95号 (第32巻 第2号)2015年9月
一般社団法人日本東洋医学学会 会長 佐藤 弘 |
平成27年6月12日に開催されました日本東洋医学会第66回定時社員総会において会長に選出されました。石川先生より引き継ぎ、第21代目の会長就任となります。何卒、よろしくお願いします。
現在漢方界を取り巻く環境は、国内国外ともに大変厳しい状況にあります。
国内では、これまでもたびたび財務省が持ち出してきた漢方薬を含む一般用市販類似医薬品の給付除外問題です。昭和51年に医療用漢方製剤43処方(現在148処方)が薬価収載されたことが契機となり漢方医学の見直し・普及がなされました。現在では9割を超える医師が漢方薬を使用し、しかも幅広い診療領域で漢方薬の有用性のデータが蓄積されつつあります。また超高齢化社会の中で漢方・生薬治療の果たす役割はますます増大することになります。もし漢方薬の保険給付除外が実施されますと、多くの患者さんが漢方治療を受ける機会を奪われかねないこと、そして漢方医学の研究が衰退し、漢方医学が持っている治療の可能性のさらなる追求ができなることが予想されます。
また、生薬価格の高騰も、保険診療を継続していく上で解決しなければならない喫緊の課題です。生薬の品質・安全性および安定供給の確保がどうしても必要になります。保険給付除外の問題とも併せて、貴協会と密接な連携をはかりながら、取り組んでいきたいと考えています。
国外問題では、ISO(国際標準化機構)、WHO国際疾病分類の改訂作業(ICD-11)があげられます。これまで、JLOM(日本東洋医学会、日本生薬学会、和漢医薬学会、全日本鍼灸学会およびWHO研究協力センターである北里研究所東洋医学総合研究所、富山大学和漢診療学講座の6組織で構成)が中心として対応してきました。このJLOMにたいして貴協会から多大なるご協力を賜わり感謝申し上げます。この中で特にISO問題は、基本的には、産業界が主体的に関与すべきであり、アカデミアはそのサポート役と考えています。これまでの経緯から、すぐには無理としても、今後貴協会の果たす役割を徐々に増やしていただきたいと思っております。
日本の伝統薬は、品質の上でも、安全性の上でも高い製品であることが特長です。ISOの問題では、この特長を堅持し、また消費者である国民が不利益を被らない道筋を見つけていかなければなりません。貴協会をはじめ産業界ならびに行政機関とも密接に連携して、ISO問題に取り組んでいきたいと思います。
加藤会長の新年のご挨拶に紹介されています国家中医薬管理局長である王国強氏の発言をみて、「日中双方の伝統医療が、力を合わせて世界の人々の健康に貢献できるよう協力する」意思を中国側が持っていることを知りました。これまで日本東洋医学会と中国関係者との交流は必ずしも密ではありませんでした。貴協会が中国関係先との情報交換と相互理解をはかると述べておられるように、私たちも同じように行動する必要があるのではないかと思っております。
今後とも、貴協会のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
日本漢方生薬製剤協会 副会長 古市 貞雄 |
本年5月、日本漢方生薬製剤協会副会長の重責を担うこととなりましたクラシエ薬品株式会社の古市貞雄と申します。就任にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
私は入社以来、長期にわたり、医療用医薬品の営業第一線を歩み、医療現場の近くで漢方薬に携わった経験から、健康を守る国民医療には漢方薬が不可欠であることを実感し、その普及と啓蒙に努めてまいりました。現在弊社を牽引する立場となってからは、医療用医薬品のみならず、一般用医薬品にも携わることとなり、より一層治療だけではなく、健康という観点に対しても漢方薬の必要性・重要性について、重く受け止めている次第です。
現在の漢方・生薬業界における課題は、生薬を原料とした最終製品の品質確保と原料生薬の安定確保であると認識しております。その中でも生薬価格の高騰は直面している最大の課題であると考えます。原料生薬の8割が中国から調達している現状を鑑みますと、中国との生薬取引に関する関係強化の重要性は、衆目の一致するところです。この課題に対して、日漢協の英知を結集し、日本と中国の両国の意見交換や中国国内での情報収集に尽力し、二国間の協力関係の強化をより進めることで、微力ながら、課題の解決に向けて、最大限努力してまいります。
今般、小沢前副会長より、一般用漢方製剤会議議長を引き継がせていただきます。一般用医薬品については、日本の人口構造における近年の急速な高齢化の進展や生活習慣病の増加など、疾病構造の変化や生活の質(QOL)の向上追求等に伴い、「セルフメディケーション」という考え方が国民に広がるに連れ、国民一人一人が自分の健康に対して、自己責任に拠って、管理するという概念が根付いてきています。今後、全人口で高齢者の占める割合がさらに高まり、国民の健康嗜好も多様化する中において、保健・医療資源という観点からも一般用漢方製剤をさらに発展・育成していく必要があると考えております。
また、医療用漢方製剤については、行政や関係諸団体と密接に連携し、医療保険制度、薬価基準制度に関する調査研究、提言、情報収集を担う組織として「保険薬価協議会」を設置し、活動されておりますので、私も最大限の支援を行ってまいります。
一方、国際情勢に視野を広げますと、漢方薬・生薬のグローバリゼーション、国際標準化問題についても、重要な課題と認識しております。取りわけ、本年6月1日〜4日に中国北京で開催された、ISO/TC249第6回全体会議において、タイトルが中国伝統医学(TCM)に決定された内容等は、今後、日本の法規・規程・品質に影響しないよう働きかけていかなければなりません。既に日漢協で決定されています方針に基づき、東洋医学サミット会議の先生方や関係行政機関と協力して取り組んでまいります。
最後に、製薬企業として重要な社会的責任に関する課題である、コンプライアンス活動の推進、企業活動と医療機関との関係を問われる「透明性ガイドライン」に基づく公開についても、他業界団体を参考に、積極的に取り組んでまいります。
今後は副会長としての「役割」と「使命」を果たし、会員会社様のお役に立てるように努めて参りますので、皆様方のご支援・ご協力をお願い申し上げまして、ご挨拶とさせて頂きます。
(クラシエ薬品株式会社 代表取締役社長)
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 医療用漢方製剤委員会
(1)平成23年9月に策定した日漢協の透明性ガイドラインは、遅くとも2013年度分を2014年度に公開するということで進めてきた。対象となる会員会社は逐次公開しているところである。
(2)有用性研究部会の協力のもと、日本東洋医学会EBM委員会の漢方治療エビデンスレポートのほか臨床文献等から論文を抽出し、医療用漢方製剤148処方すべてのエビデンスデータを整理し、処方別論文等一覧を作成した。 - 流通適正化部会
(1)透明性ガイドラインのA項目「研究費開発費等」について2016年度支払い分から製薬協と同様に年間総額開示から施設の個別開示をすることとした。
(2)厚労省から、日漢協ならびに会員会社の広告審査体制についてのアンケート回答要請に対し会員会社からの調査結果に基づき回答した。 - 教育研修部会
MR漢方教本Ⅱは、医薬品医療機器等法をうけて作成されたMR認定センターのテキストを反映し改定した。発刊は10月の予定。 - 有用性研究部会
(1)PMDAの添付文書情報を元に英語版「医療用漢方製剤 2014—148処方の添付文書情報—」(2012年版の改訂)を作成し、日漢協ホームページに公開した。
(2)日本東洋医学会EBM委員会への協力として、「漢方治療エビデンスレポート」のAppendix 2014を8月に公開した。Appendix 2015は、掲載する論文の抽出作業を開始し、2015年度中に公開予定である。また、「漢方製剤の記載を含む診療ガイドラインAppendix 2015」は、追加分のみを年内に公開予定で作業中である。
(3)「医療用漢方製剤 2014—148処方の添付文書情報—」英語版(English ver.)の各処方の一覧表が、漢方薬の添付文書内容を紹介するKCONSORT(Kampo-CONSORT Statement)のホームページにリンクが貼られることになった。
生薬会議
生薬委員会 委員長 浅間 宏志(株式会社ウチダ和漢薬)
- 平成27年度「薬用作物の産地化に向けた ブロック会議」
- 第3回原料生薬使用量等調査
- 第3回中国産原料生薬の価格指数調査
- 薬用作物の栽培と採取、加工に関する手引き
- 日局既収載生薬の改正要望
今年度のブロック会議は、これまでマッチングの交渉が成立しなかった産地へのフォローアップを行うことを目的として、昨年と同様、農水省、厚労省および日漢協の共催により8ブロックで開催する。
日漢協では、平成25年度および26年度に実施したブロック会議により成立した生産者と実需者とのマッチングについて、その後の進捗状況や問題点などをアンケート調査しており、この結果をブロック会議で報告、反映することにより、今後のマッチングに役立てていきたいと考えている。
第3回原料生薬使用量等調査結果(平成23~24年度分)については冊子化し、すでに会員会社をはじめ多くの関係団体に配布している。原料生薬に関する基礎データとしてより広く活用してもらうため、広報委員会と協力して日漢協ホームページで公開した。
現在、第4回調査(平成25~26年度分)を実施すべく、準備を進めている。
本年2~3月に実施した第3回中国産原料生薬の価格指数調査(平成26年分)の結果を集計した。集計結果によれば、中国から輸入された原料生薬の価格指数は、前回前々回の調査(平成18~25年)以降も上昇を続けており、平成18年からの8年間で2.4倍になっていることが判った。特にニンジンの価格上昇が顕著で、平成18年を基準にすると約5.8倍の上昇となっている。この集計結果については、これまでと同様、日漢協ホームページで公開している。
薬用植物の栽培や収穫後の加工調製の管理に広く活用していただき、ひいては品質の高い生薬の安定供給に少しでも寄与できるようにするため、「薬用作物の栽培と採取、加工に関する手引き」の日本語版を日漢協ホームページで公開した。
平成22年に日漢協会員各社を対象に実施した第1回改正要望調査では、67項目の要望があり、その後技術委員会と協力して検討を進めてきた。現在までに46項目の検討が終了し、そのうち31項目が日本薬局方に反映された。
第1回改正要望調査からすでに5年が経過し、各社の要望も変わってきていることが考えられたため、本年1~2月に再調査を実施した。新たに約40項目の要望が提出され、これらについては現在精査中であるが、技術委員会と連携して第1回の残りの項目も含めて検討を進めていく予定である。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 西山 隆(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- くすり相談部会
- 事例報告G 相談・苦情への回答・対応の検討
- トピックスG トピックスの収集と共有化を行った。
- 一般用漢方製剤の「相談事例集Q&A第4集」の作成 過去の事例集第2集の質問事項について確認、検討を実施した。
- 一般用5団体消費者対応窓口共通アンケート 平成27年7月3日付で日本一般用医薬品連合会(以下、一般薬連)の事務局から5団体事務局長あてにアンケート結果が発出された。7月8日付で、日漢協会員専用HP上に掲示を行った。
- 処方部会
- 「一般用漢方製剤承認基準処方文献」の整備
- 新210処方の使用促進のための資料作成
- セルフメディケーションハンドブック編集プロジェクト(一般薬連)
- 適正使用推進部会
- 一般用漢方製剤販売時の補助ツール作成について
- ・平成27年5月12日に国立衛研生薬部の袴塚高志部長、政田先生と面談を行い「使用者確認票」の日漢協HP上への掲載について、手順の確認作業を行った。「一般用漢方処方の鑑別シート」は、国立衛研HPへのリンク先を日漢協HPに掲載することになった。
- ・平成27年5月28日に日漢協広報委員会、(有)ビーパーク社と確認票掲載にあたり、掲載イメージについて打合せを行った。
- ・平成27年6月12日に国立衛研の袴塚生薬部長、政田先生と面談を行い掲載イメージを提示し、掲載案についての確認を行った。国立衛研で整理したデータを、入手次第、日漢協HPへの掲載を行う。
- セルフメディケーション推進プロジェクト(一般薬連)
- 一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設に向けた課題対応
- ・所得控除申告の「下限と上限金額変更」に関する根拠の提示および新税制による医療費削減効果の立証を行った。
- ・申告効率化のためのレシート・領収書の実態調査を、広域ドラッグストア、一般薬局、ネット通販等で実施した。
- ・日薬連・一般薬連連名で、7月31日(金)に厚労省医政局経済課へ要望書を提出した。
- HbA1c検体測定症例収集
- ・東京都足立区が区薬剤師会と連携した「糖尿病重症化予防フォロー事業」を5月15日からスタートさせた関係で、従来からの症例収集が困難になっている。
- ・検体測定室届出数が横ばい傾向で、他地域での取り組みが進まないため、県別での対応を調査する。
- 検体測定室連携協議会
- ・筑波大の矢作直也准教授を座長として、今後さらなる検体測定室の普及、定着を目指し、有識者および実践者が連携、協議し、必要な情報発信を行うために設立され、2015年5月27日に設立記者発表会が行われた。
平成27年7月9日(木)開催
・ 各部会からの活動報告
・ 「市民公開漢方セミナー」について
・ 国際対応WG報告
・ 日本薬局方外生薬規格2015作成WG報告
・ セルフメディケーションハンドブック編集
プロジェクトについての状況報告
・ セルフメディケーション実践プロジェクトについての状況報告
・ その他連絡事項
日漢協保管文献について、リスト表(新210処方手引き文献一覧および処方検討レポートより作成)と照合して保管の有無を確認し、リスト記載の番号順に並べ替え、ファイルを整備する作業を継続して実施した。全体の約5分の3が終了した。
追加処方および市販品のない処方の中から、頭痛および頭重に使用する処方について使い分けシートを分担して作成し、取り纏めて意見交換を行った。
平成27年7月17日(金)13:00~15:00に開催され、2016年版作成の打合せを行った。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)
大正製薬株式会社 大宮工場
見学会:6/19
生薬製剤の活性化を目標に、生薬製剤の承認基準の拡大に向けて検討を進めている。
これまで当帰川芎製剤(実母散等)の承認基準(案)を検討してきており、制度研究部会と製剤開発部会の成果として承認基準(案)と、その提案資料を取り纏めた。
谿 忠人 先生(大阪大学大学院 薬学研究科 招聘教授)から「漢方と最新治療/世論時報社」に投稿いただいた総説「女性保健薬(当帰川芎製剤)の適応病態と配合生薬の薬能と薬対 −新女性保健薬の開発を目指して−」が5月25日発行号に掲載された。新たな当帰川芎製剤の配合生薬を選ぶ方策として、漢方医学の病理病態論に対応すべく、「気・血・水(津液)」のすべてを調整できるように生薬を組み合わせる薬能論が示されており、これに従って生薬の配合ルールを設定した。
また、本承認基準(案)について、関連する団体・有識者との連携を進めている。当協会内では、昨年の一般用漢方製剤委員会に続いて、薬制委員会 幹事会(5/28)へ、また日本OTC医薬品協会 生薬製品委員会 生薬調査部会(6/16)への説明会を開催し、意見交換を行った。今後も他団体への説明を通じて、周知を図っていきたいと考えている。さらに、国立衛研 生薬部 袴塚高志 部長と面談(7/24)し、行政視点から前向きなご助言をいただいた。引き続き検討を進めている。
6月19日開催の委員会では、大正製薬株式会社様のお計らいで、大正製薬 大宮工場の見学会を実施(6/19)。
15名が参加し、先進的なオートメーションが導入された内服固形製剤の製造ラインを見学して知見を広げた。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
- 日局カンゾウエキス等について
- 日本薬局方外生薬規格(局外生規)2015
- 単味生薬研究班
6月23日と8月20日に、本年度第2回および第3回原薬エキス委員会を開催した。委員会では、ISO/TC249第6回全体会議(中国・北京)報告、「第3回局外生規2015検討委員会」報告、日本薬局方(日局)カンゾウエキスの定量法などについて検討を行った。
第十七改正日本薬局方(17局)でカンゾウの定量法とグリチルリチン酸含量規格が改正されるが、この関連各条のカンゾウエキス、カンゾウ粗エキス、カンゾウ配合漢方処方エキスなどについては、17局以降に検討することとされている。カンゾウ配合漢方処方エキスについては技術委員会で検討されており、当委員会ではカンゾウエキスおよびカンゾウ粗エキスについて検討を開始することとした。
また、改正案が積み残しとなっているキキョウ流エキス、トウヒチンキなどについても、製剤総則に従って工業的製法を盛り込むべく検討する予定である。
6月10日に「第3回局外生規2015検討委員会」(事務局:審査管理課)が開催された。局外生規2015に関する検討委員会はこれが最終回である。当委員会が担当したアカメガシワエキス、ウラジロガシエキス、メリロートエキス、および原料生薬のウラジロガシおよびメリロート、並びにこれらの定量法で用いられる試薬である定量用ベルゲニン、エラグ酸およびクマリンの最終収載案が了承された。局外生規に単味生薬エキスが収載されるのは、これが初めてである。
局外生規2015は、8月に意見募集され(約1ヵ月間)、意見を踏まえて修正後、年内に通知が発出される見込みである。
なお、今回積み残しとなった品目が幾つかあることから、それらについては局外生規2018で検討される予定である。
「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン(案)」が、平成26年9月に意見募集されたが、未だ通知が発出されていない。厚生労働科学研究として行われている「生薬製剤承認基準原案研究班(単味生薬研究班)」では、それぞれの単味生薬エキスの規格および試験法を整備すべく検討を開始し、いずれは局外生規に収載する方向とのことである。当委員会では、これに対応すべく準備中である。
コード審査会
代表委員 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
平成27年5月29日に厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課井上広告専門官から昨今の医療用医薬品の広告審査について、日漢協での広告審査状況に関するアンケートが届き、6月4日に回答した。その後、監視指導・麻薬対策課の玉田社会保障専門調査委員からも電話でアンケートを補完する質問があり回答した。さらに7月10日には厚生労働省へ赴き、コード審査会・製品情報概要実務部会の5名が説明を行った。内容は現在のコード審査会・製品情報概要実務部会の運営状況と今後の対応等であり、回答にご理解いただいた。
保険薬価協議会
委員長 丸木 希望(株式会社ツムラ)
平成27年3月27日付、日薬連発第195号通知において、平成28年度薬価改定および薬価算定ルールの見直しにつき、中医協にて表明する意見中に盛り込みたいと望まれる事項があれば提出いただきたいとの連絡があった。4月7日開催の協議会において、日漢協意見書(案)を取りまとめ、持ち回り審議で正副会長の了承をいただいた後、日薬連に提出した。
総務委員会
委員長 菅沢 邦彦(株式会社ツムラ)
- 平成27年度事業計画(案)および平成26年度事業報告を策定し、第33回定期総会に上程し承認された。
- 平成27年度収支予算(案)が第33回定期総会で承認された。
- 第191回理事会にて、「中長期事業計画2012」の中間報告を行い、日漢協ホームページに掲載した。
- 第33回定期総会後、「医薬品医療機器法施行後の安全対策の動向」について、厚生労働省医薬食品局安全対策課安全使用推進室室長 上野清美 先生にご講演頂いた。
- 日薬連の平成27年度環境委員会予算が、一般会計から特別予算へ移行して運用されることとなり、低炭素社会実行計画のフォローアップ調査システム導入の拠出金については、平成27年度費用は、日薬連環境委員会参加の4団体(製薬協、GE薬協、OTC薬協、日漢協)から拠出し、平成28年度以降の費用は、日薬連低炭素社会実行計画参加の全9団体(4団体、輸液製剤協議会、医薬品製剤協議会、外用製剤協議会、日本ワクチン産業協会、日本医薬品直販メーカー協議会)から拠出することとなった。
国際委員会
委員長 塩本 秀己(大正製薬株式会社)
国際標準化機構(ISO)に中国伝統医薬学の国際標準化を議論する専門委員会(ISO/TC249)が2009年に設立され、年1回、その総会が開催されてきた。今回、第6回総会が中国・北京にて6月1日~4日の4日間開催された。会議は、日本代表団27名を含む、12か国(中国、韓国、米国、独、濠など)、240名が参加し、初日と最終日は全体会議が、中2日は作業グループに分かれ、原材料関係、製剤関係、鍼灸関係、医療機器関係の品質と安全性や、それらに関わる情報/用語など、専門的な議論が重ねられた。その中で、ISO/TC249のタイトルはこれまでTraditional Chinese Medicine(provisional)/中国伝統医学(暫定的)であったが、決議の結果、本会議のタイトルはTraditional Chinese Medicine(provisional)/(TCM)に決定し、上部組織の技術管理評議会(TMB)に推奨することとなった。
技術委員会
委員長 遠藤 雄一(株式会社ツムラ)
第17改正日本薬局方が平成28年2月に施行されるが、17局第一追補で収載すべく五苓散エキスについて検討中である。また、17局以降の漢方処方エキス新規収載候補として温経湯など18品目が選定され、それらの漢方処方エキスについて情報収集を開始した。また、17局での「カンゾウ(末)」のグリチルリチン酸定量法改正に合わせ、既収載のカンゾウ配合漢方処方エキスのグリチルリチン酸定量法について検討を行っている。
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規及び関係通知の調査研究、規制緩和推進に関する事項、関係行政機関及び諸団体との連絡並びに意見具申を基本に活動している。
- 薬局製剤指針の改正
- 一般用医薬品等の製造販売承認申請時における記載整備チェックリスト
平成27年3月31日、厚生労働省告示第217号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令第3条の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品の有効成分の一部を改正する件」が告示された。
同日付け、薬食発0331第1号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令第3条の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品の有効成分の一部を改正する件について」、薬食審査発0331第6号「「薬局製造販売医薬品の取扱いについて」の一部改正について」の通知が発出され、薬局製剤指針が改正された。漢方処方関連では、「一般用漢方製剤承認基準の改正について」(平成24年8月30日付 薬食審査発第830001号 審査管理課長通知)に伴う記載を整備、新規処方24処方などの改正が行われた。(192処方(212品目)⇒216処方(236品目))
平成27年5月18日付 薬機般発第150518001号「一般用医薬品等の製造販売承認申請時における記載整備チェックリストの利用について」が発出された。
一般用医薬品(要指導医薬品を含む)の申請資料における記載の不備等を極力なくし、審査の迅速化を図ることを目的に、製造販売承認申請書(承認事項一部変更承認申請書を含む)及び添付資料の作成にあたって注意が必要な事項等を中心に、記載整備チェックリストがとりまとめられている。
安全性委員会
委員長 塚本 理史(株式会社ツムラ)
- 「腸間膜静脈硬化症」への対応
- PMDAホームページリニューアル意見募集について
- 「ICH E2B(R3)大規模テスト」への参加について
「腸間膜静脈硬化症」については医薬品医療機器総合機構にも相談の上、平成24年6月に福岡大学筑紫病院長 岩下明徳先生の監修により「特発性腸間膜静脈硬化症」を説明する医療関係者向けの資料を作成し、適正使用に努めた。
今回は平成25年度に厚労科研費補助金事業として実施された全国調査等の情報を盛り込んだ、新たな解説資料を作成し、安全性委員会にて共有の上、情報配信ができるよう調整中である。
なお、漢方製剤による「腸間膜静脈硬化症」については平成24年7月 茵蔯蒿湯の「使用上の注意」改訂を実施以降は問題となる処方はない。
3月16日に医薬品医療機器情報提供ホームページがPMDAのホームページに統合され3ヵ月が経過し、各方面から意見・要望があったため、日薬連安全性委員会より各団体へアンケート募集があり、日漢協では安全性委員会内で意見を集約し提出した。
日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)における合意に基づく「個別症例安全性報告(ICSR)の電子的伝送に係る実装ガイド」の平成28年4月の実装に向け、現在、日本製薬団体連合会E2B(R3)実装プロジェクトと関連団体のE2B(R3)対応チームにおいて大規模テストが実施されており、安全性委員会では各社に本件を説明し、実装された際に対応できるよう、内容の説明と大規模テスト参加への依頼を行った。
広報委員会
委員長 鈴木 登(株式会社ツムラ)
- 一般市民への啓発活動(平成27年5月~8月)
- 1)一般用ホームページへの問い合わせ件数 8件(一般2件)
- 2)一般用ホームページ新規掲載事項 15件(トピックス5件)
- 3)電話対応 10件(一般企業4件、行政1件、メディア4件)
- 4)漢方啓発セミナー
- ①第66回東洋医学会学術総会における市民公開講座
・6月14日開催 参加者225名(うち、報道2名) - ②第18回市民公開漢方セミナー
・7月7日講師の東京女子医科大学東洋医学研究所教授の伊藤隆先生を訪問し、講演内容等打合せ。
・7月27日会場の文京シビックホールの下見を実施。 - マスコミへの対応
- 1)5月から8月にかけて17件対応した。
- 2)東洋経済の「医薬品特集企画」の取材を受け、生薬委員会および医療用漢方製剤委員会同席のもと、薬用作物の産地化に向けたブロック会議について説明した。
- 3)工業市場研究所から原料生薬使用量等調査などについて問い合わせを受け、生薬委員会とともに対応した。
- 制作物
- 1)ニューズレターNo.94号を発刊した。今回からWeb版のみの発行であった。
- 2)日漢協ガイド2015を企画進行した。
- その他
- 本年度から、日漢協関連記事や番組などについて、事務局を通じて会員会社の窓口の皆様に情報提供を行っている。
広島国際大学薬学部生薬学教室 上田 純也 准教授
天然抗がん物質の探索
世のため、人のため、地域のために
上田 純也 准教授
開学時は医療福祉学部(医療経営学科、医療福祉学科)と保健医療学部(看護学科、診療放射線学科、臨床工学科)の二学部でのスタートでした。
以来、2003年に看護学科を看護学部に改組したのを皮切りに、薬学部、医療経営学部、総合リハビリテーション学部、医療栄養学部、心理学部を相次いで開設、今や八学部十学科を擁する医療系総合大学として確たる地歩を築いています。
時代のニーズを先取りする広島国際大学の母体は、大阪の旭区に本部のある(学)常翔学園です。1922年(大正11)に、“世のため、人のため、地域のために「理論に裏付けられた実践的技術をもち、現場で活躍できる専門職業人の育成」を行いたい”を建学の精神に開校した関西工学専修学校を発祥としています。大阪工業大学、摂南大学の母体でもあり、両校と広島国際大学とは姉妹校です。
いのちのそばに。ひととともに。
広島国際大学呉キャンパス
同学部の教育目標は、専門的知識および優れた技能に加え、豊かな感性と心を持ち、広く社会に貢献できる「人間味あふれる薬剤師」の育成です。この目標達成に向けて一年次から少人数制のクラスで学ぶチュートリアルを必修科目とし、同じ志を持った友人とともに、自ら学修し、問題解決できる力を養います。
全学部合同の専門職連携教育など他学部との連携にも力を入れており、医療系総合大学ならではと人気を呼んでいます。
4年次から配属される研究室は基礎系と臨床系に大別され、薬と臨床医療を研究する医療薬学研究センター、天然物資源から薬を研究する生薬学教室、分子微生物科学教室、薬の効き方を研究する分子細胞薬理学教室など、18の研究室がそれぞれの研究テーマに取り組んでいます。
Uvaria dacの活性成分の解明
実験室
研究室の陣容は教員1人、6年生7人、5年生2人、4年生2人で構成されています。研究テーマは天然抗がん物質の探索。これは上田准教授が富山大学の時代から取り組んでいるテーマで、「栄養飢餓耐性を標的とした新規抗がん剤の探索−Uvaria dacの活性成分の解明−」と題し、昨今、年々、増え続ける膵臓がんをターゲットに、抗がん活性スクリーニングに余念がありません。
現在はこじんまりとした研究室ですが、今後の研究成果が期待されています。
私の健康法 エッセイスト 岸本葉子 さん
生活の柱、心の柱に
漢方薬は一生のみ続けたいと思います |
●40歳で虫垂がんに
2年余の保険会社勤務を辞して、中国の北京外国語学院へ留学したのは1986年(昭和61)、25歳の時だった。文化大革命終結から10年後の中国は驚くことばかり、スカート姿の女性はいなく、工事現場の足場は竹で組まれていた。プラスチックなどの工業製品は身近になかったが、人々の日々の暮らしには、気功で体調を整えるなど長年の歴史と伝統に裏打ちされた生活の知恵が息づいていることを身をもって体験する。10カ月の中国滞在中は留学生向けの寮で過ごし、勉学の合い間にアジア各国を旅した。帰国後、筆一本の文筆活動に入り、以来、旅にまつわるエッセイや日常生活を綴る身辺エッセイを矢継ぎ早に上梓、著書の数は100冊を超え、才色兼備のエッセイストとして人気を呼んでいる。
エッセイストとしての名を馳せたのは、40歳の時に虫垂ガンと診断され、その手術、治療体験を2003年に著した『がんから始まる』。がんがわかった経緯、入院から手術・退院までの詳細、退院後に取り組んだ漢方治療や食事療法について丹念に記され、大きな反響を呼んだ。
この他のがんにまつわる書物には『がんと心』『四十でがんになってから』『がんから5年』などがある。
●食事のつど、家庭用精米機で精米
約一か月に及ぶ入院の後に取り組んだのが漢方治療と食事療法だった。「がんになって本当の恐さに直面したのは退院後でした。がんが完治したわけではありませんでしたので、再発や進行を防ぐにはどうすればいいのか、いろいろと情報を集めました。それまでは西洋科学の信奉者だったのですが、知人に漢方がいいと教えられて訪れたのが、中西医結合を行っているクリニックでした」食事療法では、化学調味料は使わない、肉は摂らず、蛋白質は小魚から、野菜は漢方薬の効果を減じる紫蘇、茗荷などのハーブ系や山菜は摂らない。殊にご飯が好きで食事のつど無農薬の米を家庭用の精米機で精米して食している。「本当においしいですよ。糠は糠床にして胡瓜などを漬けています」
食事に気を配るとともに運動にも余念がない。体幹を鍛えるために月に3~4回、加圧トレーニングに通い、家では仕事の合間にストレッチボード、マットで片足立ちなどを行っている。腹式呼吸にも勤しむ。月に一度通うクリニックでは脈診などによる診断の後、その日の体調に合わせた薬を処方してもらい、現在は煎じ薬、粉薬を4種類ほどのんでいる。
漢方薬を服用後はそれまで罹っていた花粉症に悩むこともなく、更年期障害にもさほど苦しまずに済んだ。
心配していたがんの再発や進行もなく、元気このうえない。「エビデンスがないので、私の口から漢方薬が効いているとは言えませんが、漢方や食事療法の恩恵を受けているのは確かです。生活の柱、心の柱になっていると自信をもって言えますね」
プロフィール
1961年(昭和36)6月、神奈川県鎌倉市生まれ。 1984東京大学教養学部卒業、東邦生命保険相互会社入社。 1986年9月、北京外国語学院留学。10か月の中国留学を 経て、執筆活動に入る。NHK中央放送番組審議会副委員 長を歴任。淑徳大学客員教授。 著書は『ブータンしあわせ旅ノート』(角川文庫) 『わたしの週末なごみ旅』(河出文庫) 『欲ばらないでちょうどいい』『いのちの養生ごはん』(中公文庫) 『五十になるって、あんがい、ふつう』(ミスター・パートナー) 『ちょっと早めの老い支度』(オレンジページ)など多数。