97号 (第33巻 第1号)2016年5月
第67回日本東洋医学会学術総会 会頭 清水 寛(医療法人東洋病院 理事長/徳島大学医学部 臨床教授) |
第67回日本東洋医学会学術総会を平成28年(2016年)6月3日(金)より5日(日)まで、サンポートホール高松、JRホテルクレメント高松、かがわ国際会議場・展示場の三隣接会場にて開催させて頂くことになりました。
此の度の学術総会のメインテーマは「パラダイムの継承とその未来−多様な漢方に橋をかける−」と致しました。現在漢方医学は、西洋医学との協同研究や結合医療により飛躍的に進化をとげております。アジアのみならず、欧米を中心とした多くの国々で東洋医学が導入、研究されており、今や世界的に浸透しつつある東洋医学の基本を研修し、同時に新しい時代の医療体系の構築に寄与することが今学会の目標となっています。
そこで特別講演を松田邦夫先生に「大塚敬節先生に学ぶ」と題して、佐藤祐造先生には「21世紀の漢方医学:漢方医学における“創薬”を目指す」と題して、桜井弘先生には「東洋医学と無機医薬品〜ヒ素のインパクト」と題して御講演を頂きます。招待講演は、シカゴ大学医学部の中村祐輔教授に「高齢化社会とオバマ大統領Precision Medicine Initiative」と題して、総本山善通寺第五十七世法主真言宗善通寺派管長樫原禅澄氏には「安心を与える」と題して、ミュンヘン工科大学のCarl-Hermann Hempen教授には「Education and practice of Traditional Chinese Medicine in Europe」と題して御講演頂きます。伝統医学臨床シンポジウムでは、歴史からみる日本における東洋医学パラダイムの変遷について、また、国際伝統医学ライブ、日漢学術交流シンポジウムでは、国際的視野から東洋医学について討論が期待されます。
シンポジウムは8題で、傷寒論や鍼灸の再確認と伝統医学の新たな動向について、臨床面では癌や難病難治性疾患等の研究対談を行います。ワークショップは5題で、漢方薬をサイエンスし、基礎医学との関わりを探求し、医学教育における漢方や次世代への橋渡しなどについて考察します。漢方セミナーは12題で、漢方の歴史、素問と霊枢の概説、脈診、舌診や腹診の診察法、方剤の運用法の解説、研修医のための漢方や鍼灸の基礎実習も行います。漢方薬剤師セミナー、医師のための鍼灸セミナーも充実しました。スポンサードセミナー2題、ランチョンセミナー7題、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)との共催の市民公開講座は、第一部は「市民のための漢方シンポジウム」第二部は「山田洋次映画監督の対談」が行われます。日漢協からの多大な御協力を頂きましたことを厚く御礼申し上げます。また、280演題の貴重な研究発表のご応募を頂き、御参加下さった先生方にきっとご満足頂けるご発表内容であることを確信致しております。
本学術総会の開催に当たり、多数の方々の御支援と御協力を賜りましたことを心より厚く御礼申し上げます。6月4日(土)の夜は懇親会を開催致します。情報交換や久しぶりの親交を深めてくつろぎの一時をお過ごし下さい。プログラムと日時等の詳細は、総会ホームページをご参照下さい。
日本漢方生薬製剤協会 副会長 小林 豊 |
世界に先駆けて超高齢社会に突入した今日、我が国独自の伝統薬である漢方生薬製剤への国民的期待は益々高まっております。これもひとえに当協会会員企業の皆様方のご協力・ご支援により発展して来たものと大いに感謝いたしております。
当業界のさらなる発展を目指す我々にとって多くの課題があります。改めて数えあげていきますと、まず生薬および生薬を原料とした最終製品の品質確保、生薬原料の安定確保、一般用漢方生薬製剤の開発と育成、安全性の確保と適正使用の推進、エビデンスデータの蓄積と活用、薬価制度への対応、国際調和と交流等があげられます。これらの一つずつは大変重い課題ですが、必ず克服しなければならない課題でもあり、当協会が一致団結してあたる事が大きな推進力になるものと思います。
一方、このような困難な状況であるからこそ、最終実需者である国民の期待をもっと高めることが我々業界を発展させてくれる一番の牽引力ではないかと考えます。古今人間に新たな病名は生まれても、新たな病気はありません。長い歴史の中で病気という恒常性の乱れを糾すものとして、あるいは恒常性の乱れを未然に防ぐものとして漢方があります。その有用性のエビデンスを整え世に訴えることが医療関係者のみならず国民の漢方への関心を今以上に高めるものと考えています。
2004年、米国では「植物薬ガイダンス」が設定され、外用剤、経口薬が承認され、また伝統薬のいくつかが申請されています。ヨーロッパでも同様のガイドラインで植物製剤が評価されていますが、このような西洋薬のロジックに沿った漢方生薬製剤の再評価とは別に、歴史のうちに蓄積された臨床上の有用性から漢方の有用性を説くような新しい可能性を学ばなければなりません。
また、農林水産省を中心に起案されています薬用植物の国内栽培については原料生薬の安定確保ならびに品質確保の視点からも、高騰を続ける原料価格を安定化させるためにも、その対応策として考えなければなりませんが、原料生薬の大部分を依存する中国関係組織との交流もあわせ考えなければなりません。中国では中成薬の興隆を国策とし(本年2月下旬中国国務院発表「中医薬発展戦略規画綱要(2016〜2030年)」)、2020年までに医薬品産業のうちの30%を中成薬で賄う旨の新聞報道がありましたが、生薬の中国国内需要が高まる中、さらには世界の生薬製剤市場における原料供給基地としての地位が高まる中、ますます強い絆を構築しなければなりません。
当協会を取りまく様々な変化要因に対し、業界拡大のための積極的な攻めの施策を講じ、あわせて基盤の強化に最大限の努力を注入すると同時に、官学のご指導はもとより、健康関心を高める国民の皆様、漢方生薬製剤市場の礎となる栽培者の皆様のさまざまなご意見ご要望を通じて私共の未来が描かれるものと考えております。
会員各社の皆様方に置かれましては今後ともご指導ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
(小林製薬株式会社 代表取締役副会長)
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 平成27年度事業報告、平成28年度事業計画、予算計画を検討・決議した。
- 透明性ガイドライン公開については、2014年度の公開状況の確認、2016年度分から改定される「A.研究費開発費等」の公開方法、および運用モデルとの記載の整合性に関する対応を要請した。
- 流通適正化部会
- 平成27年9月の製薬協「製品情報概要等に関する作成要領」の施行を受け、日漢協でも対応することとした。一部新薬等とは異なる部分もあるため、平成28年1月26日にコード審査会と共に、「医療用漢方製剤・生薬製品情報概要・専門誌(紙)広告作成上の留意点」の改正に向けて検討を開始した。平成28年7月までに一部改定するよう進める。
- 日薬連「バーコード利活用流通検討プロジェクト」から、会員会社製品の販売包装単位での製造番号、有効期限と元梱包単位の商品コード、製造番号、有効期限、数量の対応確認要請を受け、会員会社における現状と今後の予定について意見集約し、同プロジェクトへ提出した。
- 教育研修部会
- 最近の業界動向を踏まえ、「MR漢方教本Ⅱ」第3部「概論 倫理 制度」、第4部「PM」、第5部 「漢方教育研修要綱」について改訂を進めてきた。3月に最終の校正を終え、4月に日漢協会会員HP上に掲載した。
- 有用性研究部会
- 日本東洋医学会EBM委員会協力作業
(1)漢方治療エビデンスレポート
Appendix 2014(英語版)を、12月に公開した。Appendix 2015に掲載する構造化抄録はEBM委員会メンバーに作成依頼し、全30件を終了した。
(2)漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン
2016年版収載の診療ガイドライン先行調査(東邦大メディアセンター収集分)を完了した。
(3)漢方CONSORT声明
漢方のRCT論文の記載を充実させるためサイトとして公開されているKampo-CONSORT Statement (http://kconsort.umin.jp/)に、大杉製薬の自社販売製品、三和生薬の全製品の英訳版添付文書を掲載した。
生薬会議
生薬委員会 委員長 浅間 宏志(株式会社ウチダ和漢薬)
- 平成27年度「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」
- 農水省の平成28年度予算概算決定に伴う対応
- 日漢協版GACP「薬用作物の栽培と採取、加工に関する手引き」の普及
- 原料生薬使用量等調査報告書(4) −平成25年度および26年度の使用量−
- 第3回中国産生薬の使用農薬調査
- 日本薬局方収載生薬の改正要望
平成25~27年度までの3年間にわたって、農水省、厚労省および日漢協の3者共催により進めてきたブロック会議が終了となった。平成27年度のブロック会議の結果により、33道県の生産者から70種の薬用作物に係る74件の要望票の提出があり、生薬国内生産検討班で生産者と実需者とのマッチングに向けた検討が進められている。
平成28年度の農水省の「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」において、これまでの支援事業に加えて「事前相談・マッチング窓口の設置」および「栽培技術指導の確立に向けた支援体制の整備」が新たな方針として示され、これらに対する日漢協の関わり方や方向性などについて検討を進めた。
日漢協版GACP(Good Agricultural and Collection Practices)となる標記手引きを、より多くの方々に活用していただき、薬用作物の栽培、採取および生薬への加工調製における管理のレベルアップなどに役立てていただくようにするため、この程当協会ホームページにQ&Aや専用の問い合わせ先を掲載した。
原料生薬の安定確保に係る基礎資料とするため、第1~3回の調査に引き続いて、第4回の調査(平成25~26年度分)を日漢協加盟会社全社を対象に実施した。現在、集計作業を進めており、調査結果については平成28年度に報告する予定である。
中国の生薬栽培における使用農薬に関する継続調査として、第3回調査はサンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)およびハッカ(薄荷)3品目を同時に調査した。平成27年11月に、調査依頼先である中国医薬保健品股有限公司から報告書(中国語)を入手し、すぐさま翻訳作業に着手した。既に翻訳を終え、次いで冊子作成に向けて作業を進め、本年4月に冊子を発刊した。また平成27年度に、国内に流通している中国産ハッカを用いて、(一財)日本食品分析センターにて残留農薬分析を実施した。現在、分析結果を精査中である。
平成27年1月に実施した第2回改正要望調査結果、新たに38項目の要望があった。平成22年に実施した第1回改正要望調査については、現在までに68項目中48項目が終了しており、そのうちカンゾウの定量法など32項目が日局に反映されている。現在、第1回の残り20項目と第2回とを合わせ、計58項目について技術委員会と連携し検討を進めている。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 西山 隆(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- くすり相談部会
- 事例報告G 相談・苦情への回答・対応の検討
- トピックスG トピックスの収集と共有化を行った。
- 一般用漢方製剤の「相談事例集Q&A第4集」の作成 過去の事例集の質問事項について確認、検討が終了した。検討が必要な事例、集約すべき事例について、全体の把握と確認を行った。
- 処方部会
- 「一般用漢方製剤承認基準処方文献」の整備
- 新210処方の使用促進のための資料作成
- セルフメディケーションハンドブック編集プロジェクト(一般薬連)
- 適正使用推進部会
- Web版「処方鑑別シート・使用者確認票」作成について
- 「使用者確認票」裏面英訳作成について
- セルフメディケーション推進タスクフォース(日薬連)
- 「セルフメディケーション推進税制」の創設
- セルフメディケーション推進プロジェクト(一般薬連)
- HbA1c検体測定症例収集
平成28年1月26日(火)開催
・ 各部会からの活動報告
・ 平成28年度事業方針・計画・予算(案)について
・ 平成28年度活動計画(案)について
・ 国際対応WG報告
・ 「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンス」について
・ セルフメディケーション推進タスクフォースについての状況報告
・ セルフメディケーション実践プロジェクトについての状況報告
・ セルフメディケーションハンドブック編集プロジェクト状況報告
・ その他連絡事項
日漢協保管文献について、リスト表(新210処方手引き文献一覧および処方検討レポートより作成)と照合して保管の有無を確認し、リスト記載の番号順に並べ替え、ファイルを整備する作業を実施した。
便秘と尿疾患に使用する処方について検討した。
平成28年3月30日(水)14:00~17:00に開催され、第2校について内容を検討した。
セルフメディケーション推進税制、検体測定室について、記載を検討した。
国立衛研生薬部の政田さやか先生からご連絡をいただき、平成28年1月20日に訪問を行った。Web版のコンテンツを作成中で、いくつかの確認事項について検討を行った。
市販のインターネットダウンロード型アプリケーションソフトの導入検討を行った。効能のしばり、体力表現等について別途翻訳作業の実施が必要であることを確認した。
①定期健康診断やがん検診などに取り組む個人が支払ったいわゆるスイッチOTC医薬品の購入額が年1万2千円を超える分を、その年の総所得額から控除する。控除の限度額は、10万円、現行の医療費控除との選択適用となる。
②平成29年1月1日施行までの1年間を準備期間として、生活者の認知向上とネット申告促進のための啓発活動を行う。
ゆびさきセルフ測定中
ゆびさきセルフ結果伝達中
平成28年3月18~20日開催の第16回JAPANドラッグストアショーにて、JACDSテーマブースに検体測定室(ゆびさきセルフ測定室)を開設し、約1,200症例の測定・獲得ができた。説明および採血のための薬剤師派遣依頼があり、日漢協として一般用漢方製剤委員長が18、20日の2日間対応した。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
由志園(雲州人蔘ミュージアム)にて
(2015/11/14)
生薬製剤の活性化を目標に、生薬製剤の承認基準の拡大に向けて検討を進めており、「当帰川芎製剤(実母散等) 承認基準(案)」と、その提案資料をとりまとめている。
ここで、新たな生薬を組合せた製剤の開発を可能にするには安全性への配慮が必要と考え、添付文書(使用上の注意)の整備を検討している。当委員会で作成した「使用上の注意(案)」に、安全性委員会からいただいたご意見を適宜反映したものを、本承認基準(案)の提案資料に追記している。
また、本承認基準(案)の行政的な位置づけや今後の進め方について、国立衛研 生薬部長 袴塚高志先生にご指導いただいている。実現に向けては、臨床医を含めた有識者にご参画いただいて検討を進める必要性をご示唆いただくとともに、その準備についてアドバイスいただいた。現在、制度研究部会と製剤開発部会では、配合生薬に関する網羅的な基礎データや「使用上の注意(案)」に係る安全性情報などを収集・整理している。また、千葉大学医学部附属病院 和漢診療科長・診療教授 並木 隆雄 先生に、当帰川芎製剤に関連したレポートの作成をお願いしており、その参考情報を提供している。
「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検後の手続きについて」(平成28年2月12日付薬生審査発0212第4号)に関連した原薬エキス(別紙規格)の整備について、原薬エキス委員会と調整し、その考え方について周知を図った。
幹事会メンバーで、日本三大 人参の里(会津、信州、雲州)の一つである島根県の由志園(雲州人蔘ミュージアム)を視察し、オタネニンジンの歴史や栽培・加工技術、また牡丹の品種などについて学んだ。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 平成28年度事業計画案 原薬エキス会議で、平成28年度事業計画案として以下の5項目を策定した。
- 日局カンゾウエキス等について 17局でカンゾウ(末)およびシャカンゾウのグリチルリチン酸の定量法と含量規格が改正されたが、関連各条のカンゾウエキス、カンゾウ粗エキス等については、後に検討することとされていた。カンゾウエキスとカンゾウ粗エキスについて、当委員会参加会社で新定量法と含量規格を確認したところ、特に問題はなく、その結果を技術委員会に連絡した。
- 局外生規2015 平成27年12月25日付けで審査管理課長通知「日本薬局方外生薬規格2015について」(局外生規2015)が発出された。
- 原薬エキスに係る薬事・法規に関する事項 平成28年1月19日に発出された審査管理課長通知「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について」に基づき、2月19日(海外製造品目については3月22日)までに、各社で製造実態の点検が求められた。
- 単味生薬研究班 平成27年12月25日付けで審査管理課長通知「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンス」が発出された。ガイダンスにある単味生薬エキス38品目については、現在「単味生薬研究班」(座長:国立衛研生薬部長 袴塚高志先生)で、規格および試験方法が検討されている。
平成28年4月22日に、平成28年度原薬エキス会議を大阪にて開催し、本年度の事業計画策定、平成27年度事業報告、日局や局外生規報告などを行った。また同日、本年度第1回原薬エキス委員会を開催した。
①漢方処方エキス、植物エキス等の公定書収載に関する事項
②原薬エキスの製造用水に関する事項
③原薬エキスの品質に関する事項
④原薬エキスに係る薬事・法規に関する事項
⑤単味生薬エキスに関する事項
また、日局キキョウ流エキスについては、工業的製法の追記、確認試験を呈色試験からTLCを用いた確認試験への変更、新規格項目としてアルコール数を設定するなど、詳細に検討中である。
当委員会が担当したアカメガシワエキスなど単味生薬エキス3種が局外生規2015に初めて収載された。
なお、これらエキスは局外規からの移行品目であり、局外規は局長通知であることから、日局17の施行通知と合わせて局外規からの削除が通達されることになった。したがって局外生規2015の施行日は、日局17と同じく本年4月1日となった。
漢方製剤等の収率に関しては、薬制委員会、技術委員会とともに国立衛研を訪問し、基本的考え方を整理した。また委員会で、点検後の製造販売承認書の単味生薬エキス(別紙規格)の記載整備について考え方を整理し、生薬製剤委員会ほか関連委員会とも協議して調整を図った。
それとは別に、地方庁からの地方委任提案により、『局方医薬品の承認申請の手引』(昭和55年)に掲載されている煎剤用生薬(30品目)の「使用上の注意」が安全性委員会で検討されている。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
各会員会社が作成した平成27年度の製品情報概要等を、製品情報概要実務部会において審査した。審査資材合計71件の審査結果は「可」52件、「好ましくない」5件、「話題」14件であった。審査結果は、コード審査会代表委員から各会員会社の製品情報概要管理責任者へ連絡し、各社改版へ向けて対応いただくこととした。
保険薬価協議会
委員長 丸木 希望(株式会社ツムラ)
平成28年1月19日、2月9日、3月8日に協議会を開催し、「平成28年度薬価制度の見直しについて」、「平成28年度診療報酬改定答申書及び附帯意見」、改定薬価内示・ヒアリング・告示スケジュール等の情報共有を図った。また、内示薬価、ヒアリング内容、薬価告示結果について、可能な範囲で意見交換を行った。
平成28年度の協議会の活動をより充実させるため、協議会の中に保険薬価部会を設置することを決めた。
「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」の立ち上げを、3月18日の正副会長会、理事会に諮り承認された。
総務委員会
委員長 菅沢 邦彦(株式会社ツムラ)
- 平成28年度 日漢協事業計画案策定につき、「日漢協事業計画策定にあたって」、「日漢協事業方針」、業態別会議、審査会、協議会、機能別委員会の「事業計画」をとりまとめ、第196回理事会において承認された。
- 平成28年度の委員会費の調整を行い収支予算(案)に盛り込んだ。
- 「中長期事業計画2017(5ヵ年計画)」策定に向けて、骨子等の検討を行ない、委員長会で確認した。
- 第195回理事会後に、会員会社へのコンプライアンスの浸透を目的として、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の橘昌利危害情報管理専門官に、「監視指導行政の動向」についてご講演いただいた。
- 「事務局等の運営に関する規程」第3条(任命)の一部改正を行い、第196回理事会において承認された。
国際委員会
委員長 塩本 秀己(大正製薬株式会社)
中国伝統医学の国際標準化に関する技術委員会(ISO/TC249)の全体会議が6月にイタリア・ローマで開催される。その開催に向け、生薬に関わる新規提案や生薬を原料とする製品の試験方法に関する新規作業項目が、中国や韓国から数多く提案されている。現在、日本東洋医学サミット会議の生薬に関わるWGおよび工業製品に関わるWGで、新規提案も含め、我が国への影響の有無について把握し、対応を進めている。
技術委員会
委員長 遠藤 雄一(株式会社ツムラ)
第17改正日本薬局方が3月7日に告示された。参考情報に収載されたアフラトキシン試験法と、改訂される一般試験法(微生物限度試験法、重金属試験法)については、検討した内容が日本薬局方技術情報(JPTI)2016に掲載された。また、17局以降の漢方処方エキス収載候補18品目(猪苓湯、温経湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、人参養栄湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、十味敗毒湯、麻子仁丸、荊芥連翹湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝加朮附湯、疎経活血湯、呉茱萸湯、柴胡桂枝乾姜湯、温清飲、清心蓮子飲、辛夷清肺湯、抑肝散加陳皮半夏)のうち、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、呉茱萸湯、温清飲、辛夷清肺湯について優先的に検討を開始した。
PQS導入に向けた課題を抽出することを目的として、1月20日から2月5日にかけて「医薬品品質システム(PQS)の活用状況に関するアンケート調査」を実施した。回答数(率)は47社/67社(70.1%)で、PQSを運用している会社は全体の16%と低かったが、運用の早期実現に前向きな会社を合わせると、全体の70%であった。また、各項目別の実施状況は、概ねGMP・GQPで運用されており、PQSに関する各項目の理解度は高いという結果であった。
3月18日の理事会後に、国立衛研生薬部長の袴塚高志先生より「生薬・漢方生薬製剤の品質管理に係る国際調和」のご演題でご講演をいただいた。生薬・漢方生薬製剤に係わる国際基準の詳細な動向分析により、日本のギャップを明らかにするとともに、今後の取り組むべき課題を提言する内容であり、有意義かつ貴重なご講演であった。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規および関係通知の調査研究、規制緩和推進に関する事項、関係行政機関および諸団体との連絡ならびに意見具申を基本に活動している。
- 医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について
- 一般用漢方製剤等の地方委任に関する検討
- 生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて
平成28年1月19日付け薬生審査発0119第1号「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について」が発出され、点検後の手続きについて平成28年2月12日付け薬生審査発0212第4号「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検後の手続きについて」が発出された。医薬品製造販売業者に対して、製造実態に合わせた医薬品製造販売承認書の薬事手続きが求められた。
内閣府地方分権改革推進室の平成27年地方分権改革に関する提案募集において、富山県、奈良県から「承認基準のある医薬品製造販売の地方承認権限の拡大」が提案され、重点事項のひとつとして厚労省へ検討要請されている。平成27年12月22日、対応方針について閣議決定され、「一般用漢方製剤(日局収載処方)は平成28年度中、生薬単味製剤は平成29年度中に都道府県に権限委譲する」とされている。
平成27年12月25日付け薬生審査発1225第6号「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」が発出された。単味生薬のエキス製剤の開発を行うにあたって、標準煎剤と生薬エキスとの同等性を確認するための比較試験方法や製造方法、規格および試験方法等に関する事項が示されている。単味生薬のエキス製剤の製造販売承認申請にあたっては、本ガイダンスを踏まえ、添付資料の作成等を行うこととされ、適用時期は、通知日以降に申請されるものに適用される。
安全性委員会
委員長 塚本 理史(株式会社ツムラ)
- 「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」(昭和53年2月13日付 薬発第158号)の廃止の件
- 医療用医薬品添付文書新記載要領について
日局17改正の甘草のグリチルリチン酸含量の見直しの理由から4月1日をもって「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」(昭和53年2月13日付 薬発第158号)が廃止される。本通知は当時、グリチルリチン酸等を含有する医薬品の大量使用により偽アルドステロン症が発現したため、規制のために発出された。その通知により甘草含有の漢方・生薬製剤の「使用上の注意」が決められた経緯がある。現在、医療用・一般用漢方製剤は、その通知を基に新たな通知により規定されている関係で本通知が廃止されても影響はない。しかし、各社の教育資料等に引用されていることもあり、3月9日開催の日漢協安全性委員会で内容の周知徹底を図った。
2016年度は、厚労省研究班の検討結果に基づき「医療用医薬品添付文書の記載要領及び患者向け医薬品ガイドの作成要領」が改定される見込みである。医療用医薬品については、平成9年以来の大改定であり、添付文書の届出制も絡んで各社の該当部門の業務量増加が見込まれる。安全性委員会では、円滑に業務が遂行できるよう情報共有を図っている。
広報委員会
委員長 鈴木 登(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(平成28年1月~4月)
- 1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 1件
- 2)一般用ホームページ新規掲載事項 10件(トピックス4件)
- 3)電話対応 20件
- 4)漢方啓発セミナー
- ①第67回東洋医学会学術総会における市民公開講座運営事務局と情報交換(日時、会場、講演内容など)
- ②3月19日「琉球放送RBC女性のためのKampo講座」において「漢方とは? 正しく理解してほしい漢方のはなし」と題し、セミナーを実施
- マスコミへの対応
- 1)1月から4月にかけて6件対応した。
- 2)ドラッグマガジンの巻頭特集「国産生薬の確保と最新の取り組み」の取材に関し、生薬委員会同席のもと対応。4月1日発行号に掲載。
- 3)共同通信(鳥取)、朝日新聞(高松)からの国内生薬栽培に関する取材に対応。
- 制作物
- 1)ニューズレターNo.96を発刊した。
- 2)漢方概論の小冊子制作に向けて、検討チームの打合せを実施し、文章の一次案から小冊子体裁案制作および監修依頼を行った。
- ホームページ企画部会活動
- 日漢協HPにトピックス5件(一般用HP4件、会員用HP1件)掲載。
- その他
- 1)日漢協関連記事・番組およびHP更新などについて、事務局を通じて会員会社の窓口担当者に20件の情報提供を実施した。
- 2)紙媒体で発行していた創刊号から93号までの日漢協ニューズレターを、永久保存のため製本した。
表紙の応募作品 今回惜しくも選に漏れた作品をご紹介します。
【美しい老い(チングルマ)】 |
【駒草(コマクサ)】 |
【しだれ桜】 |
【我が家の牡丹】 |
※皆さんフルってご応募ください!!
九州保健福祉大学薬学部薬学科生薬学講座 垣内 信子 教授
HCVプロテアーゼ阻害作用のある薬用植物の探索
延岡市との公私協力方式により創設
「学生一人ひとりのもつ能力を最大限に引き出し引き伸ばし、社会に有為な人材を養成する」を建学の理念とする九州保健福祉大学は、宮崎県延岡市との公私協力方式により創設されました。同大学の母体は岡山県高梁市に本拠がある学校法人順正学園、岡山市にある学校法人加計学園と共に加計勉を学祖とする加計学園グループとして知られています。
加計学園は岡山理科大学(岡山市)、倉敷芸術科学大学(岡山県倉敷市)、千葉科学大学(千葉県銚子市)、順正学園は吉備国際大学(高梁市)をそれぞれ運営、時代のニーズを先取りした多様な人材育成に余念がありません。
平成11年(1999)4月の開学以来17年目となる九州保健福祉大学は、当初、社会福祉学部、保健科学部の二学部でスタートしました。その4年後に薬学部、そして、昨年に生命医科学部を設置、地域に開かれた大学として産官学共同研究など積極的に進めています。
薬剤師国家試験合格に最も近い大学のひとつ
薬学部薬学科の開設は平成15年(2003)、同18年(2006)に4年制から6年生に移行し、同20年(2008)には4年制の動物生命薬学科が開設されています。同学部を同学部たらしめているのは、国家試験の合格率の高さです。平成19年(2007)に一期生が第92回薬剤師国家試験で合格率97.5%の成績を収め、一躍話題になりました。以来、合格率は高水準を維持し、平成27年度の第100回の国試に於いても全国国公私立73大学中で東大、金沢大、富山大に次いで第4位となり、私立56大学中では第一位となっています。
「バイタルサインが読める薬剤師の育成」、これは同学部が目指している薬剤師像です。その一端として精巧な患者ロボットを使用した模擬ベッドサイド実習を導入するなど他大学にない独自の教育を全国に先駆けて取り入れています。この取組みは文部科学省の教育支援プログラム「医療人GP」に採択されています。
薬用植物の調査、DNA分析、系統解析
垣内信子教授と大塚功准教授(左)、
渥美聡孝助教(右)
薬草園(3,531m2)
裏山から見たキャンパス
①は垣内教授が担当され、HCVプロテアーゼ阻害作用のある薬用植物の探索と、日本に自生するトリカブト植物の遺伝子タイピングと含有成分を指標とした識別を行っています。②は大塚准教授、③は渥美助教が主として担当しています。
「金沢では麻黄を研究していましたが、現在はオクトリカブトと南米のアマゾン流域に産するカムカムを探索しています」
研究室での研究の他に、薬用作物を栽培してみたいという市民に対し、延岡市と協力してアドバイスをするなど地域の活性化にも生薬学講座ぐるみで勤しんでいます。
事務局長就任ご挨拶
日本漢方生薬製剤協会
事務局長
小川 出
本年1月末、正副会長会および理事会持ち回り審議にて、ご承認いただき、2月1日付けで事務局長に任命されました。それまで30数年、全国各地の医療機関を訪問し、医療用漢方製剤に関する医薬情報提供・収集活動をしてまいりました。定年までの数年を営業職とは違う角度から、漢方の啓発・普及に取り組みたいと考え、希望した矢先に、前任の渡辺義夫事務局長の退職により、事務局に配属となりました。
本年は、日漢協「中長期事業計画2012年」の集大成の年であり、次の中長期事業計画を策定する年でもあるという重要な年です。事務局として、平成28年度事業計画や事業方針の遂行のために活動する5つの業態別会議、6つの機能別委員会と審査会、協議会やそれぞれの会の委員として活動されている300名を超える会員会社社員の皆様の活動をサポートしたいと考えております。
また、日漢協の活動を対外的に浸透させていくために事務局が求められる役割は大きいとも認識しております。
一億総活躍社会に向け、漢方生薬製剤が国民の医療に貢献すべく、日漢協が目標とする課題に取り組めるよう、より一層信頼される事務局をめざします。
会員各社の皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
書籍紹介
久留米大学医学部客員教授の野村靖幸先生が執筆された「四季の生薬」が出版されました。
四季折々の生薬250種以上を題材として、在来種や外来種などの歴史と文化を織り込み紹介し、生薬として使用される部位とその採取時期、そして成分や薬効についても読みやすい文章でわかりやすく解説されています。
薬としてだけでなく、季節の食物や身近な食物と健康とのかかわりについて、楽しみながら学べ、簡易な生薬辞典としても活用できる一冊です。
【発行】薬事日報社
【判型】四六判・462ページ
【定価】2,200円+税
【ISBN】978-4-8408-1343-3 C3047
私の健康法 神奈川県知事 黒岩祐治さん
毎朝、5キロのランニング
高僧の書と見まがう自書を背に。「いのち」の他に「氣」、 「未病」の書が飾られている(神奈川県庁知事室で) |
●「未病を治すかながわ宣言」
2014年(平成26)1月8日、一つのマニフェストが宣せられた。「未病を治すかながわ宣言」である。宣したのは黒岩祐治神奈川県知事だった。そこには2つの理念と3つの取組みが盛り込まれていた。その理念には以下のように記されている。・「超高齢社会を幸せに生きるには未病を治すことが大切だ」という価値観を県民文化として育てます
・そのため、未病を治す考え方を皆で学び、県民一人ひとりはもとより社会のあらゆる主体が協力しあって、未病を治す取り組みを展開します
当時、この宣言を見て、未病という文字を読める神奈川県民はそう多くはなかったが、以来、東洋医学の概念というよりも知恵の結晶とも言える未病は、人口に膾炙されるようになっている。
未病への熱い思いは、重点施策として政策にも反映されている。目指すは未病をベースにした健康寿命の日本一。さらに新たな市場・産業を創出すべく未病産業研究会を設置し、国際展開を進めるために「ME-BYO」の商標登録も済ましている。
神奈川県知事に就任するまではフジテレビでキャスター等をつとめ、退社後は国際医療福祉大学大学院教授の傍ら、気鋭の医療ジャーナリストとしてならした。フジテレビ時代、自ら企画・取材・編集を手がけた救急医療キャンペーン(89年~91年)は救急救命士誕生に結びついたことはつとに知られる。
●お酒大好き、特にビールが
「これまで大病をしたことはありません。2年に1回ほど風邪をひくくらいです」61歳になる今日まで健康に恵まれ、3月13日に行われた横浜マラソンに出場し、完走している。フルマラソン初挑戦でタイムは4時間49分30秒だった。「5時間を切るのが目標でした」
フルマラソンを完走できる体力は健康であればこそ。
この要因の一つは、食べ物に好き嫌いがない。肉も魚も野菜、豆腐も好きで、そして、お酒が大好き、「365日、毎日、飲んでいます。特に好きなのはビールですね。皆とワイワイ騒ぎながら楽しく飲んでいます」。
自宅で過ごす週末以外はほとんど誰かしらとグラスを傾けている。「生活は不規則なのですが、それなりに規則的で、バランスを考え、三食きちんと食べ、サラダも必ずいただいています」。 因みに酒の場は情報を得る格好の場でもあるそうだ。
健康法というよりも毎朝欠かさないのがランニング。6時に起きて5キロの距離を30分ほど走り、腕立て伏せや腹筋、背筋、ストレッチを行っている。「5年前に知事になった時、体重が増えてしまい、これはまずいと思って、朝、走ることにしたんです。これが病みつきになり、身体もスッキリし、肩こりもなくなりましたね」
県政の柱ともなっている未病との出会いは2005年、「末期がん患者に対して西洋医学は有効かというシンポジウムで劉影さんを知りました。当時、父が肝臓がんで余命二ヶ月と言われていたんです。劉さんに相談したところ、未病を治しましょうと言われ、長芋を蒸して、毎食、ごはんがわりに食べ、冬虫夏草を煎じたお茶をのんだところ、奇跡的に回復したのです。それ以来、未病を治すという考え方に共鳴し、今に至っています」
プロフィール
1954年(昭和29)9月、神戸市出身。1980年早稲田大学政治経済学部卒業、フジテレビジョン入社。2009年(平成21)9月同退社、10月国際医療福祉大学大学院教授。2011年3月同退職、4月神奈川県知事に就任。2015年4月神奈川県知事(二期目)に就任。
著書『末期ガンと漢方~東西医療の融合 父に起きた奇跡~』(IDP新書)『末期ガンなのにステーキを食べ、苦しまずに逝った父(介護ライブラリー)』講談社など多数。