いただき、それぞれの立場から薬用作物に関する情報を提供していただき、詳細なご説明をいただいた。当協会は、特にこれまで生薬の国内生産の推進・拡大を妨げている要因の一つとして、取引価格帯や実需者が求めている日本産生薬の品目が不明瞭であることが挙げられていたことを踏まえ、会員会社を対象に「日本産および中国産における原料生薬の価格等調査」を実施し、その結果を薬用作物の栽培等に取り組む方々に活用していただくため、本会で公表し好評をいただいた。一方、第2部では事前に申し込まれた方々を対象とし、個別に具体的な相談会を実施した。
9/13北海道・札幌での地域説明会 |
個別相談会の様子 |
10/17関東・さいたまでの地域説明会 |
当協会会員会社を対象に実施した「第5回原料生薬使用量等調査(平成27年度および28年度の使用量)」の集計結果について、平成20年度から26年度の過去の調査データを含めて、精査を全て終了した。第1回から第4回までの調査結果と同様に、報告書(冊子)の作成に向けて鋭意作業を進めている。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 長島 義昌(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- 平成29年7月28日(金)・10月31日(水)開催
- ・各部会からの活動報告
- ・局外生規ワーキンググループ活動報告
- ・漢方将来ビジョンプロジェクト会議の一般用委員会の参画・活動内容ついて
- ・来年度全体会議の開催方法について
- ・10月12日開催、日漢協主催「市民公開漢方セミナー」に於ける製品空箱展示
- ・一般薬連:セルフメディケーション推進タスクフォース活動について
- ・その他連絡事項
- 処方部会
- 漢方処方ソフトについて
- ・ソフトの概要と操作方法について説明
- ・部会での検討に積極的に使用
- 新規追加候補処方の検討
- ・漢方処方検索用文献について各社より推薦いただき、多い文献を優先検索文献とする。
- ・新規追加処方候補の16処方について検討する。検討結果は処方シートを作成し、情報共有する。
- 適正使用推進部会
- 確認票「日本漢方生薬製剤協会による主な商品例」のメンテナンス
- ・各社からの修正(追加・削除)内容をとりまとめ、イラスト化原稿を国立衛研に提出
- ・今後は定期的(年1回)にメンテナンスを行う
- 「Information sheet」作成について
- ・平成29年度スケジュールの確認、進捗状況確認
- ・作成上の問題点・課題を抽出し、各項目につき検討
- その他連絡事項、トピックス等
- ・連絡事項、トピックス紹介、共有化
- その他
- 処方部会9月10日 日本薬科大学「漢方アロマコース」*
*文部科学大臣認定「職業実践力育成プログラム」。2016年4月から開催されており、漢方に加えて幅広い補完医療の現状を体系的に学ぶことができる。 - 「OTC漢方」と題し、「漢方医学の特徴」「漢方医学と西洋医学の違い」「特に漢方治療が有効な症候」について説明。気・血・水の虚・実病態別に、代表処方を紹介。
OTC漢方薬の特性として、処方数の多さ、エキス量の違い等について説明を行った。 - 10月12日 市民公開漢方セミナー「漢方で改善!! 働く女性の健康管理」:
- ・各社より提供いただいた、テーマにちなんだ婦人関連処方の製品箱の陳列及び受講者からの問い合わせ対応を行った。
- 日薬連―セルフメディケーション推進タスクフォース
- ・過去の主要活動事項、現状の問題点の確認を行った。
申告システムの難しさ、また税制についての店舗からの説明の少なさが指摘されている。申告システムの簡素化が検討され、実施される予定。 - ・第3回生活者アンケートが実施された。消費者の税制への認知度、利用意向、店舗の説明割合はいずれもアップしている。
- ・当面のゴール、最終的なゴール、今後の施策についての確認が行われた。
- 局外生規作成WG
- ・局外生規2018に向け、WG を開催し検討を行っている。未収載生薬の収載並びに既収載生薬の見直しを更に推進する。
- ・検討品目は2015版からの検討継続品目及び日漢協内で収載要望が出された品目から選定。ガジュツ末、ジョテイシ、ハンピ、メリロートエキス、ロクジョウについて案が出され検討を行った。
- ・単味生薬エキス検討班から8品目について案が出され、チョウトウコウエキス、イカリソウエキス、オウヒエキスの規格検討を優先することとなった。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
生薬製剤の活性化を目標に、その範囲拡大と開発環境の整備について検討を進めており、「当帰川芎製剤(実母散等) 承認基準(案)」と、その提案資料を取りまとめてきた。引き続き、制度研究部会では当帰川芎製剤 承認基準(案)における生薬の組合せについて、生薬製剤の承認前例や既存承認基準の情報を基にマトリクス表に整理し、その約8割が網羅されていることを見い出し、本承認基準(案) 提案資料への追加を検討している。製剤開発部会では、本承認基準(案)への新たな収載候補として30生薬を選定し、これらの基礎情報を取りまとめており、さらに専門医等からの見解が得られないか検討している。
ここで、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬基盤推進研究事業の官民共同研究の1つとして、今年度から国立衛研袴塚高志生薬部長を代表研究者とする「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究」が取り組まれることとなり、第1回の研究班会議が8月18日に開催された。新たに始まった共同研究からの学びを生かしながら、引き続き、生薬製剤の活性化に向けて取り組んでいきたいと考えている。
6月17日に幹事会メンバーで、佐賀県玄海町の薬用植物栽培研究所を視察した。九州大学等と進めているカンゾウの栽培研究などの取り組みに関してご説明いただくとともに、長崎国際大学薬学部正山征洋先生が設計された薬草園をご案内いただき、知見を深めることができた。
生薬製剤の活性化を目標に、その範囲拡大と開発環境の整備について検討を進めており、「当帰川芎製剤(実母散等) 承認基準(案)」と、その提案資料を取りまとめてきた。制度研究部会では、本承認基準(案)への収載生薬を53生薬から93生薬に拡大して、それらの全ての組合せ4,278通りについて、一般用の承認前例や承認基準の情報を基にマトリクス表に整理するとともに、効能効果の読み替えのエビデンスを再整備している。製剤開発部会では、93生薬の公定規格(確認試験、定量法等)、一般用漢方製剤などの承認基準における収載状況や用量について調査している。
ここで、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬基盤推進研究事業の官民共同研究「配合生薬エキス製剤の実用化推進に資する品質評価技術基盤の開発研究」(代表研究者:国立衛研袴塚高志生薬部長)の第2回の研究班会議が11月8日に開催され、承認基準原案に収載する生薬の選定準備、効能効果の根拠資料の整備、製剤の品質確保のための試験等の検討が進められている。
漢方生薬製剤等の啓発活動の一環として、10月12日の日漢協「第20 回 市民公開漢方セミナー/四谷区民ホール」および11月21日の北里大学 東洋医学総合研究所「漢方フェア2017~漢方をもっと身近に感じてみよう!/日本科学未来館」において、一般用漢方製剤委員会や広報委員会と協働し、当委員会参加企業など16社の92製品を展示し、一般の来場者などに興味を持って見ていただいた。
市民公開漢方セミナー(2017/10/12)での展示 |
漢方フェア2017(2017/11/21)での展示 |
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 日局カンゾウエキス等の改正案 日局キキョウ流エキスの改正に引き続き、日局カンゾウエキスおよびカンゾウ粗エキスの製法の改正案について検討を行った。改正案の主眼はいずれも製法の項に工業的製法を追記することであるが、原料生薬の切度や加熱条件等について詳細な検討を行った。またカンゾウエキスについては、現行記載の製法(薬局製剤用)と工業的製法により製したエキスの比較を行い、その比較データを添付して平成29年10月31日の生薬等B 委員会に提案した。審議の結果、一部文言の修正はあったが、両エキスの改正案が了承され、平成30年3月に意見公募されることになった。両エキスはキキョウ流エキスとともに、日局17第二追補(平成31年4月施行予定)で改正される。
- 局外生規2018 平成29年5月25日に国立衛研を中心に、日漢協など関連団体が参加して局外生規2018作成WG(以下、作成WG)が設置された。その後都合4回の作成WGが開催され、既収載品目の修正案と新規収載品目の収載案が検討された。
本年度第3~5回原薬エキス委員会を、8月30日、10月25日および12月6日に開催した。この間は主として日局カンゾウエキスおよびカンゾウ粗エキスの改正案、また局外生規2018で収載予定の単味生薬エキスなどについて検討を行った。
局外生規2018の特徴は、AMED研究の1つである単味生薬班で検討されてきた単味生薬エキスの収載である。単味生薬班からは、単味生薬エキス8品目の新規収載要望があったが、当委員会で実施した調査結果などが勘案され、イカリソウエキス、ショウキョウエキスおよびチョウトウコウエキスの3品目が優先収載品目とされた。これら3品目の収載案は、いずれも水製乾燥エキスであり、当委員会参加会社が保有する出荷時データや収載原案の追試験の結果をもとに、現在作成WGで規格案が検討されている。第5回作成WGは本年1月下旬に予定されている。
また、作成WGとは別に、9月22日に医薬品審査管理課が主催して第1回局外生規検討会(以下、検討会)が開催された。検討会は局外生規に関する意思決定の場であり、国立衛研や大学から7名の専門委員が招聘され、業界代表は参考人として複数名が参加している。なお、当委員会からは佐々木委員長が参加した。
検討会では、まず座長に国立衛研生薬部長の袴塚生薬先生が選任された。そして局外生規2018の基本方針等が確認され、その後作成WGで案が固まった具体的な品目の収載案が審議された。
生薬関係は割愛するが、エキス関係では、既収載のアカメガシワエキスおよびウラジロガシエキスの修正案が了承された。また、イカリソウエキスなど3品目を新規収載候補品目とすることが了承され、次回それぞれの収載案を提示することになった。
第2回検討会は本年2月7日に開催される。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
コード審査会では、平成29年製品情報概要等の広告審査を昨年同様に行うべく、会員会社へ審査資材の提供を依頼した。11月より製品情報概要実務部会で製品情報概要、広告等の審査を開始した。
保険薬価協議会
委員長 丸木 希望(株式会社ツムラ)
保険薬価協議会は、9月12日、10月10日、11月14日、12月1日、12月6日、12月22日に会議を開催した。
8月31日に全国健康保険協会および日本経済団体連合会、9月7日に日本労働組合総連合会の中医協委員等と面談し、医療用漢方製剤等の医療保険制度における位置付け等に関して説明し、ご理解を深めていただいた。
9月21日、11月7日、11月27日、12月5日に、厚労省医政局経済課を訪問し、医療用漢方製剤・生薬製剤の基礎的医薬品への適用に関し、日漢協の考えを説明し意見交換を行う等、対応方を協議した。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 坂上 誠(株式会社ツムラ)
漢方将来ビジョンプロジェクトは、9月5日、10月17日、11月21日、12月7日にプロジェクト会議を開催した。
主たる議題は、「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2017」の準備と運営に関する討議・情報共有および漢方の将来ビジョンプロジェクト各チームにおける工程表等の活動に関する検討・報告である。
12月12日に開催された「国民の健康と医療を担う漢方将来ビジョン研究会2017」では、「がん支持療法」「高齢者医療」「承認申請ガイドライン」および「追加報告」のテーマで、各講師の先生にご講演をいただいた。その後、本研究会にご参加いただいた全ての先生によるディスカッションが行われた。運営は、漢方将来ビジョンプロジェクト各チームメンバー、事務局の協力を得て無事終了した。なお、研究会終了後の「報道関係者会見」はプロジェクト内の啓発・アウトリーチチームが担当した。
9月15日及び11月17日に開かれた正副会長会、理事会において、12月12日開催の「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2017」の準備状況について報告した。
総務委員会
委員長 菅沢 邦彦(株式会社ツムラ)
- 日漢協の委員会活動の活性化を図るため、総務・広報・国際委員会の現状と課題等について取りまとめを行い、今後の対応について検討した。
- 日漢協の事業拡大と安全性の確保等、環境の変化に伴う事務環境の改善について、事務所の移転を含めた検討を行った。
- コンプライアンス体制の充実に向けた対応策の構築について 日漢協のコンプライアンス体制の充実に向けた対応策の構築を図るため、コンプライアンスの実態調査を行った。
- 平成30年に開催する講演会の取組みについて検討した。 3月、7月、10月の3回開催を予定している。
国際委員会
委員長 諸田 隆(株式会社ツムラ)
第2回日中薬局方(生薬等)検討会が11月26日(日)に開催され、国立衛研生薬部長の袴塚高志先生を生薬等に関係する業界団体と共にサポートし、日中両国の局方に係る先生方の情報交換が成功裏に進んだ。内容としては、①両国薬局方における原案審議に関わる組織の構成、②両国薬局方における原案審議に関わる具体的課程、③両国薬局方における最近の話題であった。
中国から派生した伝統薬に関する国際標準化を議論する専門委員会(ISO/TC249)の生薬に関わるワーキンググループ(WG1)の会議が中国・マカオで11月27日に開催された。会議には、日本をはじめ、中国、韓国、ドイツなどから参加があり、生薬原料に係る新たな標準書案について議論が行われた。当協会からも1名(浅間委員)が参加し、業界の要望を反映すべく検討に加わった。
技術委員会
委員長 松本 和弘(株式会社ツムラ)
漢方処方エキスの日局収載については、日局17第一追補が昨年12月1日に告示され、五苓散エキスが新規収載された。これにより、漢方処方エキスは合計で34品目が収載された。現在日局17第二追補で新規収載すべく、呉茱萸湯エキスについて鋭意検討中である。また日局18に向け、優先処方として白虎加人参湯、温清飲、辛夷清肺湯および麻黄附子細辛湯4処方のエキスを選定し、確認試験や定量法などについて検討を開始した。
昨年6月、日漢協の残留農薬に関する自主基準に基づく農薬試験の実施状況等について、アンケート調査を実施した。会員会社66社中60社から回答が得られ、現在集計中である。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規及び関係通知の調査研究、関係行政機関及び諸団体との連絡並びに意見具申を基本に活動している。
- 一般用生薬製剤(煎剤等)の地方委任についての意見募集 平成29年10月20日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令第80条第2項第5号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬品の種類等の一部を改正する件(案)について」に関する意見募集が行われた(平成29年10月20日(金)から平成29年11月18日(土)まで)。都道府県知事が製造販売に関する承認を行う医薬品の種類として19品目が示された。適用期日:平成30年4月1日(予定)
- 医薬品の偽造品流通防止のための省令改正 平成29年10月5日付け厚生労働省令、医薬・生活衛生局長通知が発出され、偽造医薬品の流通防止のために直ちに対応を行うべき事項に関して所要の措置が講じられた。
- 医薬品等適正広告基準の見直しについて 平成29年9月29日付け薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知「医薬品等適正広告基準の改正について」、平成29年9月29日付け薬生監麻発0929第5号監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」が発出され、医薬品等適正広告基準の見直し、留意事項が示された。
- オンジ製剤の広告等における取扱いについて 平成29年10月31日付け事務連絡(医薬品審査管理課、監視指導・麻薬対策課)「オンジ製剤の広告等における取扱いについて」が発出され、効能又は効果、広告表現について留意点が示され、認知症の治療又は予防に用いる医薬品ではない旨の記載の付記または標榜を必ず行うこととされた。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
- 医療用医薬品添付文書新記載要領について
- 一般用生薬製剤の添付文書等記載事項について
新記載要領については、7月に医薬安全対策課へ小柴胡湯モデル(案)および確認事項を提出したところである。今後は、医療用の漢方製剤および刻み生薬についてもモデル(案)作成に向けて準備している。また、刻み生薬の記載内容については生薬委員会、および日本生薬連合会と連携して作成する必要があるため情報共有を図っている。
また、新記載要領に対応した添付文書のXMLファイル作成について、検証のためのパイロットテストが実施され、漢方製剤や生薬製剤でシステムが正常に処理されるかを確認する予定である。
「一般用生薬製剤の添付文書等に記載する使用上の注意(案)に関する意見募集について」(平成29年6月26日付)の題でパブコメ募集され、安全性委員会では何点かの意見を提出して結果を待っているところである。一方、「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」(平成27年12月25日付)に基づくエキス製剤の添付文書等記載事項については、各社で記載内容が異なっているため、安全性委員会内で検討を開始した。その後、「オンジ製剤の広告等における取扱いについて」(平成29年10月31日付)発出に合わせてオンジ、ケイヒ末、コンズランゴ流エキス、ベラドンナエキスについての運用を取り決め、日薬連安全性委員会に報告した。その後、日薬連より【『生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて』に記載のある単味生薬エキス製剤の添付文書等記載事項の運用について】(平成29年11月8日付)が出され、加盟団体に周知されたところである。
広報委員会
委員長 鈴木 登(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(平成29年9月~12月)
- 1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 12件
- 2)一般用ホームページ新規掲載事項 14件(トピックス10件)
- 3)電話対応 10件
- 4)漢方啓発セミナー
- 第20回日漢協市民公開漢方セミナー
10月12日 開催
参加者 197名(うち、報道関係 9名) - マスコミへの対応
- 1)9月から12月にかけて5件対応
- 原料生薬の国内栽培および地域相談会(日本経済新聞)
- 記事化のリサーチ(共同通信、美容経済新聞社)
- 2)「平成29年度薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」取材対応
- 9月13日 札幌会場 4社
- 10月13日 さいたま会場 3社
- 11月9日 京都会場 1社
- 3)「国民尾健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2017」会見対応
- 12月12日 アルカディア市ヶ谷 12社
- 制作物
- 1)『ニューズレターNo.101』を発刊
- 2)『日漢協ガイド2017』を発行
- ホームページ企画部会活動
- 1)日漢協HPにトピックス11件(公式HP10件)記事掲載
- 2)日漢協HPリニューアル検討
- その他
- 日漢協関連記事・番組およびHP更新などについて、事務局を通じて会員会社の窓口担当者に32件の情報提供を実施した。
新任委員長ご挨拶
国際委員会委員長
諸田 隆
この度、国際委員長を仰せつかりました諸田 隆でございます。
国際委員会の活動は今更ご説明するまでもありませんが、原料生薬の安定確保を目指した日中友好関係の維持、日局委員会の海外交流支援、ISO/TC249を中心とした国際標準化への参画を大きな柱として活動をしております。ISO/TC249に対しては、国際対応WGを軸に各委員会から5名のエキスパートを派遣し、中国から多数提出される新規案件に対して、業界に不利益な標準化が盛り込まれないように監視の目を光らせております。国際委員会は人数的にも少なく、なかなか十分な活動もできませんが、会員各位のお力をお借りしながら、期待される役割を果たしていきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 天然物化学研究室 田中 隆 教授
教科書に新しいページを加える基礎研究
日本の近代医学・薬学誕生の地
長崎大学の歴史は江戸時代の安政4年(1857)11月12日、長崎奉行所西役所でオランダ軍医ポンぺ・ファン・メールデルフォールトが近代西洋医学の講義を開始した日から始まり、昨年、創立160周年を迎えています。この間、同大学は昭和20年(1945)8月9日、米軍の原子爆弾の投下により校舎は破壊しつくされ、瞬時に979名の学生、教職員が犠牲となる悲劇に遭遇するなど幾多の変遷を経て今日に至っています。こうした歴史は以下の大学の理念にも反映され、何よりも平和の希求を目指しています。
「長崎大学は,長崎に根づく伝統的文化を継承しつつ,豊かな心を育み,地球の平和を支える科学を創造することによって,社会の調和的発展に貢献する」
現在、多文化社会、教育、経済、医、歯、薬、工、環境、水産の9学部を擁し、学部生7,421名、院生1,515名、合わせて8,936名の学徒が学び、卒業生は85,000名を超えています。
ヒトの健康をめざして
田中隆教授
長崎大学正門
薬学部棟
その後、第五高等学校医学部薬学科、長崎医学専門学校薬学科、長崎医科大学附属薬学専門部と名称を変え、昭和24年(1949)に新制長崎大学薬学部が発足しました。以来、大学院修士課程、博士課程が加わり、平成14年(2002)に薬学系、医学系、歯学系大学院が統合され、今日の医歯薬学総合研究科となっています。
同学部は6年制課程の薬学科、4年制課程の薬科学科からなり、「ヒトの健康をめざして」をスローガンに臨床薬剤師と創薬研究者の両者の育成を基本方針としています。
薬学生の大きな目標となっているのが平成20年(2008)にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士、昭和26年(1951)の卒業生です。平成22年度から下村脩博士ノーベル化学賞顕彰記念創薬研究教育センターを設立し、学部生、大学院生、若手研究者を対象に創薬科学教育および研究支援を行っています。顕彰記念館もキャンパス内にあり、下村博士の功績をたたえるパネルや論文などが展示され、一般公開されています。
難培養性微生物の開拓と解析
天然物化学研究室は九州大学から赴任された田中隆四代教授の下に准教授、助教、研究員、大学院生8名、学部生14名の26名の陣容で研究に勤しんでいます。生薬学研究室から現在の名称に変わったのは初代の高取治輔、二代河野伸助の両教授に続いて、三代河野功教授の時代でした。同教室には古くから二重分子フラボノイドに関する世界的と言われる研究があり、その後もシキミ由来セスキテルペン類の構造解明などの研究成果が発表されてきた歴史があります。
田中教授が率いる同研究室のテーマは
・植物ポリフェノールの構造と機能に関する化学的研究
・植物二次代謝産物の構造と機能に関する研究
をメインとしています。他にも
・ツバキの新機能活用技術及び高生産性ツバキ林育成技術の開発
・びわ葉と茶葉を原料とした高機能発酵茶の事業化に向けた研究
以上の共同研究に積極的に取り組み、教科書に新しいページを加える基礎研究に余念がありません。
こうした中、政府では、内閣官房副長官を議長とする「「明治150年」関連施策各府省連絡会議」を設け、政府一体となって「明治150年」関連施策を推進しているところです。
「明治150年」関連施策は、大きく3つの柱で推進しています。一つ目は、「明治以降の歩みを次世代に遺す施策」です。デジタルアーカイブ化の推進などにより、明治期の歴史的遺産や明治以降の歩みを未来に遺し、特に次世代を担う若者にこれからの日本を考えてもらう契機としようとするものです。二つ目は、「明治の精神に学び、さらに飛躍する国へ向けた施策」です。例えば、明治期には様々な人物が各方面で活躍されてましたが、時間とともにその記憶が薄れて、一部にしか知られていない方も多いのではないでしょうか。「明治150年」を機に、これらを改めて知る機会を設け、明治期に生きた人々のよりどころとなった精神を捉えることにより、日本の技術や文化といった強みを再認識し、現代に活かすことで、日本の更なる発展を目指す基礎にしようとするものです。三つ目は、「明治150年に向けた機運を高めていく施策」です。内閣官房のホームページなどを通じて情報提供を行うほか、関連する施策や取組に広くお使いいただけるよう、平成29年8月にロゴマークを決定したところです。
「明治150年」関連施策は、明治維新の時期のみを対象とする取組ではありません。維新の時期も含め、明治期全般の様々な取組や人々の活躍などを対象としたものです。今後とも、国だけでなく、地方公共団体や民間も含めて、日本各地で、「明治150年」に関連する多様な取組が推進されるよう、「明治150年」に向けた機運の醸成に努め、広報を中心とした支援を行ってまいります。
「内閣官房「明治150年」関連施策推進室」
詳しくは以下のホームページを御覧下さい。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/meiji150/portal/
私の健康法 帯津三敬病院 帯津良一 名誉院長
酒は天の美禄なり
院内では冬でもサンダル履きで裸足で過ごす。「話すのが苦手で医者になったのですが、今では人一倍話好きになり、年に100回も講演しています」。 |
●医療より癒療
西洋医学から東洋医学へ転ずる例は珍しいことではない。ホリスティック医学の第一人者として知られる帯津先生もその例に漏れず、西洋医学の限界を体感しての転身であった。以来、からだ、こころ、いのちが一体となった人間をまるごとそっくり捉えるホリスティック医学を推進している。医師を志した動機が面白く、ふるっている。昨今、小江戸として人気の川越の商家の長男として生まれたのは戦時体制が濃くなりつつある1936年(昭和11)だった。「母は天性の商人で、逆に父は職人肌で口を利くのが苦手でした。私もどちらかと言えば父親に似ていました。ある時、風邪をひいて耳鼻咽喉科へ行くと、待合室に、〝先生に話しかけないでください〟との張り紙が張ってあるのを見て、医者は話さないで済むのかと思い、医学部を志望しました」
卒業後は患者と話す機会の少ない外科医になった。そこで知ったのが単なる修理工でしかない己自身だった。医療とは何かを考え抜き、医療は癒療であるべきとの思いから、1982年(昭和57)、患者の悲しみに寄り添い万物を敬う癒療の場として帯津三敬病院を設立、今や数多の患者に慕われ、ガン治療のメッカとも言われている。
●朝型で起床は2時半
「60歳を過ぎてから女性にもてるようになりましたね」と相好を崩す。そのバックボーンは健康に他ならない。昨年10月に上梓された『不養生訓』の帯に作家の五木寛之氏が次のように一文を寄せている。「帯津さんは、いつも元気だ。ご自身が生きたエビデンスでいらっしゃる。その言葉に誰もがはげまされることだろう」。この言を待つまでもなく、元気このうえなく、間もなく82歳を迎える現在も第一線で患者に寄り添っている。日々の生活としては典型的な朝型で、9時半に床に就き、2時半に床を離れる。病院へは3時半に出勤し、7時半までの間、依頼原稿の執筆や手紙への返事など個人的な仕事をこなした後、本業に従事している。
●休肝日なく、好きな物を少し食べる
メタボであり、検診の数値も満身創痍ながら休肝日はなく、晩酌を欠かさない。まず缶ビール(350ml)を3本、続いてウイスキーか焼酎のロックを2杯嗜む。おつまみは夏でも湯豆腐を頬張り、旬の刺身と枝豆や谷中生姜なども忘れない。塩分こそ和食の粋である、と朝食には昆布茶、昼食に白飯に筋子、白菜の浅漬けなども好んで食す。貝原益軒の養生訓に倣い、好きな物を少し食べるを旨としている。グラスを傾けながらの女性との語らい、その後のハグもときめきの源泉となっている。
気功歴も40年に及び、直心館道場と名付けた院内の道場で鍛錬に余念がない。「不養生もときめきが伴えば大養生になる」けだし至言である。
プロフィール
1936年(昭11)2月17日埼玉県川越市生まれ。1961年東京大学医学部卒業。医学博士。東京大学病院第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。2001(平13)年、帯津三敬病院名誉院長、2004年、東京・池袋に統合医学の拠点・帯津三敬塾クリニックを開設。
日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長。
著書『代替療法はなぜ効くのか?』『健康問答』『ホリスティック養生訓』など