96号 (第32巻 第3号)2016年1月
厚生労働省 医薬・生活衛生局長 中垣 英明 |
新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、今年の医薬品、医療機器等行政を展望し、所感を申し述べます。
近年、国民の健康に対する意識の高まり等を背景に、医薬品および医療機器等の品質、有効性および安全性に対する国民の関心はますます高まっており、また、急速な少子高齢化の進行、再生医療等の科学技術の進歩、国際化の進展など、薬事行政を取り巻く環境も大きく変化しております。
まず、昨年十月に、医薬分業の原点に立ち返り、現在の薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編するため、「患者のための薬局ビジョン」を策定いたしました。
本ビジョンでは、患者本位の医薬分業の実現に向けて、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、二十四時間対応・在宅対応、医療機関等との連携など、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、中長期的視野に立って、かかりつけ薬局への再編の道筋を示しています。 今年は、本ビジョンを踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図り、患者・住民から真に評価される医薬分業の速やかな実現を目指してまいります。また、本年四月より「健康サポート薬局」の公表制度を創設すること等により、地域住民による主体的な健康維持・増進のために積極的な取組を推進していきます。国民の皆様に有効かつ安全な医薬品・医療機器等をできる限り早くお届けするため、様々な施策を進めており、ドラッグ・デバイスラグについては、近年減少傾向にあります。この傾向を恒常的に達成していくため、承認審査等を行う独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の組織・人員の充実・強化を図ってまいります。
さらに、日本再興戦略を踏まえ、革新的な医薬品、医療機器および再生医療等製品を世界に先駆けて実用化していくため、「先駆けパッケージ戦略」の一環として、臨床試験成績等から著明な有効性が期待できる画期的な医薬品等について、各種支援により審査期間を通常の半分の期間で承認することを目指す「先駆け審査指定制度」の試行的運用を開始しました。医薬品については、六品目を初めて対象品目として指定し、制度の活用を進めています。引き続き、試行的な運用を進め、指定された医薬品および医療機器等の世界に先駆けた早期承認を目指してまいります。
また、安全性の確保等一定の条件を満たす場合には、参加基準に満たない患者にもアクセスを認める人道的見地からの治験参加の仕組み(日本版コンパッショネートユース制度)を検討しており、関係省令等を改正した上で、運用を開始することとしております。
再生医療等製品に関しては、重症心不全を適応とする心筋シートおよび造血幹細胞の移植に伴う急性移植片対宿主病を適応とする細胞懸濁液の二品目が、医薬品医療機器法施行後、初めて承認されました。心筋シートは、均質でない再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められれば、特別に早期に、条件および期限を付して製造販売承認を与えることを可能とする条件・期限付き承認制度を活用した初めての製品になります。
医療用医薬品から一般用医薬品への移行(スイッチOTC)の促進について、日本再興戦略を踏まえ、既に審査期間短縮の目標設定、相談体制の拡充等に取り組んでいますが、新たに医学・薬学の専門家、産業界、消費者等の多様な主体からの意見を反映する検討会議を設置する予定です。
国際化の進展のため、業界からの要望等も踏まえ、昨年六月に「国際薬事規制調和戦略~レギュラトリーサイエンス イニシアティブ~」を取りまとめました。これに基づき、薬事規制に関する我が国のレギュラトリーサイエンスに基づく知見をアジアをはじめとする世界に発信し、世界のドラッグ・デバイスラグの解決による国際社会の保健衛生の向上に貢献するとともに、国内投資の呼込み、優れた製品の輸出拡大による産業活性化にもつなげていきます。本戦略の策定だけで終わらせず、今後とも、継続性・一貫性のある取組を推進していけるよう、厚生労働省・PMDAの組織体制を構築し、国・地域別の担当者制を導入することで、司令塔機能を発揮し、業界団体との意見交換を行いつつ、戦略の定期的な進捗管理や見直しを行ってくことで強力に国際規制調和・国際協力の取組を進めてまいります。危険ドラッグにより、犠牲者を出す悲惨な事故が発生したこと等を踏まえ、指定薬物の迅速な指定の他、検査命令・販売停止命令の発動や販売サイトの削除要請を行う等の取組みを実施した結果、昨夏に実店舗を全滅に追い込みました。
引き続き、インターネット販売店舗も含め、徹底した取締まり等を実施します。
血液事業については、少子高齢化によって献血が可能な人口が減少する中、将来にわたり血液の安定供給ができる体制を確保すべく、特に若年層への普及啓発活動の強化等、献血の推進に取り組んでまいります。
あわせて、献血時の問診の充実やHIV等の病原体に対する検査精度の向上等の安全対策の一層の強化を進めてまいります。
国民の皆様に有効かつ安全な医薬品・医療機器等をできる限り早くお届けするという責務を果たすため、関係者の皆様とも、率直な意見交換等をしながら、今申し述べた施策を進めてまいりたいと考えています。
皆様の薬事行政に対する一層の御理解と御協力をお願い申し上げますとともに、皆様方のますますの御発展と御多幸をお祈りしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。
日本漢方生薬製剤協会 会長 加藤 照和 |
新年あけましておめでとうございます。
本年は、日漢協「中長期事業計画2012」の最終年を迎えますが、「原料生薬の安定確保の推進」を最優先課題とし「品質・量・価格」において安定的な確保を目指しております。
中国産の生薬価格指数は、前回の報告で、2006年度比で2倍強に上昇しておりましたが、今回2014年度の調査で2.5倍近くへとさらに上昇しており、引き続き厳しい年となりそうであります。
このような状況下、昨年9月、中国商務省の直轄機関である中国医保商会が、傘下の中国伝統薬メーカー数十社を伴い訪日され、日薬連の木村理事長と国際委員長、在日中国大使館の景参事官にもご参加いただき、相互理解と交流を深めました。
団長の劉副会長は、中国政府の意向の下、厚労省の医政局経済課と医薬食品局審査管理課を表敬訪問し、両国間の行政レベルでの伝統薬発展のための意見交換を希望されると同時に、当協会を通じて、中国の生薬輸出数量および単価データを過去7年間分、さらには今後毎年、継続提供することを約束されました。また、厚労省からは、貴重なデータ提供への御礼と共に、漢方・生薬に関しての対外窓口を、医政局経済課が担当することをご説明いただきました。今後は、日中伝統薬交流を官民双方で行うことができますよう、日漢協が架け橋としての役割を果たしてまいります。
一方、原料生薬の国内栽培の振興につきましては、農水省、厚労省、日漢協が主催する「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」が3年目を迎え、過去2年に勝る大きな成果を期待しているところであります。本格的な生薬栽培に繋げていくため、平成28年度から導入される、新たな支援事業である「産地支援体制整備」にも積極的に参加する方向で検討中であり、産地との折衝のみならず栽培指導や相談窓口等、もう一歩踏み込んだ取り組みを考えております。
日本がGMP国際標準であるPIC/Sに加盟したことに伴い、その医薬品品質要求に、製品のみならず生薬レベルで応えていかなければなりません。日漢協では以前から、薬用作物の栽培や加工・調製における管理レベルアップのための手引きの作成に着手しており、昨年6月に日漢協版GACPを取りまとめました。また、国際規格品質の考え方に基づくICH Q10医薬品品質システム(PQS)の導入が求められており、日漢協会員会社はこれらに積極的に対応し、漢方・生薬製剤の品質確保に努めてまいります。
中国もPIC/S加盟を目指しており伝統薬の品質向上を生薬の段階から強化する国の政策を、中国国務院が「2015-20中薬材保護および発展5カ年計画」として発表しております。これは中薬材保護と発展、つまり生薬の栽培・生産技術と品質向上に関する計画であり、初の国家級プロジェクトとして大きな予算で取り組むものであります。我が国の技術的優位性を確保することこそが、中国から頼られる存在となるわけであり、高品質な原料生薬を中国から継続的に調達し続けるためには、国際基準をクリアし、世界最高水準の有効性・安全性・品質を誇る伝統薬として、漢方・生薬製剤が常にリードしていく必要があります。また、国家レベルで取り組む中国に対して、優位性を確保し続けるためには、業界だけの取り組みでは限界もあり、産官学の強力な連携体制で臨むことが不可欠であります。どうか、関係される皆様のお力添えを宜しくお願いいたします。
漢方薬の持続的な安定供給の点では、「OTC類似医薬品の公的保険からの除外」問題と「薬価制度における新たな再算定ルールの導入」の二つの議論がありました。いずれも厚労省をはじめ、日本医師会、日本薬剤師会、日本東洋医学会、日薬連など多くの皆様が、国民医療における漢方薬の役割・必要性についてご主張いただきました。特に、「漢方の保険適用除外」問題におきましては国会議員の先生方からも「その議論は決着済み」との力強いご発言をいただくなど、いずれも国民の利益に叶う正しい方向に進んでおりますことに、感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
原料生薬価格の高騰による医療用漢方製剤・生薬の安定供給不安の問題解決のため、厚労省経済課のご指導のもと、新たな再算定ルールの導入に関する日漢協提案を作成・提示いたしました。昨年12月の中医協薬価専門部会において、日薬連の薬価制度改革に関する意見として、「原料生薬価格の大幅な変動に連動する、新たな再算定ルールの導入が必要であると考える」と明記いただき、今後ご議論いただく大きな一歩を踏み出すことができました。国民医療に貢献すべく、持続的に安定供給するために、この再算定ルールの導入を何としても実現するよう全力を尽くして参りますので、関係される皆様のご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
一方、一般用医薬品につきましては、日薬連・一般薬連の多大なご尽力により、租税特別措置法に基づく数十年ぶりの新税制として、平成28年度税制改正大綱に医療費控除の特例が盛り込まれました。現時点ではスイッチOTC薬のみの適用ですが、国民のセルフメディケーション意識向上のためにも、漢方・生薬製剤を含めたOTC薬全体への適用を視野に入れ、当協会としても一般薬連での活動を強化してまいります。また一般用漢方製剤の適正使用に関連した調査研究を国立衛研と行い、患者様の体質や症状をチェックして副作用を回避することを目的に「一般用漢方処方の確認票」の制作に協力し、周知活動を行っております。
国際的には、昨年6月に北京で開催されたISO/TC249第6回全体会議で、タイトルがTraditional Chinese Medicine(TCM)となり、その後、ISO審査決定機関で最終的に承認されました。日漢協は、日本独自の伝統医学である漢方医学を守る立場で、この活動に協力してまいりましたが、TCM国際標準という枠組みの中で漢方医学が議論されていくことに大きな危機感を持っております。日漢協としては、中国からの原料生薬の安定調達を確保し続け、日本の漢方製剤、生薬製剤および生薬への悪影響が生ずることのないよう、日本東洋医学サミット会議(JLOM)および行政機関と協力して、担当するワーキンググループでの意見発信や提案を行ってまいります。
製薬企業の社会的責任に関する課題として、製薬企業の取組み姿勢が重要視されております。コンプライアンス活動の取組みにつきましては、会員会社の経営トップ自らが強い意識をもって、社会からの信頼に応えてまいります。また厚労省の『医薬品産業強化総合戦略』では、漢方薬は「我が国の医療において重要な役割を担っている」と位置づけられ、『がん対策加速化プラン』では、支持療法の開発・普及の実施すべき具体策として、「術後の合併症・後遺症を軽減する観点から」研究を進めるという具体的な施策提言の一つに、漢方薬の使用が挙げられております。このように漢方薬治療に対する期待が寄せられる中、しっかりと役割を果たしていく所存でございますので、皆様方の変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。
本年が皆様にとって最良の年となりますようご祈念申し上げ、私の新年の挨拶とさせていただきます。
(株式会社ツムラ 代表取締役社長)
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 流通適正化部会
(1)「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」の変更について、反映したものを日漢協ホームページに公開した。
(2)製薬協と同様、本年より毎年11月をコード理解促進月間と定めて、会員会社にコードの遵守についての啓蒙活動を行った。
(3)プロモーション用補助物品の製品名等の記載をやめ、会社ロゴに留めることとした通知を医療用医薬品取り扱い会員会社へ発信した。 - 教育研修部会
(1)MR漢方教本は、各章の構成を進め、組織図、業態別のデータ等最新のものに更新し、3月発刊予定である
(2)外部研修教育として、生薬委員会、安全性委員会から講師を招き、「生薬の品質・栽培」、「くすり教育」について講演会を実施した。 - 有用性研究部会
(1)日本東洋医学会EBM委員会への協力として、「漢方治療エビデンスレポート」のAppendix 2015に掲載する対象論文を選定し、今年度中の公開を予定している
(2)「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」は、Appendix 2015を11月に公開し、2016年版(全面改訂予定)の作成に向けて調査を開始した。
(3)「医療用漢方製剤 2014—148処方の添付文書情報—」は印刷版PDFを公開した。
(4)国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究所および薬用植物園見学を実施した。「薬用植物総合情報データベース」における漢方薬の情報を利用しやすい掲載にするようお願いした。
生薬会議
生薬委員会 委員長 浅間 宏志(株式会社ウチダ和漢薬)
「薬用植物総合情報データベース」における漢方薬の情報を利用しやすい掲載にするようお願いした。
- 2015年度薬用作物の産地化に向けたブロック会議
- 「薬用植物の栽培と採取、加工に関する手引き」の普及
- 第4回原料生薬使用量等調査(2013~2014年度分)
- 日局既収載生薬の改正要望
- 第3回中国産生薬の使用農薬調査
2013~2014年度と同様、農林水産省、厚生労働省および日漢協の共催により、昨年9月8日のさいたま市を皮切りにスタートした2015年度のブロック会議は、10月22日の札幌市で無事終了した(全国合計8ヶ所:札幌、仙台、さいたま、金沢、名古屋、京都、岡山、熊本)。
今年度のブロック会議では、2013~2014年度のブロック会議による生産者と実需者(製薬メーカー)間のマッチングの結果や、日漢協が実需者を対象に行ったアンケート調査結果についても報告した。現在、生産者から提出された要望票2015をもとに、生産者と実需者間でマッチング交渉が進められている。
日漢協版GACP(Good Agricultural and Collection Practices)である標記手引きの普及を目的として、当協会ホームページに本文と参考様式を掲載したところであるが、更なる活用を目指し、Q&Aや問い合わせ先の掲載などについて検討を進めている。より多くの方々に、薬用植物の栽培や採取、生薬への加工調製時における管理レベルの向上に活用してもらうべく、更なる推奨策も検討予定である。
原料生薬の安定確保が日漢協の第一命題となっているが、その基礎データの一つとして、医薬品原料としての生薬の使用量等調査を継続実施している。第1~3回調査(2008~2012年度分)に引き続き、今回は2013~2014年度分について、日漢協加盟会社を対象に昨年11月に調査を行った。現在、集計作業中である。
日漢協会員会社を対象に、2015年1月に第2回改正要望調査を実施したところ、新たに40項目の要望があった。2010年に実施した第1回改正要望調査については、現在までに48項目が終了し、残りは17項目となっている。第2回要望と合わせ計57項目について、今後技術委員会と連携し検討を進めていく。
第3回の中国産生薬の使用農薬調査対象品目として選定したサンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)およびハッカ(薄荷)の3品目について、使用農薬の実態調査を中国医薬保健品股 有限公司に依頼していたが、その調査結果が届いた。現在、翻訳作業を行い内容の確認を進めている。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 西山 隆(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- くすり相談部会
- 事例報告G 相談・苦情への回答・対応の検討
- トピックスG トピックスの収集と共有化を行った。
- 一般用漢方製剤の「相談事例集Q&A第4集」の作成 過去の事例集第2、3集の質問事項について確認、検討を実施した。
- 一般用5団体消費者対応窓口共通アンケート 来年度についてもアンケートを実施することとなった。
- 処方部会
- 「一般用漢方製剤承認基準処方文献」の整備
- 新210処方の使用促進のための資料作成
- セルフメディケーションハンドブック編集 プロジェクト(一般薬連)
- 適正使用推進部会
- 一般用漢方製剤販売時の補助ツール作成について
- セルフメディケーション推進プロジェクト(一般薬連)
- 「セルフメディケーション推進税制」の創設
- HbA1c検体測定症例収集
一般用漢方生薬製剤
展示風景:10/26
平成27年10月28日(水)開催
・ 各部会からの活動報告
・ 「市民公開漢方セミナー」展示について
・ 国際対応WG報告
・ 日本薬局方外生薬規格2015作成WG報告
・ セルフメディケーションハンドブック編集
プロジェクトについての状況報告
・ セルフメディケーション実践プロジェクトについての状況報告
・ その他連絡事項
日漢協保管文献について、リスト表(新210処方手引き文献一覧および処方検討レポートより作成)と照合して保管の有無を確認し、リスト記載の番号順に並べ替え、ファイルを整備する作業を実施した。
胃腸に使用する処方について、事前配布資料を基に、使い分けや処方の特徴等について意見交換を実施した。
平成27年9月29日(火)14:00~16:00、10月30日(金)13:00~15:00に開催された。より生活者の立場に立った見直し案について、台割りおよび内容を検討した。セルフメディケーション推進税制、検体測定室についてのページ追加を検討することになった。
日漢協HPへの掲載を平成27年9月17日に行った。生活者からの閲覧を勘案し、アクセスルートを2ヵ所(制作物のご紹介、お問合せコーナー)用意した。掲載状況について、国立衛研生薬部の袴塚高志部長に確認をいただいた。
厚生労働部会や厚生労働委員会、税制調査会等でのヒアリングに対応した資料準備、提出とメンバーへの説明対応を行っている。
・ 目標を受検者3,000名(現在約1,800名)に変更し、早期完了を目指すこととなった。
・ 新規症例取得を目指す施設を大幅に絞込むと共に過去症例の取得も図っていく。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
生薬製剤 展示風景:10/26
生薬製剤の活性化を目標に、生薬製剤の承認基準の拡大に向けて検討を進めている。
これまでに、制度研究部会と製剤開発部会の成果を当帰川芎製剤(実母散等)の承認基準(案)と、その提案資料として取りまとめた。
さらに、新たな生薬を組合せた製剤の開発を可能にするため、安全性に関する検討を進めている。臨床漢方医の先生方と面談し、当帰川芎製剤に配合される生薬の組合せについて安全性の観点よりご知見をご教授いただいている。また、添付文書(使用上の注意)における対応についても検討しており、制度研究部会では、その参考資料として医薬品医療機器総合機構への副作用報告や女性向け漢方処方の使用上の注意を取りまとめている。製剤開発部会では、各生薬の女性向け漢方処方における配合状況、リスク区分、食薬区分、使用上の注意に記載すべき事項の調査を踏まえて、生薬を整理している。
本承認基準(案)については、関連する団体・有識者との連携を進めるべく、日本家庭薬協会 薬事常任委員会にて説明(9/11)し、意見交換を行った。さらに、国立衛研生薬部の袴塚高志部長から、本提案の行政的位置づけや今後の進め方についてご助言いただきたいと考えている。
第18回 市民公開漢方セミナー(10/26)において、広報委員会、一般用漢方製剤委員会と協力して会員会社の一般用漢方生薬製剤を展示し、350名を超える入場者全員に興味を持って見ていただいた。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 日局カンゾウエキス等について
- 局外生規2015
- 単味生薬研究班
平成27年10月21日に本年度第4回原薬エキス委員会を大阪にて開催した。
日本薬局方(日局)の第17改正でカンゾウ(末)およびシャカンゾウのグリチルリチン酸の定量法と含量規格が改正されるが、関連各条のカンゾウエキス、カンゾウ粗エキス、カンゾウ配合漢方処方エキスについては、追って検討することとされていた。
カンゾウエキスおよびカンゾウ粗エキスについては、当委員会で検討し、現在データをまとめているところである。なお、カンゾウ配合漢方処方エキスについては、技術委員会で検討されている。
また、キキョウ流エキスについては、工業的製法の追記、確認試験を呈色試験から薄層クロマトグラフィー(TLC)試験へ変更、また新たな規格項目としてアルコール数を設定する方向で詳細に検討中である。
平成27年10月15日付で厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課から、日本薬局方外生薬規格(局外生規)2015(案)に関する意見募集が発出され、平成27年12月25日に通知(薬生審査発1225号第1号)が発出された(平成28年4月1日に施行)。
局外生規2015には、当委員会が担当した単味生薬エキス(アカメガシワエキス、ウラジロガシエキスおよびメリロートエキスの3種)が日本薬局方外医薬品規格(局外規)から外れて、収載された。当委員会では、次回改正に向けて、これらの品目の課題を整理している。
平成26年9月に意見募集された「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン(案)」は、意見等に基づいて修正され、平成27年12月25日に「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係わるガイダンスについて」として通知(薬生審査発1225号第6号)が発出された。「生薬製剤承認基準原案研究班」(単味生薬研究班)では、本通知に掲載されている単味生薬エキスの規格および試験法を検討中である。いずれは局外生規に収載する方向とのことで、当委員会でも対応している。
また、承認権限の地方委譲の関係で、単味生薬について、既承認品目の調査や「使用上の注意(案)」が、それぞれ薬制委員会、安全性委員会で検討されている。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
平成27年度に会員会社が作成した製品情報概要等を製品情報概要実務部会が平成27年10月28日から12月までに計3回審査を行った。審査結果については本年の3月までに会員会社並びに日漢協ホームページに公表し、さらに厚労省監・麻課へ概要報告を行う予定としている。
保険薬価協議会
委員長 丸木 希望(株式会社ツムラ)
平成27年9月1日、10月6日、11月10日、12月8日に協議会を開催し、厚労省の「医薬品産業強化総合戦略」や中医協薬価専門部会の審議状況等、情報共有を図った。
総務委員会
委員長 菅沢 邦彦(株式会社ツムラ)
- 諸規程の見直し
会費等の納入義務に関する事項を明確にした「会費等の納入義務に関する規程(案)」を第193回理事会に上程し、承認された。 - 第194回理事会後にコンプライアンス研修会として、講演会の開催を計画し、講師選定について行政に依頼をした。
国際委員会
委員長 塩本 秀己(大正製薬株式会社)
2015年9月に中国医薬保健品進出口商会(中国医保商会)の劉副会長を団長とする訪日団が日漢協を訪れ、主として原料生薬の安定確保をテーマに情報や意見交換を行った。中国大使館をはじめ日薬連、甘草工業懇話会、関係委員会の協力により、会合は成功裡に終わった(詳細は日漢協HPのトピックスを参照)。
なお、中国医保商会は中国商務部が管轄する六大輸出輸入商会の一つで、生薬および生薬を原料とする製品の輸出に関わる企業も会員となっている。一昨年、日漢協訪中団が中国医保商会を訪問した際、隔年毎に互いを訪れ、最新の情報や喫緊の課題について意見交換し、相互理解を深めていくことになった。
技術委員会
委員長 遠藤 雄一(株式会社ツムラ)
2016年4月施行の日局17で改訂される一般試験法の微生物限度試験法および重金属試験法、ならびに参考情報に収載されるアフラトキシン試験法について、検討内容を日本薬局方技術情報(JPTI)に掲載すべく原稿を作成した。また、日局17以降の漢方処方エキス18品目が収載候補品目として了承された(猪苓湯、温経湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、人参養栄湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、十味敗毒湯、麻子仁丸、荊芥連翹湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝加朮附湯、疎経活血湯、呉茱萸湯、柴胡桂枝乾姜湯、温清飲、清心蓮子飲、辛夷清肺湯および抑肝散加陳皮半夏)。また、猪苓湯などに配合されるアキョウも新規収載候補生薬として了承された。今後、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、呉茱萸湯、温清飲および辛夷清肺湯について優先的に検討を開始する。
2015年2月に実施された医薬品品質システム(PQS)に関する厚生労働科学研究の結果が、日薬連品質委員会主催の「第35回医薬品GQP・GMP研究会」で報告されたが、生薬・漢方製剤の製造所におけるPQSの実施状況が他分野の医薬品製造所に比べて低い結果であった。そこで、日漢協におけるPQS導入を推進強化するため、会員会社を対象にアンケート調査を実施すべく説明会を開催した。
残留溶媒については、残留溶媒管理に関する基本的な考え方とQ&A(その1)が、2015年11月12日に審査管理課から発出された。なお、生薬および生薬を配合した製剤は、一般試験法2.46残留溶媒の対象外とされている。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規および関係通知の調査研究、規制緩和推進に関する事項、関係行政機関および諸団体との連絡ならびに意見具申を基本に活動している。
- 一般用漢方製剤等の地方委任に関する検討
- 輸入関連通知の発出(輸入届廃止)
内閣府地方分権改革推進室の平成27年地方分権改革に関する提案募集において、富山県、奈良県から「承認基準のある医薬品製造販売の地方承認権限の拡大」が提案され、重点事項のひとつとして厚労省へ検討要請されている。具体的には、「日本薬局方において規格基準が定められている一般用漢方製剤等について承認権限を都道府県に委譲すること」が提案されている。また生薬単味製剤(生薬)についても地方委任の提案がなされていることから、引き続き地方委任の課題について検討している。
平成27年10月19日厚生労働省令第161号により施行規則が改正され、医薬品等輸入の際に必要であった輸入届が廃止された。「通関に先立って義務づけている輸入届書の提出を求めないこととし、国内において医薬品等を流通させるための手続である製造販売承認の承認書又はその申請書類の写し等を通関時に提示することをもって通関を可能とすることとする。」とされ、施行日は平成28年1月1日である。具体的な運用については、平成27年11月30日付輸入関連通知により示された。
安全性委員会
委員長 塚本 理史(株式会社ツムラ)
- 「腸間膜静脈硬化症」への対応
- 「DLST」について
腸間膜静脈硬化症についての新たな情報を入れ込んだ改訂版リーフレットが完成した。当委員会では、内容理解のための勉強会を実施し、各社が医療機関に説明できるようにポイント解説を行った。今後は各社が必要に応じて情報提供することとした。
医療機関から寄せられる漢方製剤の副作用報告で、薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST:Drug-induced Lymphocyte Stimulation Test)を根拠に報告される症例が散見される。当委員会において漢方製剤とDLSTについての勉強会を実施し、業界として統一した適正使用情報を発信できないか検討することとした。
広報委員会
委員長 鈴木 登(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(平成27年9月~12月)
- 1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 5件
- 2)一般用ホームページ新規掲載事項 11件(トピックス7件)
- 3)電話対応 4件
- 4)漢方啓発セミナー
- ①第67回東洋医学会学術総会における市民公開講座
9月18日開催の日漢協理事会にて共催の審議、承認を得る - ②9月13日「長野放送NBSまつり2015」において「親子で学ぶ漢方 正しく理解してほしい漢方のはなし」と題し、セミナーを実施(参加者28名)
- ③第18回市民公開漢方セミナー
10月26日実施
場 所:文京シビックホール
講 師:東京女子医科大学東洋医学研究所 教授 伊藤隆先生
参加者:353名(うち報道関係者7名) - マスコミへの対応
- 1)9月から12月にかけて20件対応した。
- 2)雑誌週刊金曜日から「漢方副作用百科」(筑波大学名誉教授・内藤裕史先生著)に関する取材依頼が入り、安全性委員会と連携し10月22日面談による取材対応、その後メールによる質問に対し計10回対応した。
- 3)NHK(松山)、共同通信(福井)、読売新聞(宮崎)、毎日新聞(山口)、神戸新聞などからの、原料生薬の国内栽培および中国産原料生薬の価格指数調査について問い合わせに対応した。
- 制作物
- 1)ニューズレターNo.95号を発刊した。
- 2)日漢協ガイド2015を発行し、Web掲載も行った。また、英語版に関してもWeb掲載を行った。
- ホームページ企画部会活動
- 日漢協HPにトピックス8記事掲載および会員専用ページにトピックス6記事掲載。
- その他
- 日漢協関連記事・番組およびHP更新などについて、事務局を通じて会員会社の窓口担当者に29件の情報提供を実施した。
徳島文理大学薬学部生薬学教室 梅山 明美 教授
日本産キノコ類、地衣類および冬虫夏草に含まれる生活習慣病予防物質
自立協同
野路准教授と梅山教授
以来、幾多の変遷を経て、昭和41年(1966)に徳島女子大学が開設され、家政学部(現人間生活学部)が設置されました。47年に現在の校名の徳島文理大学と改称するとともに薬学部を設置しています。
昭和58年(1983)には徳島キャンパスに加え、香川県志度町(現さぬき市)に香川キャンパスを開学。現在、徳島、香川の両キャンパスに9学部26学科、5大学院、1専門職大学院、3専攻科を擁し、西日本有数の総合大学として揺るぎのない地歩を築いています。
思いやり教育
東門から見る徳島キャンパス
4年前期から研究室に配属され、それぞれの学生が実験研究、課題研究に取り組みます。研究室は薬化学、薬品物理化学、薬品化学、薬品製造学、薬品分析学など17の部門で構成されています。
徳島和漢薬研究会の副会長として
実験室
梅山教授は広島大学理学部で反応有機を研究していた異色の研究者です。「徳島に帰ってこい…」との祖母の願いで、昭和54年(1979)に帰郷。副手として職を得て以来、助手、助教、准教授を経て教授に。平成2年(1991)に学位を得ています。
主な研究テーマとして、
1.日本産キノコ類、地衣類および冬虫夏草に含まれる生活習慣病予防物質
2.シンビジウム、食品、稀少植物より、生活習慣病予防物質の単離
3.海洋微生物および冬虫夏草菌糸体の培養、微生物を用いる変換反応による生理活性成分の単離
以上の研究に取り組み、抗癌、抗炎症作用、コレステロール低下作用、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌作用などの生理活性を有する新規化合物の単離・構造決定に関する研究を世界に先駆けて行っています。
昨年、「線虫感染症の新しい治療法」の発見でノーベル生理医学賞を受賞した北里大学北里生命科学研究所の大村智特別栄誉教授とも共同研究を行っており、いつしか冬虫夏草からノーベル賞も夢ではない、と日々研究に勤しんでいます。学生の人気も高まり、研究室も自ずと活性化しています。
助教の頃、甲状腺ガンに罹り、ステージ4だったのを十全大補湯や食事療法で克服したことから、徳島和漢薬研究会の副会長として毎月第4日曜日に研究会を開き、漢方の啓発にも余念がありません。
私の健康法 元環境大臣 医学博士/日本の誇れる漢方を推進する議員連盟会長 鴨下一郎 衆議院議員
一に睡眠、二に運動、三に食
●44歳の時、医師から政治家を志す
「現代の心の病を治すには、まず社会病理を直す必要がある」との思いから、政治の世界を志したのは1993年(平成5年)だった。それまでは心療内科医として、医療現場でサラリーマンやOLの心の病気の診療に当たっていたが、過酷な労働環境によるストレスにより心身を病む患者はひきも切らさないほどだった。44歳の時、東京都足立区で日本新党から立候補して初当選を果たした。この生まれ育った足立区で通学した足立区立第四中学校、東京都立足立高等学校の二年先輩にタレントのビートたけしがいる。
代議士に当選以来、年金や医療をはじめ社会保障政策の論客の一人としてならす。厚生労働副大臣、衆議院厚生労働委員長などに就き、8期にわたり衆院議員を務めている。
都市の住環境や水・大気、生物多様性などの 環境分野にも明るく、安倍改造内閣と福田康夫内閣では第9代、10代の環境大臣を歴任した。
日本の誇れる漢方を推進する議員連盟の会長には発足当時から就任し、漢方の普及に一役も二役も買っている。
●睡眠にこだわり
衆議院議員になってからは医師として臨床には立ち会っていないが、日ごろの健康には少なからず気を配っている。何よりもこだわっているのが睡眠だ。「若い時と違い、年を取ってくると睡眠力が落ち、なかなか熟睡できなくなります。眠るにも力がいるんです。そのためにも真っ暗ではなく、朝になると自然に光が入る部屋で眠るのがベターです」日ごろの起床は6時~7時、就寝は12時には床に入るようにしている。「6時間ではちょっと短いですね。7時間は欲しいところです」
睡眠の次に留意しているのは運動。足腰を鍛えるためにも、なるべく歩くことを心掛けるとともに、家にいる時はテレビを見ながらつま先立ちでスクワットをしたり、小さいバーベルで筋トレを行っている。
そして三番目は食、たんぱく質の摂取として「牛、豚、鳥などの肉や魚を意識的に余計に摂っています。焼肉も生姜焼きも肉ならなんでも好きですね」
最近は寝る前に牛乳をコップ一杯飲んでいる。「これから年を取った時に転んだりしないように蛋白質とカルシウムの補給をしているのですが、効果のほどは10年後には解ると思います」
心療内科の医師の時から漢方を使う患者は結構いたとのことで、「柴朴湯や柴胡加竜骨牡蠣湯などをよく使いました」
現在、風邪や肩こりの時は葛根湯、お腹がゆるかったり、胃もたれの時のために半夏瀉心湯を常備薬にしている。
「今後、高齢化が進むにつれて漢方への期待はますます高まると思います。我々も漢方の良さを伝えるべく、できるだけ努力するつもりです」
プロフィール
1949年 (昭和24)東京都足立区青井に生まれる。 1979年 日本大学大学院医学研究科修了。 学位取得 (医学博士)。 1993年 (平成5)衆議院議員選挙立候補、初当選。 2009年自民党政務調査会長代理。
東日本大震災の復興に際しては「福島再興に関する委員会 委員長」として政府に急ぎ除染を進めるよう法案を作成、 社会保障と税の一体改革では実務者として三党合意をまとめる。
2012年与党復帰後の自民党国会対策委員長を務め、現在、 衆議院消費者問題に関する特別委員会委員長。 睡眠、人間関係などの著作は100冊以上。 『女性がストレスとつきあう本』(大和書房)、 『朝が弱いが治る本』(PHP文庫)などが10万部余の ロングセラーとなっている。
G8北海道洞爺湖サミットにおける地球温暖化対策の国際 交渉を環境大臣として務める。